【舞台観賞】「夜行万葉録・子」(ジャングルベル・シアター) | ヒトデ大石のなんとなくレポート置場

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2011年8月「ヒトデ大石のどんなブログにしようか検討中。」からタイトル変更。
ライブイベント、舞台観劇のレポートを中心に書いていこうというブログ。
以前はmixiが主戦場だったけど、今はこっちが主戦場(笑)

※この舞台は6/25~7/3まで行われた舞台で既に公演は終了しています。
 
本当に久々の……2016年に入ってからは初となる【舞台観賞】レポートとなります。
昨年末から今日までの約半年、全く舞台を観に行ってなかったので、当たり前と言えば、当たり前なのですが……。
 
ただ正直に申し上げると、ここ半年、舞台を観に行きたいという、いわば「観劇欲」がかなり減退していました。
思い当たる節は多々あるのですが、ここで長々と述べても面白くないので割愛させていただきます。
また個人的には「観劇欲」は未だ復活していない段階なので、今後もどうなるのか自分でも正直分かりません。
よって昨年までの【舞台観賞】レポートのように高いテンションとクオリティが保てるかは、いざ自分でも書いてみないと分からない状況ですので、予めご了承ください。
 
ただ……そんな中、6月末から7月にかけて「これだけは観ないと(人生において)後悔する」という公演が幾つか決まり、久々に観劇に足が向いた次第です……。
 
……そんな訳で今回、久々に観劇に行ったのが、毎度お馴染みジャングルベル・シアターのギャラリー公演でした。
まぁ自分にとってジャンベルさんは、いわば「観劇」における故郷みたいな劇団なので、復帰するならこの劇団しか無かったと思います。
 
会場は神保町のART SPOT LADO。
縦長に長いギャラリーに、多くの客がひしめき合っている中で舞台がいよいよ開始されます。
演目は一昨年のギャラリー公演が好評でめでたく新シリーズとなった「夜行万葉録」の第二弾「夜行万葉録・子」
前回同様「妖怪」をテーマに物語が展開していくオムニバス形式の舞台です。
 
約一年半ぶりとなったギャラリー公演。
果たして今回はどのような内容となっているのでしょうか。
 
公演終了後につき、ある程度、ネタバレがあるあらすじをば……。
……ただ今回の公演もいずれ「おとぎ夜話」シリーズみたいに小劇場での再演、もしくはDVD化もあるからちょっと注意しないとなぁ……(笑)
 
 
 
・第一話「サトリ」
 
魂物神社の宮司・幽湧(國崎馨・以下敬称略)は飲み屋からの帰り道、刃物を持った男・秀倉(西村太一)に人質となってしまう。
なんらかの事件から逃亡中の秀倉と共に、幽湧は県境へと続く国道のトンネルの前まで来る。
不意に生来の運の無さから「疫病神がついているんじゃないか」と言い出す、秀倉のあとを正体の分からない化け物らしきものが後をつける……。
化け物を不気味がりながらも、県境へ続くトンネルをひたすら歩き続ける秀倉と幽湧……。
だがトンネルを抜けて待っていたのは、県境に続く道ではなく……魂物神社だった。
 
本来、妖怪しか入れないはずの魂物神社にすんなり入れた秀倉。
その様子を見て幽湧は自身の正体を秀倉に明かす。
そして彼を追うようにしてついてきた、毛むくじゃらの化け物(竹内俊樹)もまた魂物神社を訪れた。
秀倉を化け物に見えないところに隠し、話を聞く……しかしこの化け物、自身の記憶が無いという記憶喪失の化け物だった。
彼の願いは自分の正体を知る事と称していた。何かヒントを得るために幽湧は何か覚えていないのかと化け物に問いただすと、ある話をし始めた……。
 
……昔の話、とあるところに普段からいらついている化け物(浅野泰徳)がいた。
その化け物は人を喰らい、時には人を生き作りにして食べない程、残酷な化け物だった。
ある日、化け物は偶然、町で見かけた金持ち親子(母=松宮かんな、息子=岡教寛)をターゲットに定める……。
金持ち親子の家にたどり着くものの、セキュリティが強くて中へ入る事はままならない。
そこへ偶然、帰宅しようとした金持ち親子の父(岡教寛/二役)を、皮をはいで食べてしまう。
更にその父の皮を被って人間になりすまし、母も騙して中に入り、更に食べてしまう。
残るのは息子だけだったが、化け物の攻撃を回避して、広い家の中を逃げ回る。
なんとか化け物を(文字通り)煙に巻いて逃亡のチャンスが訪れるが、彼はそこで逃げ出さず2階にある自室に戻った……。
自室に戻り目的を達成する息子。しかしこの行動によって化け物に文字通り追い込まれる事になる……だがそんな彼のピンチを救ったのは……!
 
 
……という展開で進む物語。
この話を聞いた幽湧は少なくとも、この化け物が疫病神じゃない事を察する。
化け物がいなくなった後、隠れていた秀倉を幽湧を呼び寄せる……しかし秀倉は驚愕と戦慄の表情を浮かべていた。
実は秀倉もまた幼少期の記憶を失くしており、また先ほどの化け物の話が自分の記憶だと言い張るのだった。
幽湧は化け物の正体を、人の記憶などを読み取る妖怪「サトリ」と推測。
秀倉にある実験に立ち会わせるのだが……。
 
 
・第二話「鉄鼠」
 
化け物は幽湧に呼び出されて、秀倉と共に実験に付き合わされるが、実験の結果、サトリじゃない事が判明。
結局、正体を探る話は振り出しに戻る。
しかし化け物が時間を尋ねたところ「子の刻」(午前0時過ぎ)だった事、そしてネズミを連想させる言葉を聞いた秀倉が頭の痛みを訴える……。
すると化け物はネズミで話を思い出したという……。
 
これはある少年(都築知沙)の話。
学校の授業で川原に来ていた少年は、その川原で大きな穴を見つける。
大好きな先生(篠崎大輝)に報告するが、崩れると入ってはいけないと注意する。
だが少年は目印をつけてその場を立ち去り、翌日、穴の前を訪れる。
最初こそ物怖じしていたが、一匹の子ネズミが現れ、その子ネズミにビスケットをあげたところ、穴の奥の方まで進み勢いのまま入ってしまう事に……。
そこで少年が出会ったのは、見た事も無い大きな化け物(本多照長)だった。
最初は化け物を怖がる少年だったが、やがて化け物と打ち解け「友達」になった。
それから毎日のように穴に行き来する日が続いたが、少年はある日、穴の中で珍しい石を拾う。
それを先生に見せたのだが、ひょんな事から穴に入った事を話し、先生からは「二度と行っちゃダメ」と咎められる。
だが一週間ほどだったある日、穴にいる化け物の事を思い、久しぶりに穴を訪れる。
しばらく姿を見せなかった少年に化け物は問いただす。
……しかし少年の後をつけていた先生が、化け物の姿を見つけると、化け物は衝動的に先生を噛み殺してしまう……。
その様子を見て少年は化け物から、子ネズミと共に逃げ出そうとする……だが化け物が最後に願ったのは……。
 
 
……このような話だが、秀倉はまた自分の記憶と言い出す。
しかし今度は少年の記憶の方と言い出し、化け物の正体が鉄鼠で呪い殺そうとしているのではないかと疑う。
だが化け物は今日会ったばかりのはずの人間を呪い殺す事などしないと否定するが……。
この一言で幽湧は化け物の「嘘」を見抜く……。
 
 
・第三話「ネズミ」
 
一時は話がこじれた秀倉と化け物だが、化け物の提案で秀倉の記憶の封印を解くよう提案する。
それによって記憶を失くしたはずの化け物自身の事も分かるかも知れない……というものだった。
しかし幽湧はこの時、化け物のついた「嘘」を看破。そして化け物の真の目的が秀倉の記憶を「封印」する事にあると見抜く。
また化け物が話した二つの話の構造が非常に似ている事、しかもそれは秀倉の記憶を上書きするためのものである事を指摘する。
観念した化け物はそれを認めるが、秀倉の記憶が戻る事を良しとしなかった。
だが秀倉は失われた自分の記憶を求め、化け物の「心が壊れてしまう」という必死の懇願も聞かず、それを願う。
そして幽湧は秘術を使い、秀倉の過去の記憶を浮かび上がらせる……。
 
今から30年ほど昔、ある地域では知る人ぞ知る裕福な家庭だった秀倉家。
息子である敦文少年(升田智美)も何不自由ない生活を送っていた。
だがある朝、父(大塚大作)に川原で拾ったネズミを捨てるよう諭されていた。
そんな中、一人の作業着を着た男(福津健創)が現れる。
彼は敦文少年の父に最後の願いで会社の融資を頼み込みに現れた。
だが敦文少年の父は、その男の必死の願いを冷たくあしらって断った。
……朝から敦文少年は父の嫌な面を見てしまい嫌な気持ちになったが、それが学校が終わり、塾が終わる頃には嫌な予感へと変わっていった……。
嫌な予感を胸に急いで家に帰る敦文少年……父の車が駐車場にあるのを見つけて、ほっとして家の中に上がり居間に向かうと……。
……そこにいたのは、椅子でロープに縛られた両親と……赤い血で染まった包丁を持った作業着の男の姿だった……。
 
 
幽湧が見せた、秀倉の隠された過去とは……。
嘘をついてまで秀倉の記憶を封印しようとしていた化け物の正体とは……。
そして全てを知った時、秀倉の心の去来したものとは……。
 
 
……気がつけば、舞台の半分以上のネタをばらしている。
これは立派な営業妨害レベルですな(爆)
でも一番肝心なオチは言ってないです。第三話はこの後の展開を話してないです(爆)
何がどうなった気になる方は……まぁメールなりで聞いて下さい(笑)
 
ただこのギャラリー公演は三つの話がオムニバスとなって、最後は一本の線にまとまるという作りになっている。
しかし過去のギャラリー公演と明らかに違う点が、今回は大きく二点見受けられました。
 
まずはオムニバスの構成。
第一話は安定の抱腹絶倒のギャグ中心の話。ここは安定しており、今回も出演者三人の怪演、迷演の数々が堪能できた(笑)
しかし第二話、第三話……これが今までと違う。
これまでは第二話に怖い話、第三話に感動的な話で持ってきてきれいに締めるパターンが恒例だった。
だが今回は第二話に感動的な話、第三話に怖い話という構成に変わっていた。
これが一番の驚きであった。
しかし正直いうと初日にこの構成で、この話を一通り拝見した時は、第三話の凄惨さが後を引いて、実は好きになれなかった……むしろ嫌悪感さえ覚えました。
だけどこの話を中日、千秋楽と通して観るうちに、心の準備が出来たというか、凄惨な物語を経て、伝えたかったテーマをきちんと観て感じる事が出来たと思います。
ただ……自分のように複数回観る方は第一印象と変わってくるからいいとして、一回だけ観た人が今回の作品にいつものジャンベルらしさを感じる事が出来たのだろうか?
観ている側としても本当につらい話だし、最後は前向きな終わり方に持って行っているような気がするけど……恐らく今回、最も賛否両論だと思う部分。
ただ脚本の浅野氏もこういう反応がある事くらいは想像して書いているはずなので、そういう意味ではある意味ジャンベルらしくない部分が、だけどある意味挑戦的な部分が垣間見えた構成の変化でした。
 
そしてもう一つは配役の変更。
一昨年行われた「夜行万葉録・辰」では劇団員である福津健創氏がハードボイルドな幽湧を演じた。
しかし今回の「夜行万葉録・子」では客演の國崎馨嬢が幽湧を演じた。
この幽湧というキャラ……魂物神社の宮司、幽霊を呼び起こす秘術、黒ホッピー好きという設定はそのままに、全く外見どころか、性別すら違う二人が演じる事になった。
これは終演後、出演者の皆様に聞いた話だと、幽湧というキャラは見る人によって、姿、形が変わるという設定らしいのですが……。
ただここまでがらりと役者を変更した事については、驚きが先行した。
またこれまでのギャラリー公演では過去数名ほど客演が出演した事もありますが、客演の方がメインとも言える「ナビゲーター」を演じたのも今回が初。
そういう意味では配役の面から言っても、過去のギャラリー公演の配役の観点から言っても、異例の事が行われた事になります。
今回、國崎馨嬢が幽湧を演じた事は、今後、シリーズ化する「夜行万葉録」シリーズの可能性を、幽湧というキャラを中心に大いに広げる大事件だったと思う次第です。
 
細かいところだと終演後の物販が「ジャンベルショップ」という名義になって、以前より力が入っているところなどが上げられ、ジャンベルの気合を感じる訳ですが……。
とにかく今回はこの大きな変更点二つがあまりにインパクトが強すぎて、いつものギャラリー公演を観ている気分には、ちょっとなれなかったですねぇ……。
ただマンネリを防ぐという意味ではいいのかも知れませんが……これが吉と出るか、凶と出るか……。
 
ちなみに公演時間は1時間15分と短めで程よくまとまっていました。
 
 
 
さてここからは各出演者の短評でも。
出演者の皆様は心して読んでください(笑)
 
 
[ナビゲーター]
 
・國崎馨
魂物神社の宮司・幽湧役。今回、唯一の客演でもある。※本公演を含めて、ジャングルベル・シアターには6度目の出演。
前回「夜行万葉録・辰」で福津氏が演じた幽湧を設定はそのままに、福津氏のそれとは違う妖しさと艶っぽさを漂わせ女性版・幽湧を見事に演じきってみせた。
女性にしては低く落ち着いた声質とたたずまいが印象的で、物語全体のストーリーテラーとしての役割をまっとうした。
客演ながら、これまで劇団員しか演じる事の無かった主役級ポジションを演じたきった事で、このギャラリー公演の可能性を一気に広げた。
 
・西村太一
秀倉敦文役。幼少時の記憶が一切無いが、とある事件を起こし、手元にある包丁で幽湧を人質に取る事になる。
事件をキッカケに記憶が戻りかけている姿に苦悩する男を好演。これまでジャンベルの中でも様々な役柄を演じてきた彼だが、その中でも一、二を争うほど暗い影がつきまとう役柄だった。
ただ長年、ジャンベルで様々な演じた経験値は伊達ではなく、この難しい役柄を時にコミカルな部分も交えて演じきったのは流石の一言。
ところどころ見せ場もあり、彼のファン、そして長年のジャンベルファンにとっても見応え十分だったと思われる。
 
・竹内俊樹
化け物役。記憶を失くしたという事で幽湧たちの前に現れるが、実は秀倉をある理由で守っている妖怪……その正体は……。
彼もジャンベルに入団して以来、様々な役を演じてきたが、今回はその集大成に近い形で様々な面を出してきた。
いかつくて頑なな印象の前半から、秀倉の過去に触れる事になる後半部にかけての人(?)の変わりっぷりなど、うまく演じ分けていたように思える。
すっかりジャンベルには欠かせない劇団員の一人として定着。今後の活躍も楽しみになった。
 
[第一話]
 
・浅野泰徳
第一話の化け物役がメイン。町で見つけた金持ち親子を食べようと付け狙う。ジャングルベル。シアター主宰にして脚本、演出担当。
第一話の性質上、どうしてもお笑いメインの構成になるため、今回はある種お笑い担当としての彼の真骨頂が観れたように思える。
第一話中盤における、岡氏との掛け合いの数々は最早、彼の伝統芸というか、職人技の域に達しているように思える。
今回、全体の物語の展開が重かったから、せめて役の上でははっちゃけたかったのか……そうとも見えなくも無いくらい、第一話通じて常にはっちゃけていた。
 
・松宮かんな
金持ち親子の母親がメイン。また母親以外では語り部の割合が一番多かったのも彼女。
ジャングルベル・シアターの看板女優……であるが、今回は贅沢な使い方をしている印象が非常に強かった……というか、お笑いに特化させていい役者じゃない!(笑)
色んな役柄が演じられるし、語り部としても非常に落ち着いているけど、なんだろう……彼女の今回のもったいない感は(笑)
なお個人的名シーンは、岡氏演じる息子との「おにーんじん、おにんじん♪」のくだり……別の意味で彼女の闇を見た気がする(爆)
 
・岡教寛
金持ち親子の息子がメイン。途中、一瞬であるが父親役も演じている。
彼はどうしてもこの劇団に入って以来、お笑い要員を演じる事が多いような気がしてならないのだが……まぁそれはそれでいいか(笑)
今回もその期待に違わぬ活躍を見せる。劇中の浅野氏との掛け合いの数々は非常に笑わせてもらいました。
それにしても劇中で見せた、飛行機から父親がパラシュートで降りてくる際のパフォーマンスが某カプ○ル兵団っぽいと思ったのは……気のせいだろうか?(笑)
 
[第二話]
 
・本多照長
第二話の化け物役がメイン。川原の穴に長年住んでいる。なお劇中以外でも前座、ジャンベルショップ店長などで活躍。
今回はいかにも彼らしい役柄だったと思う次第です。見た目、怖いけど実は心優しい、純粋に見えるような役柄は実に似合っている。
また劇中で豹変して先生(篠崎氏)に襲い掛かるような描写など、本多氏のファンならとても見せ場たっぷりで満足したと思う次第です。
8月には「豚足亭鈍痛」としての高座も控えています。今もっている彼の持ち味とはまた違った方向性で、演技の幅が広がるのを楽しみにしています。
 
・篠崎大輝
先生役と語り部がメイン。これまでのジャンベル作品での(演じている役柄の)死亡率は非常に高い(爆)
……という事で今回も劇中でお亡くなりになりました(爆)彼の死に顔を拝見する事や断末魔の叫びを聞くことが、最近のジャンベル名物の一つになっているような気がします(爆)
それくらいお亡くなりになった時の表情は絵になってます(爆)今回演じた先生の最期も非常に良かった(?)です。
もちろん先生としての落ち着いた感じや、優しそうな感じも、語り部としてもいいのですが……お亡くなりになった時に彼の真骨頂が詰め込まれている気がしてなりません(爆)
 
・都築知沙
少年役がメイン。劇中では変わった石を拾う事が趣味という設定。
現在、役者としての活動休止中のおこに代わって、劇団内の少年役ポジションにうまくあてはまっている印象が非常に強く、また今回もその期待に違わぬ演技を見せた。
恐らくもう少し年齢層の高い女性の役柄も演じられるとは思いますが、今回と昨年の「悟らずの空2015」を見ていて、劇団としては彼女に少年役での活路を期待しているようにも思えました。
非常に細やかな演技が出来る役者の一人なので、今後の活躍にも期待したいと思います。
 
[第三話]
 
・福津健創
作業着の男役がメイン。秀倉(父)に対する恨みから復讐に走る……。前作「夜行万葉録・辰」で初代・幽湧を演じている。
まさに狂気の塊ともいえる迫真の演技……舞台だと分かっていても、文字通り「鬼気迫る」演技の数々に恐怖を感じた。
一昨年の初代・幽湧とは、とてもじゃないが同一人物とは思えない。これまで様々な役柄の彼を拝見したつもりだったけど、ここまで純粋な狂気に駆られた役も初めてだったのではないだろうか……。
本当に凄いという言葉と、怖いという言葉しか感想が出てこない。圧倒された。
 
・大塚大作
秀倉の父役がメイン。作業着の男に対して冷たくあしらうなど、非常にドライな一面を持ち合わせている。
前半は非常にドライな感情表現に徹し、後半は父親としての感情をむき出しにしており、一つの話の中で両面を見せてくれました。
昨今は(得意分野の?)熱い役に特化していたような気がするので、久々にそれ以外の彼の演技を観れたのは、とても良かったと思います。
ちなみに個人的には前半のドライな態度の大塚氏は嫌いじゃないし、むしろああいう抑えた感じの演技も好きです。
 
・升田智美
秀倉敦文(少年)役がメイン。一部で秀倉(母)も兼ねる。父のいさかいをキッカケに凄惨な事件に巻き込まれる事となる……。
これまでほとんど歳相応の女性役が多かったが、彼女の少年役を観たのはこれが初だったような気がする。
元々女性にしては声質が低いのも手伝ってか、劇中で違和感を感じる事はほぼ無く、しっかり少年を演じきっていたと思う。
それにしても彼女、怖い話を演じさせたら本当に絵になる……恐怖で震える描写や、ラストの絶叫のシーンなど見せ場は沢山ありました。
 
 
……そんな訳で久々の観劇だった今回。
 
いつもより観劇の回数こそ少なかったけど、十二分に堪能させていただきました。
これまでのギャラリー公演のセオリーを崩しつつも、新たな試みを貪欲に取り入れた意欲作として楽しませていただきました。
 
そんなジャングルベル・シアター、年末には史上初の2本立てロングラン公演が待っているとの事……。
こちらも楽しみに待っております。
 
・ジャングルベル・シアター公式サイト↓
http://www.junglebell.com/