※この舞台は11/18~11/24まで行われた舞台で既に公演は終了しています。
もうこのレポートではお馴染みのジャングルベル・シアター(略してジャンベル)
1995年に結成、今年は結成20周年という記念すべき年となっております。
そんなジャンベルが今年の春に、ギャラリー公演でお馴染みだった「おとぎ夜話」シリーズを初めて劇場で演じたのも記憶に新しいところ……。
そして今回、その20周年の締めくくりとして行われたのが……「20周年記念公演」と銘打って行われたのが本作品……「悟らずの空2015」です!
このタイトルでピンと来た方も、それなりにいると思います。
この「悟らずの空」2011年2月に初演が、今回と同じ池袋・シアターグリーン BIG TREE THEATERにて行われました。
今回はその初演(以後、便宜上「無印」と明記)から約4年半ぶりの再演となりますが、ダブルキャストの「悟らずの空2015」として再演と相成りました。
再演……と言っても「無印」から約4年半の月日を経た今回。
随所にパワーアップ、マイナーチェンジがあり、「無印」を楽しんだ者でも、まるで新作のように楽しめる内容になっておりました。
そんな「無印」から正当進化を遂げた「悟らずの空2015」……どのような物語か……。
……というのは、2011年に自分が書いたレポートを参考にしてください(笑)
・【舞台観賞】[総括]「悟らずの空」(ジャングルベル・シアター)
http://ameblo.jp/hitode0014/entry-10801715464.html
まぁ当日行けなかった方は、この物語がどんな内容か、簡単なあらすじでも分かっていただけたかと……(笑)
ただ改めて今回、拝見して思ったのは「この物語、あらすじ無くてもいけるんじゃない?」って事です(笑)
この物語の原作は、かの有名な「西遊記」
劇中にも出てくる、三蔵法師と悟空たち一行は恐らく日本中でも知らない人の方が少ないであろうくらい、有名な登場人物。
ジャングルベル・シアター版オリジナルストーリーの「西遊記」とは言え、基本的な流れは原作を踏襲して出来ています。
ただその「西遊記」のテイストを損なわずに、ジャンベルなりのヒューマンドラマを盛り込んだのが、この「悟らずの空」と思っていただければいいと思います。
だからジャンベルを知らない人なら「西遊記」のイメージで、「西遊記」を詳しくない人ならジャンベルのイメージで舞台を観れるので、そういう意味では舞台初心者でも安心して楽しめる作品だと思います。
そんな「悟らずの空」ですが「無印」、また今回それぞれのチーム【天】と【空】でも多少違いがあります。
以下、代表的な例を挙げていきます。
・OPの演出。【空】が「無印」を踏襲して舞台下手から各出演者が登場するのに対し、【天】では暗転からの始まりとなっている。
・「無印」ではOPはBGMにダンスだったのが、「2015」では三蔵法師演じる綿引さやか嬢の歌に乗せてのダンスとなっている。
・登場人物の演出が微妙に違う。特に顕著なのは柳骨夫人ら柳の妖怪たち、銀鶏、填営。ダブルキャストならでは醍醐味と言って過言ではない。
・一部登場人物が「無印」の時と衣装が違う。特に銀鶏は登場人物の中で武器が唯一変わっている。
・填営に至っては性別が違っている。
・舞台装置の櫓が「無印」の時の梯子櫓から変更。櫓についている扉がまるで門のような外観に変わっている。
……などなど……。
探せばもう少し出てくるのでしょうが、パッと目に付いたり、思いだせるだけでもこれだけの変化がありました。
それ故「無印」を観た方でも、または「2015」を【天】【空】両方観た方でも、それぞれに楽しめる構成になっています。
(もちろん、今回どちらかのチームだけ拝見した方でも十二分に楽しめる内容でしたが)
そんなこんなでコミカルな笑いと、舞台狭しと暴れまわるアクション、そして感動を呼ぶそれぞれの登場人物のヒューマンドラマが凝縮された「悟らずの空2015」……。
上演時間約2時間はあっという間に過ぎていき、最後にはきっと清々しい気分になる事間違い無しの快作でした。
それではここからは各出演者について語ります。
※いつもなら役者名(役名)の表記ですが、今回は一部ダブルキャストなので、役名を先に紹介。
続いて演じた出演者ごとに寸評します。
シングルキャストの出演者は名前の前に●、ダブルキャストの出演者は名前の前に【天】【空】と記載します。
・三蔵法師
天竺までの巡礼の旅の最中の高僧。三匹の妖怪を弟子に持つ。「無印」で演じたのは程嶋しづマ(今回、孫悟空役)。
●綿引さやか
※客演。ジャングルベル・シアターには初出演。
ミュージカル「レ・ミゼラブル」などで活躍した実績もあり、今回、OPでは歌を担当し、序盤から客層を世界観に引きずり込む。
劇中では悟空たち妖怪の師匠ではあるが、非常に人間臭い一面が出ており、どこか人間としては未熟な一面を覗かせる事もある。
そんな三蔵を全編通じて自然体で演じており、物語全体を通じて、三蔵という人間の成長が見てとれる好演が光りました。
・孫悟空
三蔵の一番弟子。実質、この物語の主人公。岩猿の妖怪。「無印」で演じたのは西村太一(今回、銀鶏【天】役)。
●程嶋しづマ
※客演。前回出演は2015年春公演「おとぎ夜話~特別編~【大黒天】」(用務員・大山役/第二話出演)。7度目の出演。
すっかりジャンベルではお馴染みの程嶋氏。「無印」では三蔵法師を演じましたが、今回は孫悟空に抜擢。
小柄で俊敏な様はまさしく孫悟空そのもの。「無印」での三蔵のイメージがいい意味で覆されました。
全編に渡り思ったのは、相変わらずいい声しているというところ。終盤の台詞「業を背負って、ぶっ殺す!」にはとても痺れました。
・猪八戒
三蔵の弟子で、豚の妖怪。提玉に惚れて、一行を抜けようとするが……。「無印」で演じたのは浅野泰徳(今回、同役)。
●浅野泰徳
ご存知、ジャンベルの主宰にて脚本・演出。初演に引き続き、浅野氏が演じる。
序盤から中盤にかけてのコメディタッチな役回りが多いが、終盤の金鶏らを倒す一連のシーンは非常に見応えがあった。
三蔵一行の中では単独での行動、シーンが多く、色んな意味で一番美味しい役回りだったと思う。(主宰特権ともいえなくないですが)
・沙悟浄
三蔵の弟子で、水蛇の妖怪。坊主ばかり九人食って殺した過去がある。「無印」で演じたのは斉藤佑介。
●桜田航成
※客演。ジャングルベル・シアターには初出演。
舞台「戦国BASARA」などで実績がある方。「無印」の斉藤氏に続き、三蔵一行の中では「イケメン枠」
舞台の上では、非常に知的で冷静な役回りが多い。また見せ場も坊主を食って殺した過去を悔恨するシーンや、終盤の殺陣など枚挙にいとまがない。
恐らく数多くいたであろう彼のファンにとっても満足いただけたかと思う。が、序盤の「ババアの再現度の高さ」も忘れられない……。
・火焔大王
大火焔山を治める火の妖怪。水の妖怪の水玲仙女に恋してる。「無印」で演じたのは三井俊明。
●町田誠也
※客演。前回出演は第12回公演(2002年)「風花の桜」に友情出演。2度目の出演。
開演前から自身のブログで火焔大王に負けず劣らず、熱い思いをブログで執筆するなど、とにかく公演に賭ける思いが熱かった。
実際、舞台の上ではいかにも大物、ラスボス感漂わせる威厳のある姿を見せたかと思えば、コメディタッチな役回りも難なくこなし、広いふり幅を見せてくれた。
劇中の名台詞も多く火杏媛に対して言った「あばよ!」とか、終盤の「ずっとあなたが……」の絶叫などは、この舞台を語る上で欠かせない。
・火杏媛
火焔大王の妹。水玲仙女を色んな意味で目の敵にしている。「無印」で演じたのは堀江あや子。
●稲垣希
※客演。前回出演は2008年春公演「青葉の足音」(瀬口青葉役)。3度目の出演。
ジャンベルでは「青葉の足音」で主演を張った稲垣希嬢。ジャンベルには久々の出演となる。
劇中では比較的報われない登場人物の一人。全編通じて「打倒、水玲仙女!」の信念の元に動いているので、他の妖怪たちとは、どこか雰囲気や立ち位置の違いも見受けられた。
前半の火焔大王が出家する時の話を聞かされた時に見せる呆れ顔は秀逸。演じた稲垣嬢は非常にかわいらしい方……こんな妹がいる火焔大王が羨ましいと思った方もいるのではないだろうか?
・水玲仙女
かつては水の女神だったが、地下水脈の主に成り下がってしまった水の妖怪。「無印」で演じたのは村井みゆき。
●梅宮万紗子
※客演。ジャングルベル・シアターには初出演。
かの有名な梅宮辰夫氏の姪。一部のファンには「仮面ライダー響鬼」などでレギュラー出演していた事でも有名。
自らを「水の女神」と信じ、それに沿った立ち振る舞いをしている。が、随所でワガママな一面や、ちょっとずれた発言もある。それでもどこか憎めないのは彼女の演技の為せるところか。
非常にきれいな方だし、火焔大王が惚れるのも分かる。この作品の「ヒロイン」をしっかりと演じてくれたと思います。
・水蘭
水玲仙女の忠実な部下。水玲仙女の活動源「甘露水」を唯一用意出来るだが……。「無印」で演じたのは船津久美子。
●宮本京佳
※客演。ジャングルベル・シアターには初出演。
劇中では恐らく最も報われない役だったのが、彼女が演じた水蘭。「甘露水」の正体を知った水玲仙女に見放され、最後は妖怪たちの手にかかるという最期を遂げる。
しかし殺陣においては見せ場が非常に多く、また最期を遂げる直前、火焔大王に後事を託すその姿はまさに忠臣の鑑とも言うべき見事な最期だった。
報われない役回りだったけど、最期のシーンをひっくるめて、一番印象的な最期を遂げたといういう意味では、印象に残った登場人物の一人に確実に上がるのは間違いない。
・柳骨夫人
森に住む柳の妖怪の根っこと幹担当。「無印」で演じたのは福津屋兼蔵(現・福津健創/今回、【空】で同役)。
【天】松宮かんな
ジャンベルの副座長。前回では提玉を演じてから、今回は柳骨夫人という……ある意味、彼女だからこそ可能だった配役チェンジ。
【空】の福津氏の柳骨夫人がまさに「化け物」だとするなら、彼女の場合、女性としてのしなやかさがどこか垣間見える……まさに「老女」だったと思う。
台詞の一つ一つの抑揚の変化や、立ち振る舞いなど、柳の妖怪たちのボスを見事に演じきったと思います。
【空】福津健創
前回に引き続き、もうやりたい放題、柳骨夫人を演じたというのが第一印象。
前述の通り「化け物」度合いで言ったら松宮さんを上回る怪演に次ぐ、怪演!とにかく前回以上に濃厚だったし印象が強すぎる。
最初から最期まで、これでもか!というくらいの福津テイスト満載でお送りした今回。次回も楽しみにしております。
・柳花
柳の妖怪の花担当。色気を使って、三蔵を「穢そう」とする。「無印」で演じたのは鵜飼真帆。
●國崎馨
※客演。前回出演は2015年春公演「おとぎ夜話~特別編~【大黒天】」(第二話出演)。5度目の出演。
ジャンベルではすっかりお馴染みの出演者の一人。柳の妖怪では唯一のシングルキャスト。
最大の見せ場はなんと言っても、三蔵の「男」を奪おうとする一連のシーン。お色気たっぷり……なはずが、会場を爆笑の渦に包み込んだ、三蔵とのやり取りは劇中でも屈指の名(迷?)シーン。
それ以外のシーンでもシーンごとに見せる表情の数々、そしてアクションの数々に目を奪われた。まさに色んな意味で花は咲いていました。
・柳蕾
柳の妖怪の蕾担当。まだ蕾だけあって、幼さ、あどけなさが残る。「無印」で演じたのは野上あつみ。
【天】斉藤有希
※客演。ジャングルベル・シアターには初出演。
まず第一声としては、とにかくかわいい。恐らく劇中の女性陣の中で「かわいい」という言葉が一番似合ったのではないでしょうか。
もっとも劇中ではただかわいいだけじゃなく、どこか無邪気かつ、良くも悪くも純粋さを併せ持った演技が印象的。水玲仙女に「甘露水」の秘密を話すシーンの悪そうな表情とかは小悪魔そのもの。
國崎嬢演じる柳花とのコンビネーションも抜群で、最期のその瞬間まで、しっかり存在感を発揮してくれました。
【空】今村祈履
※客演。ジャングルベル・シアターには初出演。
彼女もとてもかわいらしい……のだけど、斉藤嬢の柳蕾とは違った、どこかエキセントリックな部分がちょいちょい垣間見えた。
とにかく殺陣一つ、動き一つにしても、凄い動きが特徴的。組んだのが福津氏だったのも多少影響しているかもしれないけど、彼女自身、単品でも相当濃いキャラになり得たのではないか……。
それ故か彼女の場合、悪そうな演技や表情が非常に印象的。水玲仙女に「甘露水」の秘密を話すシーン以降、真骨頂が発揮されたのではないか……そう思います。
・金鶏
火焔大王の部下の金属の妖怪。銀鶏の兄にあたる。やや脳筋。「無印」で演じたのは神田英樹。
【天】結束友哉
※客演。ジャングルベル・シアターには初出演。
体格の良さ、モヒカン調の髪型。ゴツイ体格で、大斧をぶん回す……まさにパワー系の妖怪のイメージにピッタリ。
悪そうな表情をしているのだけど、どこかコミカルな部分も垣間見せるあたり、ただの憎まれ役では終わっていない。
最期は猪八戒の前に破れるものの、劇中において、最初から最期まで敵役としての悪を貫いた姿は、銀鶏と共に忘れられない敵役でした。
【空】岡教寛
前回公演に引き続き元劇団員・神田英樹氏の役を演じるあたり、彼が神田氏の後釜になりつつあると感じる。
ただ「無印」の神田氏、【天】の結束氏とも違い、長身ながら特徴的なアフロヘアーも活かしつつ、コミカルな部分を得意としており、ただ嫌な奴を嫌味に演じていない部分に味を感じる。
やはり見所は最期を迎える猪八戒との戦いだけど、最期のその一瞬までの一連の殺陣は見ていて痺れたし、見事な最期でした。
・銀鶏
火焔大王の部下の金属の妖怪。金鶏の弟にあたる。ややナルシスト。「無印」で演じたのは及川崇治。
【天】西村太一
「無印」では孫悟空というヒーローを演じた西村氏が、どう悪いところを演じるのか注目していましたが、いい感じで悪かったです。
また「無印」の銀鶏の及川氏を踏襲しつつも、ちょっとずれたナルシスト感が個人的には好きでした。
劇中では恐らく一番憎まれそうな役を演じたはずなんだけど、その運動神経の良さ、殺陣の素晴らしさから、それだけでは終わらなかった。さすが西村氏です。
【空】竹本洋平
※客演。ジャングルベル・シアターには初出演。
「無印」の銀鶏のイメージに近いのは彼が演じた銀鶏だと思う。
ただしかっこつけている時の姿は明らかに氷○京介……途中から脳内での呼び方が「銀ちゃん」から「ヒ○ロック」と変換されていた……。
劇中では屈指の憎まれ役のはずなのに……どこか憎みきれない部分も。それでも最期の最期まで、純粋に敵役として演じきったところは高く評価されていいと思います。
・填営
四方を妖怪に囲まれた村の村長。黄をやたら目の敵にしている。「無印」で演じたのは本多照長(今回、【天】で同役)。
【天】本多照長
「無印」に引き続き村長の填営を演じる。前回と違い従者との漫才(?)がシーンとして加わっている。
実は出演シーンは2場面だけなのだが、劇中の「金をよこせ!」の台詞のくだりの印象があまりにも強すぎて、この劇中における人間役の代表例となっている。
やっている事は非常に悪いのに、言っている事に間違いはなく、一瞬とは言え、三蔵をたじろかせるあたりの迫真の演技は流石。
【空】佐藤沙予
※客演。前回出演は2013年春公演「天満月のネコ」(オルガ役)。3度目の出演。
「無印」及び【天】で本多氏が演じた役を「女村長」として迎えただけでも、難役と思いましたが、【天】以上に嫌な面を出しまくっていた。
特に黄を軽く小突いたり、振り払ったりするところは【天】以上の嫌味さ。「金をよこせ!」の台詞のくだりも迫力十分で非常に素晴らしかった。
そんな嫌な感じの女村長を演じきった佐藤沙予嬢……ですが、舞台後の挨拶では非常に丁寧で優しい感じの方。この落差に役者としての底力を感じました。
・坤宮道士
旅の道士。填営に雇われ、ある「禁断の術」を用いる……。「無印」で演じたのは大塚大作。
【天】佐藤貴也
※客演。前回出演は10周年記念公演(2005年)「CALL ME」(根本博史役)。3度目の出演。
個人的に拝見するのは初めてですが、ジャンベルにはなんと10年ぶりの客演。
坤宮道士は中盤までと、その後で印象が全く変わってしまう役ですが、とにかく彼の場合、その印象が変わるまでの善人っぷりは非常に感じが良かったです。
そしてその印象が変わるところでの表情の作り方も、とても悪そうでした。一粒で二度美味しい役柄を演じきったと思います。
【空】篠崎大輝
すっかりジャンベルに馴染んでいる篠崎氏。これまで(何かと)やられる側の役柄が多かったと思いますが、今回はある意味逆の立場。
【天】同様、中盤で印象が全く異なる役柄ですが、彼もまた善人っぷりと、その後の悪い顔の作り方が非常に秀逸。
坤宮道士の劇中ラストシーンは、填営と共に去っていくのですが、その際、二人並んで、三蔵一行をどこかにらみつけるような表情は秀逸でした。
・堤玉
村に住んでいる女性で未亡人。黄の母親。半年前に行方不明になったのだが、実は重大な秘密が……。「無印」で演じたのは松宮かんな(今回、【天】で柳骨夫人役)。
【天】長尾歩
※客演。前回出演は2015年春公演「おとぎ夜話~特別編~【大黒天】」(第三話出演)。5度目の出演。
彼女もジャンベルの常連となりつつある出演者の一人ですが、その落ち着いた口調は本当に安心感を与える。
黄の前では優しい母親。しかし猪八戒の前で見せるかわいらしい(?)姿など、意外な一面も見せてくれる。その辺りのギャップも観てて楽しい。
実はこの物語を語る上では欠かせないキーパーソン。妖怪たちに操られた後に訪れる、彼女の最期での死に際は涙なしには語れないし、涙なしに観れない名場面だった……。
【空】升田智美
「無印」ではアンサンブルだった升田嬢。役柄においては出世を果たした形に!?
ハスキーボイスが持ち味の彼女だが、今回は終始、優しい母親を演じ、女性らしい、母性に溢れた高い声で安心感を与えてくれました。
母性的な役というと「サラマンドラの虹」のティビルを思い出すけど、それとは違った母性愛に溢れた役柄を演じた事は、今後の彼女の役者としての幅に広がりが期待が持てると思いました。
・黄
村に住んでいる小作人の少年。母親の提玉の面倒見ながら生活している。「無印」で演じたのは塚本善枝(現:おこ/今回、【空】で同役)。
【天】都築知沙
劇団員になってちょうど一年が経った「うまちゃん」こと都築嬢。前回公演に続き、おこ嬢が演じた役を彼女もまた演じる事に。
結論から言ってしまうと少年役がうまくてかなり驚いた。これまでの公演で少女役、小動物系は難なくこなすのを知っていたけど……ここまでとは。彼女の将来性を感じました。
一番の見せ場である、提玉の臨終のシーンも涙を誘ったし……これからも彼女の成長が楽しみでなりません。
【空】おこ
「無印」に引き続き同役。もうこのジャンルにおいては、この劇団では他に追随を許さないと思っている。
実際「無印」と遜色無い……いや、むしろ4年半の月日を経て、更に磨きがかかったとも言える少年役を見せてくれました。きちんと見せ場、見せ場で絵になる演技を見せてくれ、途中、彼女が女性であるのを忘れるくらいハマっていました。
今回の公演を最後に、しばらく役者業を活動休止するのが非常に惜しい。また復活する際には素晴らしい演技を見せてほしいと願います。
・アンサンブル
時に物乞い、時に妖怪のモブ、時に村人、時に火浣布(火焔大王の道具)だったりする。「無印」では片柳克敏、濱島博一、升田智美(今回、【空】で堤玉役)、加藤由佳。
●畠山昌也、宮本雅行、鎌田亜由美、豊島悠子
縁の下の力持ち四人衆。彼らの力なくして、この舞台は決して成り立たなかった。
火浣布で派手なアクションと激しい戦闘で魅せ、村人ではコントを披露して、物乞いではOPの重要な場面を演じたり……実に活躍の場は多数!
実はシングルキャスト以上に体を酷使したのではないか……そう思える。彼らの活躍も決して忘れてはいけない。ありがとう……アンサンブルの皆様!
……と言ったところでしょうか。
物語全体を見ていて、各登場人物思うところは多々あります……。
個人的に水蘭は立場的に泣ける。一番、報われない立場だったけど、一番、忠義を尽くしたし、個人的にも大好きな役の一人です。
別の意味でかわいそうなのは、火杏媛。兄貴は女の下に走るわ、部下に裏切られるわ……踏んだり蹴ったり過ぎてかわいそう……。
まぁ……普通に考えれば提玉なんて、普通に被害者ですよね。だって無理矢理「土の妖怪」にされている訳だし……。
同じく黄少年も被害者なんだけど、提玉の身に降りかかった不幸を知らないまま、最期を見届けたのはある意味幸せだったのかも……結果、誰も恨んでないしね……。
そういう意味では一番結果オーライなのは、填営たちでは……。
……などなど思いつつ、それでも三蔵一行の大活躍に身を乗り出し、心を躍らせた七日間。
とにかく本当にこの舞台の最中はとても楽しかったし「西遊記」の世界にどっぷり浸かっていました。
そしてOPで流れた三蔵法師役・綿引さやか嬢の歌声が今でも脳内リピートしているし……いやあの歌、音源化してくれないかな。買うよ。間違いなく(笑)
とにかくジャングルベル・シアター20周年を飾るのに相応しい、大型大衆演劇だったと本当に思います。
個人的には「悟らずの空」そのものの続編が観たいくらいだけど……浅野氏、しばらくは書かないだろうなぁ(笑)
後は物販で購入したメッセージカードや、チェキが面白い事になっているんですけど……ま、これは個人的な思い出という事で(笑)
(アンサンブル・宮本雅行氏の「火浣布」メッセージカードが2回当たったとか、沙悟浄・桜田氏のチェキが当たって女性ファンのお客様の目を気にしたとか……ね)
本当に……本当に非常に素敵で楽しい舞台でした。
ただ個人的には……自分がずっと応援してきた、おこ嬢が今回の公演を最後に活動休止してしまうので、終わった際は一抹の寂しさもありました。
自分がこうしてジャングルベル・シアター、しいては舞台を観るようになったキッカケは間違いなく彼女の存在があったから……。
でもここで寂しいと言っても、仕方ありません。
また彼女が戻ってくるその日を信じて、今後も彼女の応援を続けたいと思います。
そしてジャングルベル・シアターも引き続き、応援していきたいと思います。
次回は来年6月……久々のギャラリー公演!楽しみにしています!
最後にこの劇中で、最も気に入った台詞を、ジャングルベル・シアターに向けて言って、このレポートを締めたいと思います……。
「あばよ!」(by・火焔大王)
・ジャングルベル・シアター公式サイト↓
http://www.junglebell.com/