1945年生まれのヴィム・ヴェンダース監督による、同い年のドイツ人芸術家アンゼルム・キーファーについての映画である。

広げた翼のイメージが印象的なのは、2人の表現者に共通する大切なモチーフだからだろう。


ドキュメンタリーに分類される作品だが説明的ナレーションは最小限で、登場する作品群への主観的批評も行わない。作られた作品と制作の事実を、ゆったり美しい撮影で見せることに徹している。


鉛で出来た大量の超大型本作品の図書館では、筋肉モリモリマンが書棚に本を差し込む場面が登場!ヒトひとりの身体で扱える最大サイズと重量なのだなと思う。


そして、様々な巨大絵画作品の制作過程が垣間見れるのは興味深い。荒々しくも、じっくりと丁寧に作られていることが皮膚感覚で感じ取れて収穫だった。


時の翼に乗って過去と現在をさすらう


キーファーの息子とヴェンダースの孫甥が、過去イメージを演じる役者として登場するのは、託すべき未来の象徴と感じる。


やさしい時間の流れはヴィクトル・エリセ監督の「マルメロの陽光」を少し連想した。