絵画制作で使う材料に膠(にかわ)がある。


色の粉・砂を紙などの表面に定着させる糊の役割を果たす展色剤(バインダー)・メディウムの一種だが、奈良・平安時代から明治維新の頃までの日本絵画は、ほぼ膠による技法で描かれている。


明治以降は、それまでの絵画派閥を膠の技法で統合した「日本画」のジャンルで使用されてきた。


膠は、動物の皮革や腱などに含まれるゼラチン質のコラーゲンを抽出・精製したものであり、「日本画」では、主に牛の皮革から作られた「三千本膠」が使われてきた。

因みに、関西系の煮込料理に入っている牛すじのプルプルが膠の主成分と同じものである。


東京都東中野駅前のポレポレ座ビル7階で開催中の展覧会では、兵庫県姫路市で絵画用膠を制作する大﨑商店に取材したドキュメンタリーを見ることができる。


伝統芸能、祭りなどに欠かせない太鼓皮の制作から始まる映像。食肉処理に関する写真。膠を使い描かれた絵が、柔らかな繋がりを想起させる空間内に点在している。


それぞれの存在がこの世での役割を全うして、生きて、死んでいく、いとなみ。


膠は人間の身体をカタチ作る細胞を繋ぎ、生命活動の重要な役割を担う要素のひとつである。