一昨日、福岡での黒木渚の復帰ライヴ『音楽の乱』を観に行く前、そう思っていた。
そして、実際のライヴ会場は、観客の歓迎ムードでかなりの熱気で、こちらも軽くテンションを押し上げられたような気分になる。
実際、ステージ上の黒木渚は、本人がMCで言っていたように、今後もまだリハビリは必要で、歌ってても、喉のコントロールがうまくいかないこともあるそうで、確かに本調子とは言えなかった。
でも、感情や込めた熱量は伝わってくるし、それらを増幅させてるのが、「歌えるようになって、ライヴができるようになって、嬉しい」という彼女の喜びだ。
ステージ上で撒き散らされたその喜びは、彼女が曲の中で表現してきた、陰影や生々しさや強さを、これまでにないくらいポジティヴな響きに変えていった。
その様は、「妖精の粉を撒き散らすティンカーベルみたいだ」と言ったら、ちょっとイメージが違うかな(笑)。でも、そんなふうに見えないこともないくらいポジティヴだったんだよね。
これが、声楽家やミュージカル歌手だったら、酷評されたかもしれない。でも黒木渚の音楽は、ポップミュージック(大衆音楽)なんだから、技術的に完全じゃなくても、こちらにちゃんと伝わってくるものがあれば、成立するのだ。
とにかく、見終わった後に、心の奥に清々しさがずっと留まっているようなライヴだった。あの清々しさを、観客の心に残せただけで、成功だったんじゃないかな。