「おはよう、鳴海♪」

「…おはよう、洋子」

「…どうかしたの?」

「んー、よくわかんない」

「?」

そう、正直よくわからない。

わたし、綾瀬鳴海はどこにでもいるごくごく一般的な女子高生だ(と思っている)。

昨日は図書館に行って、その帰りのCDショップで店のお姉さんと話し込んでしまった。

おかげで帰るのが遅くなって、一人で歩いていたところまでは覚えている。

ただ、そこから先の記憶がいまいち残っていない。

気づいたら早朝。

見知らぬ公園のベンチで眠っていた。

ご丁寧にダンボールを布団代わりにして。

おかげでまったく寝た気がしない。

それどころか、どういう経緯でそうなったかが理解できない。

学校の人たちに見られたら恥ずかしいじゃない!

そういう問題じゃないことも一応理解してる。

「ねえねえ、元気ないならあんたも来る?今日の飲み会」

「…元気なくても誘ってるよね?いつも」

「いいじゃん、今日の相手はN高の男子よ?」

「んー、パス。お酒、飲めないし」

というかそんな気分じゃない。

うちに帰ってちゃんとベッドで寝たい。

昨日のこともあるし、今日は早く帰ろう。

視界の端に、2つの死骸。


目線の先に、2人の男。


目の前には、鈍く光る刃。


私は3人の男に殺されかけ、今、目の前の男に助けられている。


咆哮、


殺気、


地を蹴る音。


同時に死骸は、3つに増えた。


「大丈夫か?」


残った男が、私に手を差し伸べる。


血で濡れた手を、


今まさに、男を殺した手を。


私は、悲鳴を上げた。



***


衝動小説第2弾。

タイトル未定じゃありません。


「Beast」です。


かなり昔から大雑把なアイディアだけ(脳内に)あったのですが、ふと思い出したので日の目を見せてやろうと思いました。


実は三部作ですが、完成した作品一つもないので、どこまで行くか微妙です。


まあ、気長に行きましょう・・・いきまっしょい。

僕は、同性の友人たちに比べてよくタバコを吸う方だと思う。

たいしたこだわりは無いが、なんとなく落ち着くのだ。

某助教授さんのように思考が加速したりする感覚は無いが、それでもタバコはいいものだと思う。

少なくとも、自分の命に強い執着がない人間には。

「おや、きたね。ずいぶんと久しぶりじゃないかい、マエストロ」

なじみのタバコ屋のおばちゃんだ。

安くしてくれるわけでも笑顔が素敵なわけでもないが、なんか親しみやすいのだ。

そんなおばちゃんは今年で80歳になるらしい。

「マエストロってのはやめてくれないかな、おばちゃん。

僕はまだそこまで経験つんでないし、有名でもないよ」

「何言ってんだい。普段から言われ慣れとかなきゃあ、いつか言われたときに困るだろう?」

「どういう理屈なのさ・・・」

ちなみにおばちゃんは、僕が常任を勤めるオケの会員でもある。

演奏会があると、足しげく通ってくれるのだ。

・・・足しげくとはちょっと違うかもしれない。

「おばちゃん、昨日の演奏会は来てくれた?」

「ああ、昨日はいけなかったんだよ。孫が来てたからね」

「・・・孫連れてきてよ」

「また第九をやったのかい?」

「うん、いつもどおり。1週間後の公演でもやるけどね」

「またやるのかい。じゃあ今度は行くことにするさね。久々にあんたの第九も聞いときたいし」

「来て来て。第九以外はマイナーなのやるつもりだけど」

そんなやりとりをして、タバコを買って帰路につく。

さあ、今日はフランクたちにご飯でも作ってあげようか。