結婚前なのに、筆頭者はご主人ひとり。
相続の仕事をしていると、亡くなった方や相続人の戸籍を何通も見ることがあります。
そんな中で、ときどき、
「ん?」
と手が止まることがあります。
たとえば、ご夫婦の戸籍を見ていて、ご主人の結婚前の戸籍が出てきたとします。
普通なら、
「結婚する前なら、お父さんかお母さんが筆頭者の戸籍に入っているのかな」
と思いますよね。
ところが、その戸籍を見ると、
筆頭者が夫本人。
しかも、夫ひとりだけの戸籍だった。
さて、これはどういうことでしょう。
「もしかして、この人、前に結婚していた?」
そんなことが頭をよぎるかもしれません。
今回は、そんなちょっとした戸籍の「なんで?」のお話です。
筆頭者だから、前に結婚していた?
たしかに、そういうことはあります。
以前に結婚して夫が筆頭者の戸籍を作り、その後に離婚した。
妻がその戸籍から抜けても、夫はそのまま筆頭者です。
ですから、結婚前から夫本人が筆頭者だった、という戸籍を見て、
「以前に結婚していたのかな」
と考えるのは、それほど不自然なことではありません。
でも、それだけで離婚歴があるとは限りません。(実際には多いですが…)
「分籍」ということもあります
結婚していなくても、自分が筆頭者になることがあります。
その一つが分籍です。
成年になった人が、親の戸籍から自分だけ抜けて、新しい戸籍を作る。
そうすると、本人が筆頭者の一人戸籍ができます。
父が筆頭者、母、成人した独身の息子。
この戸籍から息子が分籍すれば、息子本人が筆頭者の戸籍ができあがります。
ですから、
「結婚前なのに本人が筆頭者」
だからといって、
「前に結婚していたんだ」
とは限らないんですね。
単に分籍していただけ、かもしれません。
帰化ということもあります
もう一つあります。
帰化です。
もともと外国籍だった方が日本国籍を取得すると、日本の戸籍が作られます。
そのとき、本人を筆頭者とする戸籍が作られることがあります。
結婚前から夫本人が筆頭者だったとしても、前婚ではなく、帰化によってその戸籍ができた、という可能性もあるわけです。
ほかにも、養子縁組をして離縁したとき、氏を変えたときなど、本人が筆頭者になる場面はいくつかあります。
「本人が筆頭者の戸籍がある」
という一つの事実だけでも、理由はいろいろあるものです。
では、離婚歴があるかどうかは分かる?
ここが少し面白いところです。
戸籍に離婚と書いてあれば、もちろん分かります。
でも、
「今見ている戸籍に離婚と書いていないから、一度も離婚していない」
とは限りません。
戸籍は、転籍したり、新しい戸籍が作られたり、昔の戸籍がコンピューター化されたりします。
そのとき、過去に書かれていたことが、新しい戸籍に全部そのまま載るわけではありません。
ですから、
「この戸籍だけを見れば、その人の結婚歴が全部分かる」
というわけでもないんですね。
とはいえ、普段の暮らしの中で、わざわざ戸籍をどんどん遡って、
「あなた、この戸籍はどうしてできたの?」
と調べるような話でもないでしょう。
ちょっと気になったのなら、いつか何かの会話のついでに、
「そういえば、結婚する前から自分の戸籍だったんだね。どうしてだったの?」
くらいに、それとなく聞いてみる。
そのくらいが、ちょうどいいのかもしれません。
戸籍を見ていると、
「なるほど」
と思うこともあれば、
「なんでだろう?」
と思うこともあります。
全部をすぐに解明しなくてもいい。
なんでだろうと思ったら、それとなくご主人に聞いてみてください。
ただ、右の眉が上がったら要注意です。
今回は、「部屋とワイシャツと戸籍」でした。
戸籍と離婚歴については、前回の記事でも書いています。
こちらもどうぞ。

