結城屋の絣相場ときたら、気心の知れた植野さんが番頭をやっている。奥順より査定が厳しく周りの括り手が毛嫌いするほどである。結城屋のはちょと後回し、とか正直骨の髄までしぼられるなどと言われている。そこに挑む私はさすがにそれは地獄だったと思う絣仕事もあったりした。オヤジは結城屋の仕事は後回しにするほどである。私は現在の状態やコンディションを伝え、オヤジのGOサインを待つ。まず取引や商談はオヤジに任せていくらもらえるかはあまり気にしてない。というのも毎朝暇をみては乗国寺へお邪魔して、お茶会をし、憂さ晴らししてから仕事に挑む。朝6時から7時まで1時間会話し、交流し教えを得たりして心を清めている。ちょうどサラリーマンが朝仕事に行く前やゴミ捨て時間に当たる時間に動画を流すためみている人は少ないし、若い女性が熱心にみたり読んだりしているとは思えないし、実際には固定キャラのトークではあるものの年配者の意見とは私には参考になる部分は多い。さて絣仕事をTwitterのまゆさんに括りのときに呼びましょうということで何度かまゆさんがうちにきて括りの画像や括りの仕事とは、実際にはどういうものかと言ったものの説明やトークをしてきた。そして須藤伸子先生がうちにお越しになられ気がついたがどうやら私の絣依頼の織り手が先生であると知った。ここ数年160亀甲の本場結城紬をスケジュールピタピタ織り上げいまや他の追随を許さないほど高級な作品を織り上げ栃木県では県知事賞常連で織り手としての信用度は最高水準にあるベテランである。私は須藤伸子先生の息子さんの自前の蚊絣を手がけた。ギャラは実はいらないです、と言った。正直、私のような小坊主が産地を支えてきた生産者の先輩からお金を頂戴するほど滑稽たるシステムはないと思ったからである。そして須藤伸子先生の手がける絣ものとして私がいま食い込んできているというのは後にも先にもこんな生産者として光栄なこともないと思い、絶対にミミ合わせただけで織りやすい、また作ってね、と言われるような絣をてがけるしかない。結城屋の植野さんの指揮のもとオヤジを通して須藤伸子先生と関われる喜びもまた一括り手としてここまで私は邪魔扱いされてきた若造が産地貢献している不思議を感じ、須藤伸子先生ありがとう。また野菜持って遊びに行きます、なんて笑いあえる日が近いんじゃないかと思っちゃう。稲葉和枝先生から、北村は無料で括り、感謝状一枚でいいですという変わった職人がいるよ、という一言がここまで産地をつないでしまって、結城紬はどうなっちゃうんだろうかと思う。