タイトルおどろおどろしいですね。
表紙も怖い。やばい。
書店で買った時にレジのお兄さんがぎょっとした顔をしてた気がする。
私は外で本を読むことが多いので、ぎょっとされないためにいつもこのブックカバーをつけている。
ナマケモノとレモン🦥🍋
おしゃれ恋愛小説を読んでるとでも思ってくれ笑
とっても分厚い719ページ!
分厚い本を読むことは幸せだ。
ほっとくと一気に読んでしまうので、今日はここまで!とか自制しつつ読み進めるんけど、これはどんなに読んでもページが減らなくて幸せだった。
しかもページにみちみちに文章が詰まってるんですよ。
両サイドの隙間が狭い、字も小さい。
大好きなカフェでも読んだし、飛行機の中でも読んだ記憶。
『異邦の騎士』を家で泣きながら、頭痛に耐えながら読んだことに比べたら快適そのもの笑
振り返れば『異邦の騎士』は外で読まなかったし、自制せずに早く読み終わらねば!この物語をいつまでも抱えてるのはやばい!とか思ってたな。
あの作品のやばさを感じてたんでしょう。
それでもメンタルをやられたという笑
えーと、この作品ね。
斜め屋敷を読んで、次は長編で怖そう&面白そうなこれに行こうとしてたんだ。
書店には占星術、斜め屋敷、暗闇坂しか置いてないところも多いし。
でも順番を守りました!
だからこれを読むことを私は楽しみにしていたのです!
結論、これはきっと純粋なミステリーではない。
ミステリーにホラーというか怪奇小説的な要素が含まれている。
プロローグから始まり、少しずつ挿入されている過去の軸の物語(最終的に八千代の手記だったとわかるんですが)、これがとても不気味で良い。
石岡君の書く文章とは違って、丁寧語で語り口も柔らかいのに内容がグロテスクで奇妙。
そのギャップが恐ろしさを尚更増長させる。
どことなく無邪気なまるで子供に読ませるような文章なのに、中身はとんでもない。
恐怖を煽るという効果を狙っているとしたら、島田先生はさすがですとしか言いようがない。
冒頭の石岡君の憂鬱。
これは完全に『異邦の騎士』を引きずっている。
良子を引きずってる。
もう!なんか私も切なくなっちゃうよ!
これもちゃんと順番通りに読んだからわかることなんだよなぁ。
斜め屋敷からすっ飛ばして読んでたら、まあ秋ってそんな季節だねって感想しか持ってなかった。
それどころか石岡君の感傷には興味ない、御手洗を書けって思ってたかもしれないので笑
その憂鬱からいわばちょっとコメディなパートに移ってからの奇妙な死体の発見なのですね。
徐々に恐怖への入口に導かれていく感じ。
藤並家の人々もかわいいのは三幸ぐらいで、あとは奇妙な人ばかり。
まあ後々レオナが登場して、石岡君は大袈裟なほどその美しさを描写するわけだけど。
譲の古今東西の死刑についての蘊蓄、やたらと手が込んだいてちょっとびっくりした。
挿絵があったからね。
グロは苦手なのであまり想像しないようにしながら読んだ。
こういうちょっと横道に逸れてそこを深く掘り下げるところ好きだな。
前回も書いたけど、この作品の不気味さを強調するスパイスになるもの。
譲が殺されたと聞いた時の石岡君の反応も意外だった。
それに私自身、ごく短いつき合いだったのに、古今東西の死刑について熱心な解説してくれた譲の顔を思い出し、あの気のいい男がもうこの世にいないのだと思うと、すこぶる悲しかった。
…石岡君って良い人なんだなぁ。
あんまり人を嫌ったり悪く言ったりしないんだな、と妙な感想を持った記憶。
私の譲の印象は動物をいじめる気持ち悪いおじさんだったから笑
本当に長い物語なので、もう思いついたままに書き殴っていきますね。
刑事二人のこと。
御手洗が警察を煽るのはお約束、それに対して警察官がわーわー言うのもお約束。
今回は切れ味のいいディスりがなかったのでちょっと物足りなかった。
出会ってから割とすぐに楠から死体が出てきたので、刑事二人も御手洗のただものじゃない感を認めざるを得なかったのかな。
この刑事二人、なんだか最後まで気の毒だったよね…
わざわざ御手洗の事務所まで来て、プライドをかなぐり捨てて謝ってお願いしたのに、御手洗はふざけたあの態度。
深い理由があるんだって私にはわかるけど、刑事さんの気持ちを考えると胸が痛くなった。
御手洗さぁ…もうちょっと上手いこと言えないかな…
事情があって今はお話できませんとか、でもそんなの御手洗じゃないか…
突き放して二度と話を聞こうと思わせないことも御手洗の計画だったのかな。
素でやってそうな気もするが。
石岡君の本を読んで警察の中でも事件がやっと解決するのかな。
それもこれも全部レオナのため。
もう!こういう時に優しさが炸裂する!!
そりゃレオナも惚れるよ。
第一印象は悪かったろうが、もうあとは上がっていく一方だったでしょ。
極めつけに自分のために口を閉ざしてくれたことがわかって、そりゃ惚れる。
感謝の言葉(半分告白)を伝えるレオナに対し、困ってしまった様子の御手洗。
どうして人に感謝されるのがそんなに苦手なのかよくわからん。
どっちにしろ困っちゃう御手洗はかわいい。
遺伝について持論をぶつける御手洗もよかったな。
「〜遺伝に関しては、人間の空想がまだいくらでも許されるのです。そしてこのくらいは言えるでしょう。八千代さんも、その種の空想家であったと」
御手洗はレオナを励ますつもりはなくて、ただの事実を述べただけなんだろうけど、レオナは大いに救われた。
尚更惚れるぞ、おい。
そしてレオナの御手洗へ掛けた最後の言葉はこう。
「私は、決してあなたを諦めないわ!」
御手洗シリーズを全部読もうと決めているから、レオナが御手洗に惚れることはもう予習済み。
それにしてもこの最後の台詞はラブコメー!!
やっぱり告白したつもりなんだな。うん。
御手洗もそれをわかってるんだな。
くっつかないことはわかってもレオナを応援したくなる。
内面も魅力的な女の子だ。
そして犯人のこと。
あ、その前にトリックのことかな。
大がかりなトリックを仕掛けて、島田先生らしくて実にいいですね。
そんなめんどくさい殺し方しないで、刺すなりなんなりしろよと思う人もいるかもしれないけれど、八千代さんは高齢女性、30代の男を殺すのにはこれぐらいしないとならなかったということで。
さらにターゲットは三人いるんだから、三人を始末するまで捕まるわけにはいかない。
私は理解します。
ただ思う通りにはいかなくて、屋根の上に跨った死体と楠に顔を突っ込んだ死体が出来上がってしまった。
これが例の地下の絵と全く同じだったこと、これって結局楠の呪いなんじゃないかな…
御手洗でも論理的な説明ができない。
これは呪い、というか人智を超えた力が働いたっていっても信じるよ。
ミステリーでは許されない超常現象の類もこの作品の中では起きても許される気がする。
石岡君が言ってた最後に残った謎、レオナが楠のそばでおかしくなったこと、あれだって結局わからないもの。
犯人の八千代さん。
本当に悲しい人。
御手洗シリーズ長編の犯人は本当の悪人は全然出てこないな。
でもレオナ、私の生涯はいったい何だったのでしょう。自分が産み落としたものすべてを消し去ってからでなくては死ねないような人生とは、いったい何なのでしょう。
ここが悲しくてね…
自分が楠にとらわれた人生だと思ってしまうのも仕方ないよね。
最後に。
屋敷の屋根や楠、銭湯の煙突に上る御手洗を心配して肝を冷やす石岡君はかわいかったね笑
でも彼の寿命が縮みそうだから、御手洗にはあんまり変なことはしないでいただきたい。