GWは思いっきり引きこもっておりました、りすこです!

さて、先日御手洗潔シリーズの『斜め屋敷の犯罪』を読み終えた後のこと。

次も御手洗の長編が読みたいなぁと思い、一応シリーズをすべて把握しておこうと熱心な読者の方がまとめられたブログを読んでいたら…


「必ず作品が発表された順番通りに読んでください。」と物々しいお言葉が…

どきん!としました。

順番を破りがちりすこなのです。

しかもその少し前に、よく行く図書館にたまたまあった『毒を売る女』の御手洗シリーズの短編だけ読んでしまっていたから…

綾辻行人の館シリーズのみならず、御手洗シリーズも順番を破ってはいけなかったのです…



そんなわけで短編集をすっ飛ばして長編だけ読み漁ろうとしていた私は心を入れ替えました!

占星術→斜め屋敷と来たら、次は『御手洗潔の挨拶』です!

図書館にも本屋にも置いてないのでAmazonで買いましたよ!

ちなみに次の『異邦の騎士』も一緒に買ったよ。




『御手洗潔の挨拶』…ここには御手洗の魅力がぎっしりと詰まっていて、もう眩しいくらいです。

私はさらに御手洗沼に堕ちました。

落ちるじゃない、堕ちる。


四つの短編が入っているので、一つずつ感想を書いていきます。



まずは〈数字錠〉。

これは泣きましたよ…

ここに詰まっていたのは御手洗の優しさですね。

優しさといっても、誰にでも親切に振る舞うとかそんな表面的なものではない。

御手洗の善性、心根が綺麗なところをたっぷり見せられて…余計好きになるしかないじゃないか!


事件のトリックとしてはそんなに難しくもないんじゃないかな。

トラックが青梅街道の渋滞で進まない間、荷台に乗ってる人物が降りて地下鉄に乗って…って手段はなんとなく想像がつく。

その荷台に乗ってた人物が御手洗にとっては問題だったわけで…


宮田少年は不幸な生い立ちながらも、懸命に生きようとしていたね。

なんだかこの辺りの件で私は泣けてきたよ。

社長のパワハラっぷりが本当に腹が立ちました。

今ならこんな輩はハラスメントの処分対象にでもなってるだろうに、この時代では当たり前だったんだろうな…


クリスマスディナーの場面、石岡君の狼狽ぶりがおかしくて笑ってしまった。

メニューがわからず「僕もそれでいい!」を連呼するかわいそうな石岡君…w


御手洗は罪悪感でいっぱいだったんでしょう。

かわいそうに、名探偵なばかりにそんな役目を背負うことになってしまって。

だけど、宮田少年の心の一部分は御手洗の手で救われたはずだと思うよ。

きっと大人になっても忘れないんじゃないかな…

いつか御手洗と宮田少年(と石岡君)でまたコーヒーを飲んでほしいものです。


吹田靖子さんは本当にお気の毒に。

御手洗はあらゆる女性にモテモテってわけじゃないだろうに、彼の魅力にやられてしまったんだろう…

わかる、わかるよ…

御手洗は宮田少年に会うために寮に通っていたわけだから、とてもとても優しく見えたんだろうね。


御手洗潔という男は、見ようによってはあれでなかなかいい男なのかもしれない。私には少々個性が強すぎてハンサムとは到底思えないが、背が高いのは確かである。


この短編の中の石岡君による御手洗評だけど…

背が高い!

めっさ頭が良い!

それだけでりすこにはストライクど真ん中なんですけどーーー!!


しかし御手洗の顔の想像がつかない。



二番目は〈疾走する死者〉。

つくづく思うけど、島田先生は本当にストーリーを作るのが上手い。

文章が上手い。

巧みに世界を作り上げる。


この短編では音楽家としての御手洗を見せてくれて、これがもうとにかくかっこいい!

かっこよすぎかよ!!

どこまで属性てんこ盛りにする気ですか!!

ミステリーを楽しむ&御手洗の魅力を堪能する。

これが御手洗シリーズですか。


この短編の語り手の御手洗の第一印象は、


この男が、僕は最初からいやに気になっていた。もじゃもじゃの髪をして、やはり彫りの深い顔だちをしている。いい男には違いないのだが、妙にひと癖あるような、人を見下したような表情をする男で、僕は好きになれなかった。


とのこと。


いい男ですか!?

やはり!!

なんか正しい第一印象ですねw

そしてもじゃもじゃの髪か…

天パなのですね!


そして御手洗がギターを弾く場面!

語り手のタックの興奮が伝わってきて、御手洗の超絶技巧が目に浮かぶよう…

タックはとにかく御手洗を褒めちぎるというか、大絶賛なのですね。

私、この場面読んでる時には実際に「第七銀河の彼方に」と「エアジン」を聴いてみました。

ばりばりにかっこいい曲で、このギターをかき鳴らす御手洗を想像して悶絶しました。

御手洗の魅力に窒息します。


この事件はなかなか面白かった。

停電中の部屋から走り去った人物がどうやっても不可能な距離を移動して、電車に轢かれた死体になって見つかったとのこと。

しかも首には絞められた痕が…

短編だけど読者への挑戦も挟まっててわくわくしました。

一生懸命考えて、おかしな動きをしてる菜村がやっぱり怪しいだろうと結論を出したけど…

トリックがわからないとだめですよね。

数学のテストで途中の計算式がないみたいなものですよね。


なるほど、菜村にとっても想定外の出来事だったんですね。

あのセールスマンなかなか頭が良い。

パニックになりながらよく頭を働かせたと思う。

しかし残念ながら、ここには御手洗がいるんですね!


御手洗の腕時計論は本当に彼らしかった。

そして諌める石岡君w

私は腕時計好きですけどねー。

そんなに言うなら、御手洗はスマートウォッチなら付けるんだろうか。



三番目は〈紫電改研究保存会〉。

今度は一転戦時中に飛んでいた飛行機の話…

かと思えばそうでもないという。

紫電改ね。

私はたまに愛媛に行くので、引き揚げられた紫電改がどこかにあるってことは知ってたのですけど…

作中にある引き揚げ作業を取材していたセスナの墜落事故は事実なんですね。

思わず調べて、事故調査報告書まで読んでしまったよ…

確かに操縦ミスによる墜落と結論付けられていたけど、そもそものミスの原因は何だったのかな。

真昼の晴れた日の海上、空間識失調とも思えないし…

話が逸れた。


しかし語り手は間抜けですね!

どれだけ馬鹿なのかと!

本人がとってもへこんでいるからこれ以上は言わないけども。

いや、やっぱり言わせて。

爪にそんな数字書いてる男は間抜けに決まってる。

馬鹿だなぁ。

語り手に大ショックを与えていることに気付いているのかいないのか、御手洗は嬉々として楽しそうですw

そして図らずも自分の渡した名刺によって語り手が笑い、笑ったことで救われる。

この語り手は馬鹿だけど、気持ちのいい人だと思ったよ。

すっとする結末でした。



そして最後に〈ギリシャの犬〉。

御手洗が女性を嫌うのは犬が好きだからじゃないかと思ったり。

犬は素直。

裏表がなく、頭がよく、飼い主に忠実。

女性とは真逆だと御手洗が考えていそうな気がする。(本当にそうなら今の時代いろいろ引っかかりますよ)

まあ、しかし御手洗は勉強ができる上に博識ですね。

何でもよく知っていて素敵です。

御手洗が実在したとしても、私みたいなつまらない人間は蹴散らされると思うけどさ。

それにしても石岡君のことはどう思ってるんだろうね?

まさか気の合う友人だと思ってるのか?


今回は誘拐事件。

御手洗は凡人どもの数手先を読んで行動しているから、凡人にはちんぷんかんぷん。

今回はお馴染み竹越刑事の後輩の吉川に、またもやクルクルパーだと思われてしまうw


「先輩は知り合いのようですが、何の先生だってんです?まあこう言っちゃなんですが、はっきりいってあの人は、頭がおかしいと思いますな、私は」


ひどいよw

御手洗は完全に天才だからな。

その思考の過程はたぶんいろいろとぶっ飛んでるんでしょう。

彼も彼でまったくついてこられない凡人に苛ついてる節もあるし…まあどうしたもんですかね。

石岡君も本当にド凡人だからなぁ。


一方、御手洗の言うことならどんな突拍子もないことでも信じる青葉。

盲目的な信頼には潔さすらあります。

そりゃね、彼の活躍を知ってたらこうなります。

私だってノミやバールを持って船に乗ります。


御手洗の見せ場は相変わらずかっこよかったです。

そして今回はグリースもですね!

さぞかし絵にあるコンビだったろうな…と想像します。


どうやら自由に動くようになったわれわれの船が、マリーナの船着場に近づいていくと、すでに御手洗の端正な長身が、浮いたプラットフォームに立ってわれわれを待っていた。


シルエットだけでかっこいいよ、御手洗!

石岡君もさ…こういう描写をするから女の子が御手洗にきゃあきゃあ言うのよ。

ただ長身ってだけ言っておけばいいのに、端正をつけちゃうとまるでモデルじゃないですか!

ところで長身長身とは言いますが、どのぐらいなんでしょうね?

180ぐらい?


最後には御手洗の思うままに動くしかなくなる警官が好きw

御手洗の言うことが正しいとわかっていても、彼に反発する警官もいるだろうな。

竹越さんはいい人だよ…


犯人との交渉中はどうもむかつく男だなと思っていた青葉も、御手洗と石岡君に対しては本当に真摯に二人に感謝していることがわかるね。

そして〈数字錠〉以降は御手洗も石岡君もずっとコーヒーを飲まないの…

もしかしたら斜め屋敷のの時も飲んでなかったのかな。

あの暗号が橋の絵だったというのもはっとしましたね。

なるほど、そもそも暗号ではなかったのか。


読み終えてしばらくして、プロローグに出てきた赤毛の不気味な生き物は横関の外国人共犯者だとやっと気づいた…

どこまで鈍いんだ、私も…



短編の感想は以上!

すっかり長くなってしまった。

あとがきで島田先生が御手洗潔の実写化について触れてるんだけど…まあこの探偵は実写にしちゃいけないでしょう。

小説の中でこんなに生き生きとしてかっこいいんです。

それで十分なんです。

とは言え、何年か前に実写化されたみたいだけどね…


有栖川先生の江神二郎のように御手洗潔も誰が演じたって私はいちゃもんつけますよ。

二人のかっこよさを映像化するなんてとてもとても…

それぞれ読者の心の中に住んでますってことにしときませんか?


ミステリー小説の中の私の好きな二大探偵はこのお二人だけど、どちらも長身でいい男ってことでいいですか?

江神さんもかっこいいんですよね、もう!

だけど性格がびっくりするほど違う。

びっくりです。