読み終えてすぐ書いております。
いやー面白かったー!!
最近ですね、古今東西あらゆるクローズドサークルものが読みたいと思い、中でも日本のここ数年のうちに発表されたミステリーを読んだりもしたんだけど…どうも肌に合わず。
私は1980年代に発表された新本格と呼ばれる作品たちが大好きなようだ。
あ、本作はクローズドサークルものじゃないですけどね。
読む前はクローズドサークルだとばかり思ってたら違った。
島田荘司の作品、もちろん『占星術殺人事件』も読んでます。
あれはね…私は金田一少年を愛読してたから、異人館村殺人事件がメイントリックを丸パクリしていることも知っていて、島田先生にとても迷惑をかけたことも知っていて…
できれば前情報無しで読みたかった。
とても私には考えつかない、あっと驚く鮮やかなトリックです。
この鮮やかさは本作でも健在。
浜本幸三郎氏がなんだか怪しい動きをしているのはわかってたさ!
菊岡の殺された夜に刑事を自室に誘って酒を飲むなんて、いかにもアリバイ工作の匂いがしたし。
その前に菊岡の部屋を訪ねたのもくさかった。
だけど塔の部屋にいながら地下で寝ている菊岡を殺すなんて、そんなのは絶対不可能に決まってる!と思ってましたよ…
幸三郎ともう一人共犯者がいるのでは?とか疑ってたぐらいで。
まさか長い滑り台として利用したなんて!
そのために屋敷を傾けていたなんて!
これは頭の固い私には想像もできない。
このはっと驚かされる瞬間が好きだ…
何度も屋敷の図を見ながら読んでいたのに、全然わからなかったよ…
糸をなんやかんやして密室を作りだすトリックじゃなくてほっとした。
そんなの白けちゃうから。
半分以上読み進めてから登場する御手洗。
もう彼が出てきてから、笑いながら読んじゃったよ。
尾崎の御手洗へのディスりがいいw
「いったい何ですかありゃあ!?だいたいどういう理由でわれわれのようなちゃんとした警察官が、あんなクルクルパーのお守りをせにゃならんのですか!」
クルクルパーw
毒舌の切れ味がいいw
「私はあんな正真正銘の、どこからひっくり返してみてもバカ者というやつを生まれてはじめて見ましたよ。あんなのを野放しにしておいたら、捜査も何もあったもんじゃない。めちゃめちゃにされてしまいますよ!」
私も正直びっくりしたw
占星術の時はこんなぶっ飛んだキャラしてたっけ?
あれは過去の事件を石岡君に聞いて推理するって感じだから、事件関係者と絡むこともなかったしな。
御手洗がやっぱり好きだ。
いいキャラの探偵だ。
空気を読まず傍若無人に振る舞うくせに、頭はものすごく切れて、ずばりと推理を犯人に突きつける。
犯人との知的な対決を楽しんでいる節もあったりして。
対して、石岡君は私のように平凡だ。
御手洗のお世話というかお目付け役は大変だけどこれからも頑張ってほしい…
でも彼といると退屈しないでしょう。
図書室で口論?する英子とクミの件も本当に笑えた。
石岡君の繊細な綱渡りのような努力をひっくり返す御手洗が好きw
ホームズとワトソンだねぇ。
ところで御手洗潔って聞くと、幽白の御手洗の顔が頭に浮かんできちゃうんだよ。
調べてみたら幽白の御手洗も下の名前は清志なんだね。
あの天パだかパーマだか髪がくりくりの御手洗…
冨樫先生、この御手洗から名付けたのかな。
日下が死んでなくてよかった!
私も随分考えましたよ!!
換気口という孔が空いてた菊岡殺しはともかく、完全に全くの密室の日下殺し…これは一体どういうことなんだ!?と。
理屈であり得ない密室殺人はやっぱりあり得ない、この一言につきますね。
非常に納得しました。
日下もいいキャラしてたね。
御手洗が芝居を打つことを頼んだのも納得。
頭がいい人が好き。
そして犯人も魅力的だったな。
上田を殺した動機も私にはそこまで苦しくもなく納得できるものだし、菊岡殺しについても幸三郎は誠実でいようと思ったわけだから。
古い友人の野間に報いたかったんだよね。
ましてや、今の恵まれた自分の礎を作ってくれたのは野間のおかげでもあったわけだし。
平本を殺したのは野間だったのね。
幸三郎は決して悪人ではない。
御手洗や日下と知的な会話(ゴーレムやワーグナーについて)を交わす場面は本当に生き生きとしていて、楽しかったんでしょうね。
本筋には関係ないあの会話シーンもけっこう好きです。
花壇の模様の謎、塔の表面に貼られた鏡に映るものってことはわかった!
でもはっきりと何かってことまではわからなかった…
きっと日下はそのうち解いたと思うさ。
小さな謎から大きな謎までいっぱい散りばめられていて、本当に楽しい作品でした。
読者への挑戦にわくわくした。
挑まれてから、また最初から読み直したものの案の定何もわからなかったのでw
いいね、読者への挑戦って。
いい響きだ。
次はまた御手洗の登場作品が読みたいな。
できれば長編がいい。