いろいろ書きたいことはあるんだけど、腰を据えて書く時間がないりすこです。

もうすぐ始まるプロ野球のことやウィッチウォッチのことも書きたいのにー!


とりあえずこれだけは、という気持ちで読み終わった本の感想を。

綾辻行人の『水車館の殺人』です。

私はミステリー小説が大好き。

その中でも本格ミステリー、できればクローズドサークルの中で起こる連続殺人、これがいっっっちばん好きです。



最初に読んだのはもちろん十角館。

もうびっくり。度肝を抜かれた記憶。

館シリーズが存在することは知ってたんだけど、有栖川有栖方面にはまったこともあり次を読む機会がなかなかなかった。

というか、最初は館シリーズ全部読んでやるって気持ちがなかったのかな。

いつか読めればいいなーぐらいで。

だから読む順番なんて全然考えていなくて、次に手に取ったのが迷路館。

その後に読んだのが時計館。

そしてこの度読み終わったのが水車館。

やっと2作目を読みました。

うん、これからは順番通りに読む…



世間の評判はどうか知らないけど、私はこの水車館が好きです。

だから感想を残しておこうと思っているぐらいです。

迷路館は読みながら道に迷ったしw時計館は怖すぎた…

あの怖さはホラー的ですよね。推理で太刀打ちできそうにもない。

その点、水車館は館の造りもいたってシンプルだし、何よりロジックで謎が解けるから好きだ。

館シリーズで初めて謎解きをしようと真剣に考えたりすこですよ。

以下ネタバレあります。








読み終わってまず最初に思ったことは「綾辻先生はなんてフェアなんだろう…」です。

正木が怪しいってことは読者みんながわかること。

今なら黒焦げ死体でもDNA鑑定ぐらいできると思うけど、当時の技術じゃ無理だったでしょうね。

そこにこれ見よがしに自分の特徴である薬指だけ切り取って置いておく。

死体からも薬指を切り取っておく。

そりゃもちろん死んだのは古川で、消えたのは正木だと、大多数の読者はわかったんじゃないかな。

それに古川と正木、二人の体型が近いこともちゃんと描写されていたしね。



しかしぽんこつな私。

じゃあ正木はどこに消えたのかというと、逃げたんじゃね?ぐらいにしか思っていなかった。

まじのまじでぽんこつ。


正木が怪しいというか、加害者側として事件に絡んでるのは間違いないから何か確証が欲しいと思い、インターローグまで読み終えた後また冒頭から読み始めたんですよね。

まあ、ぽんこつ。

ヒントはいくらでもあったのにすべて見逃して、またインターローグに辿り着く始末。



まさか正木が藤沼紀一も殺して、館の主人に成り変わってるとは!

全然想像もしてなかった!

紀一は語り手だし、車椅子に乗っているし、まさか倉本があんなに鈍いなんて知らないし!


それでもね、ぽんこつの言い訳をすべて吹き飛ばしてしまうほど綾辻先生はヒントを書き込んでくれていたわけです。

今読み返すと、すべて見逃した自分が恥ずかしくなる…

先生はとてもフェアでいらっしゃる。



この作品は過去(一年前の事件当日)と現在のパートが交互に差し込まれている形になっていて、過去パートは第三者視点から語られていて、現在パートは〈私〉が語っている。

この〈私〉が紀一と見せかけて正木だったんです。


正木の語りに何一つ嘘はなかった。


彼が怯えていた「消えた男」は古川ではなく、書斎から消えた紀一のこと。

仮面で隠す呪われた素顔というのは、火傷で爛れた顔ではなくて、強盗を犯しての逃亡者、さらに一年前に三人もの人間を殺した殺人者であること。


過去パートの終盤、事件翌日の早朝、由里絵の塔の部屋を訪れようと紀一が自室を出るシーンでは

、この紀一は実は正木に入れ替わっている。

紀一の部屋から出てきたこの人物をこの章からはずっと彼と呼んでいる。

今まで紀一と呼ぶ頻度の方がずっと高かったのに!

この後塔の部屋に行った時の由里絵の反応もおかしかったよなぁ。


…何か不思議なものでも見るような目で、近づいてくる白い仮面を見つめた。


正木が紀一になりすますことを知っていたなら頷ける。


由里絵は序盤の現在パートでも引っかかる反応をしていた。

〈私〉が死んだ正木を悼むために花でも用意しようかと言った時、


「そんなこと、云わないでください」

「そんな……悲しいこと」


と言うんですね。

正木が死んだのは悲しいだろうが、花を生けることが悲しいって???

とずっと引っかかっていた。

正木は生きているのに存在を消し去った、それに対して生ける花は悲しいよね。



正木が事故の影響で色盲か色弱になってしまったことは読めていました。

外見上、絵を描くことに障害がなさそうなのに描けなくなった、これは目がおかしくなったんだろうなって…

そう、リラ荘の行武くんのように。

行武くんがそうだったから、ぴんと来て正木は色がわかんなくなってるんだなと読めてたのに…


色弱であることが大きなヒントになっていたんですね。

島田の赤い車を緑の葉の隙間からでは見にくいと言ったこと。

赤い絨毯が灰色に見えたこと。

さらにその絨毯の上の緑の便箋に気が付かなかったこと。

他にもたくさん。


この色の見え方については、過去パートからちゃんと示唆されてるわけだから…

隠すこともなく、フェアに描写してくださっていた。

まったく私はぽんこつだぜ!



三田村はなんとなく殺されそうだなって最初から思ってた。

なんでって…イケメンだからw

殺されるなら彼だろうなぁと。

三田村のダイイングメッセージは左手の指輪を右手で握っていたこと。

あれで私もやっぱり正木だ!と思えたわけだから、島田にも正しく伝わっていたでしょう。

島田は三田村から正木の後遺症のことを聞いていたわけだし、薬指を立てる癖といい、正木が紀一になりすましてるんじゃないかと気付くよね。

島田はぽんこつじゃないからさ。



でもね、ぽんこつでありたい気持ちもあるんだ。

やっぱり驚かされたいし、騙されたい!

自分であれこれ考えるのも楽しいけど、答え合わせでびっくりしたい。



どうでもいいんだけど、正木に由里絵を責める資格なんて全然ないよな…

自分は殺人鬼のくせに由里絵の不貞を責められるか?

てかあなたのものじゃないからね?

そもそも自分が先に寝取ったんでしょうが。

いいように彼女を利用して、三田村と何をしようとしていたなんて…どの口が言えるのかと。


由里絵は不貞の意味もわかってるのか怪しい。

誰かに愛情を向けられたり、綺麗だと褒められれば素直に嬉しいと思う、それだけだったんじゃないかな。

相手の男の下心なんて知らないよね…


紀一が彼女を学校にも通わせずに館に閉じ込めていたのは虐待でしょ…

なんか可哀想になっちゃったな。

由里絵はキャラクターとしては全然好きじゃないけど気の毒な女の子ではある。

由里絵のしたことは犯人隠避にはなりそうだけど責任能力はなさそう。

いや。そんなリアルなことはいいや。



ラストシーンの後を少し想像してしまった。

地下の隠し部屋の正木はあのまま捕まったんでしょう。

幻影群像を長年見たいと願い続けていた大石と森はあの絵を見て、それなりに衝撃を受けたんでしょう。

正木ほどじゃないだろうけど。

倉本は自分の阿呆っぷりに唖然としたに違いない。

館はどうなるのかな。

一応は絵も含めて由里絵に相続されることになるのかな。

由里絵はこのまま住むことはないでしょう。

だけど彼女は今のままじゃ外の世界で生きてはいけないので…誰かに面倒を見てもらえたらいいけど。



最後に。

本格ミステリーに登場する探偵次第でその作品を好きになるかどうかは決まってくると思うんだ。

私は島田潔が好きです。


気難しそうな見た目だけど、人懐こくて飄々としていて、嫌味を言われても気を悪くした様子もない。

ただ謎に真摯に向き合う。


ほとんどの探偵は魅力的です。

島田潔の名付けの元になった御手洗潔も好きです。

まあ占星術殺人事件しか読んだことないけども。

あ、でも今ちょうど斜め屋敷の犯罪を読んでるから!



有栖川有栖の江神さんは最大の推しだし!

火村も嫌いじゃないさ。


古い話ばかりであれなんだけど、高木彬光の墨野隴人が好きですよ。

これも一作『一、二、三、死』しか読めてないんだけども…なかなかお目にかかる機会ないからね。

何作かシリーズであるみたいなんだけど図書館にも置いてない。

墨野はあの助手の女の子?との関係もまた良いんだよなぁ。


アンソニー・ホロヴィッツの『カササギ殺人事件』のスーザンは探偵なのか?

彼女より作中作のピュントが好きだ。


逆に同じくホロヴィッツのホーソーンは嫌い。

2作目まで読んだけど次からはやめとこうと思う。



次は人形館ですね!

間違いないようにせねば。

霧越邸も読みたいな。