ダイヤのA以外のことをブログに書くのは久しぶりだ…!

いつから読み始めていたのか、たぶん半年以上かかってるだろうな。



母が面白そうな本のタイトルをメモしていて、その中からあらすじをチェックして選んだオクトーバー・リスト。

最初、母のメモしていた字があまりにも汚くて『オクトパス・リスト』に見えたのはいい思い出😂

タコのリスト??🐙

検索しても出てこないから調べるのにちょっと苦労したよねw


以下たぶんネタバレあり!





とても面白かったです!

時間が逆行している小説と明かされているのにちゃんと面白いのかよ…と疑ってました。

しかもただの誘拐事件ではないことはあらすじにまで書かれていて明白なのに。

でもちゃんと面白いです。


これはどうやって書いたのかな?

1章から書いてそれをそのまま逆さまにするだけじゃ成り立たない気がするぞ。

解説にもあった通り、対象物の一部をファインダーからズームで覗くように始まり、視点が徐々に引いていき、最後にすべてが見えるという構造。

この徐々にわかっていくというところ、書くのがややこしいだろうな。

矛盾のないように後から後からわかるように書く。

小出しにする情報、何をどこで出すか考える。

この難しさを思うと拍手したくなりますね。



最初(36章)はいきなり緊迫の場面から始まる。

あの場面にいきなり読者を放り込むという勇気!

交渉がうまくいかなかったことに不安になるしサラを心配してしまう。

ガブリエラは娘を誘拐され、無茶な要求を吹っかけられ、おまけになんだか怪我もしている、最序盤ではただの被害者に見える。


登場人物の内面もちゃんと描いてくれるので、読み進めるとサラの実体が見えないことに気がつく。

ガブリエラの台詞の中にサラは出てくるし、写真もある。

でも彼女の心の中にはいない。

モノローグからはサラへの愛情が伝わらない。

普通、娘との思い出とか何をした時にかわいかったとか、思い出しそうじゃない?

それどころかサラの名前を呪文のように唱える。自分を事件に集中させるために、もう何度も何度も唱える。


サラよりも〈教授〉との回想、隣にいるダニエルへの欲求みたいなものしか見えなくて、なんか冷たいな…と思っていたんですよ。

でもガブリエラの外面が、娘を心配する母親そのものなのです。

読者にサラの存在を疑わせる、その書き方が上手いですね。

やっぱり情報の出し方がすごいな。


逆にダニエルのことは疑ってなかったのよ…

親切心や同情、あるいはガブリエラの愛情から彼女の側にいてくれると思っていたのに。

それが4章で吹っ飛ぶ。

え?みんな気付いてた?

ダニエル怪しいって思わせるところあった?

気付かないぽんこつな私。

ダニエルが悪人ということになると??

少し考えてもよかったけど、続きが気になってここからはノンストップで読みました。


衝撃のラスト2章ということだったので、この2章は心して読みました。

ガブリエラが警察官だとわかってびっくりした。

え、気付いた人いた?

私は騙しやすい読者だね、たぶん。

だってケプラーとスラニはあんなに嫌な刑事だったのに!特にケプラー!

ガブリエラの邪魔ばかりしていたのに!

仲間だったなんて思わないし!


だけどガブリエラはニューヨーク市警すら欺いていることが最終章(1章)でわかる。

あくまでも都合がいいから、警察官の立場でいるということ。

ダニエル、アンドルー、サムを殺すために綿密な計画を立てていたなんて…!

最後の最後になってガブリエラに戦慄しました。

ものすごく頭が良いし、とんでもない演技力、度胸、勇気、臨機応変に対応できる能力、女としての魅力、もちろんコミュ力…

なんて人でしょう!


1章まで読み終わってから、今度は1章から36章へ読んでみました。

そうすると登場人物の印象がまるで違うことに気がつく。

まあ、ウォルシュはあんまり変わらなかったかな。

彼にはちょっぴり同情します。

とんでもない女に惚れてしまったな…

パルプ・フィクションは私も大好きな映画だよ。

ガブリエラは本当に容赦がない。

依頼された三人の悪人を始末するついでにウォルシュも殺してしまう。(手を下したのはジョゼフだけど)

本当についでって感じですよね。

効率的に舞台に組み込み、ストーリーの一環として始末する。

殺すために巻き込まれたのはディクソンも同じ。


印象が一番変わったのはジョゼフ。

ガブリエラにも気味の悪い大男と描写されてるし、彼女やダニエル言動がまさにキ○ガイじみたシリアルキラーそのもの。

CSIだとレギュラーメンバーの誰かを付け狙いそうなタイプ。

ジョゼフ目線の章では少し印象が違うし…ねこちゃんを飼ってると書かれていてびっくりした。

ねこちゃんだと!?

それが1章で本当に印象がガラリと変わる。

彼も頭の良い人。

ガブリエラ、ジョゼフ、カルパンコフで作戦をよりもっともらしく構築していく様子に感心してしまう。

やっぱり頭の回転が早くないとアイディアも出ないよね。

教養もあるみたい。

粗野で暴力的だと思っていたのに、知的で女であるガブリエラに食ってかかることも挑発することもない。

怯えもしない、浮つきもしないからガブリエラにも好感を持たれてる。

それにしてもジョゼフの演技力も素晴らしい。

ガブリエラと演技論の話をしちゃって、この二人は俳優さんか何か??

私もちょっとジョゼフのことが好きになっちゃったよ。



ガブリエラはヘンリーの娘、キャロルがダニエルに酷い目に遭わされたと聞いても、単なる事実として受け止められる。

これは後天的にはどうしようもないからやっぱり才能の一つかな…

私はHSPの気があるので、どうしたってこんな風には受け止められない。

同じようにダニエルたちだけでなく、自分自身を騙せる才能。

これもすごい。

いまいち腑に落ちなかったのが、ダニエルと一緒にいる時の彼女の内面描写。

何度かダニエルに惹かれているような、欲求を持っているような描写があって、読み直した時も殺そうとしてる相手なのにって違和感を感じてたけど、これは自分を騙してる最中だったせいなのかもね。

ガブリエラ・マッケンジーとしてはダニエルに惹かれていたのかもしれない。

役を離れればそんな感情も簡単に捨てられる。

そう考えるとやっと腑に落ちました。

もう彼女のことは本当に難しい!

結局何を考えていたのか全然わかっていない気もするし、役に没入していたなら描写されている以上のことは考えていないのかもしれないし。

そんなわけで私も完全にガブリエラの掌の上です。



面白かったので、誰か映画にしてほしいな。

絶対観るからさ!

作中、映画のタイトルがちょこちょこ出てきたので映画になるならどんな構成だろうと思わず想像しちゃった。