未解決事件や不思議な事件は好きですか?
私は大好きです!!

というわけで、とても楽しみにしていた『ディアトロフ峠事件』を全話見ました。



ディアトロフ峠事件といえば、私のような不思議な事件オタク、あるいはUFO好きのみなさん、UMA好きの人々、果ては陰謀論者まで興味津々な遭難事件。
世界で一番有名な遭難事件。
超がつくほど有名ですね。


これ、今この記事を書く前に読んでおこうと思って開いたんだけど…
オカルトマニア?
私、オカルトマニアだったのか?


書かれてる通り、2019年にロシア当局が再調査を始めて、2020年には原因は雪崩だったと結論付けたわけですが…
雪崩だけでは説明のつかない点がいくつかあり、このドラマではどうやって落とし所をつけるのかに興味がありました。
そもそも生存者ゼロのこの事件をどんな風に描くのか、本当に興味津々。

ちょっと雪崩説では説明できない謎について書いときます。

・チボーの頭部に大きな外傷があったこと

・リュダとサーシャの肋骨が折れているにも関わらず、外傷がほとんどなかったこと

・リュダの舌が失われていたこと(おそらく生きたまま)

・サーシャの眼球が失われていたこと

・数名の服から高濃度の放射線が検出されたこと

・イーゴリとルステムに格闘した際に見られる損傷があったこと

あと雪崩云々関係なく、

・山岳ガイドとして参加していたサーシャは何者だったのか


ドラマは全8話で、奇数回はKGBのオレグ・コスチンによる事件の捜査の過程、偶数回ではこのパーティーがどのようにして遭難に至るかが描かれています。

このオレグは架空の人物。
1話目では無口でとっつきづらそうな(でもダンディでかっこいい)いかにもKGB所属という男。
カーチャという美人の検視官が出てきて、もしやこの二人の恋愛シーンを見せられる???と若干の不安。
不要な恋愛要素はリアルじゃないから、あまり好きではないんです。

その他にも、第二次世界大戦でドイツに赴き戦ったオレグの体験も少しずつ描写される。

さっさと山に行き捜査してくれないかな…
いちゃいちゃしなくていいからさ…


出発前に離脱したユージーンは確かリウマチ持ちで脚が本当に痛かったはずなのに、「死の山」言い伝えを怖がって取りやめたことになっていました。
うーん…
まさかまじでオカルトオチじゃないだろうな…
と不安になった記憶。


2話目からはやっとディアトロフ隊の描写が始まる。
ジーナの元カレ、ユラが彼女に未練たっぷりなのにジーナはイーゴリに夢中。
(ちょっと待って!ユラとジーナは円満に別れて関係は良好だったはず!)と思ったけど黙って試聴。

まあ、これはドキュメンタリーでも検証番組でもないからね。
ある程度の脚色は仕方ない、うんうん。
しかしこのユラの立場は切ないね。
このドラマを通して見るとジーナを大切に思っていたことは間違いなく、イーゴリもまた大事な仲間だったから。
普通の仲良しサークルではなく、彼らがいるのは登山サークル。
命を預け合うような場面もあるわけです。
そんな仲間を妬んだり恨んだりしたくないよね。切ないです。

モテモテのジーナに対して、誰からも好かれてないと思い悩むリュダ。
恋に悩む女子大生、かわいいです。
ジーナに相談して、
「彼は?」
「ちょっと違うかな…」
「じゃああの人は?」
「…うん、いいかも!」
と会話する二人は本当にかわいいんですよ…



ここからはオレグパートの感想を最後まで書きますね。


オレグは仮説を立てて一つずつ調べていたよ。
まずは謎の山岳ガイド、サーシャ。
サーシャがKGBの人間で密猟を取り締まっていたことがわかる。
その関連で殺され、登山隊はとばっちりを食らった説。


登山隊のルート付近にあった強制収容所から囚人が脱走し、捜索していた看守とトラブルになった登山隊は殺されてしまった説。


マンシ族の聖域を侵したとみなされて殺された説。

そしてオレグ自身も空に輝く謎の光球を目撃。
これが登山隊の死に何らかの関係があるんじゃないか説。

密猟者のアジトを襲撃してみたり、強制収容所も訪れ、マンシ族の一家にも会いに行くオレグ。
その結果いずれも可能性もありえないとわかる。


捜査の合間に戦時下でのオレグの辛い過去が徐々に明らかになるんです。
これがなかなかに辛い描写…
特に「妻と子供が亡くなった」と近所の人から手紙が届いたシーン…
オレグは読んでからさっと立ち上がって、「水を取ってくる」と一言。
その手にはロープ。
オレグは絶望のあまり首を吊ります。

戦友のビーチャと同じく戦線にいた例のガイドのサーシャ(この時に顔を合わせてるのね!)になんとか助けられて、うずくまって泣くオレグには胸が痛みました。


もう一つ、ビーチャの亡くなるシーン。
建物内で敵の偵察中、オレグは脚を撃たれてしまいさらに手榴弾が投げ込まれる。
オレグは家族もいない、怪我をした自分なんか置いていってくれとビーチャに言うのに、彼は爆風からオレグを守って死にます。
ビーチャには身重の奥さんがいたのに…
もうね、オレグの絶望が重くて…


話が進むと、ビーチャの奥さんがカーチャだということが明かされる。

最初こそ、オレグの恋愛パートや戦争体験なんていいから捜査風景を見せてほしいと思っていました。
だけどすべて見終わった今は、オレグの過去を描くことは大切だったとわかります。

彼は登山隊の足跡をただ辿る捜査だけでなく、終盤は自分のことに置き換えて謎を解こうとしていた。
自分ならどうしていたか、全滅だけは避けるような合理的な選択を常に選べていたかと立ち返る。
自分を庇って死んだビーチャとディアトロフ隊を重ねる。
オレグの過去があるからこそ、リアリティが増したんじゃないかな。


ビーチャが亡くなったと知らされた時のカーチャも本当にかわいそうでね…
台詞は正確には覚えてないんだけど、確かこんな感じ。
「手紙をもらってすぐに外に出て、雪の上に横たわったの。とても冷たかった。悲しみもこのまま凍ってしまえばいいと思った」
淡々と話すカーチャ。
隣で聞くオレグ。
オレグは罪悪感でいっぱいだったろうな…


二人のラストシーンは良かったです。
カーチャは夫がオレグの戦友だったとやっとわかり、車でオレグを迎えに行く。
オレグはようやくビーチャの亡くなった経緯を話す。
涙ながらに謝るオレグにもらい泣きしかけたよ。
カーチャは「優しい夫らしい最期だった」と言う。
ていうか、オレグはビーチャの奥さんだと知っていて今回の検視のためにカーチャを呼んだって!
もう本当に何にも表情に出ないオレグ!

戦争ではみんな何かを失っていて、終わってからも人々は傷つきながら生きているんですね。
傷が癒えることはこの先ないのかもしれないけど、二人には幸せに生きていってほしいです。

それにしてもカーチャは美しかった。




さて、今度はディアトロフ隊の回の感想を。

こっちはあんまり重い話はなかったです。
この子達は大学生で、戦時下を戦い抜いたわけではないから。
唯一サーシャだけはバリバリの兵士だった。

だから道中も若者のノリで町に寄った時に映画を観たり、女の子に声かけたり。
マンドリンを弾いてみんなで歌ったり、とっても明るい若者たち。
オレグの物語が救いに向かっていく一方、この子達は隊の全滅という最低最悪な結果に向かっていく対比が辛いです。

日誌が残っていたし写真も何枚かあったから、このドラマでの隊の再現率はなかなかのものだったように見える。
俳優の顔こそ全然似てないんだけど、服装なんかそっくりじゃん。
まあリュダとチボーの帽子、特徴的だもんね。

一応彼らにも見せ場のようなものはある。
一度、リュダがはぐれかけてチボーが助けてくれるところとか…
これで二人は急接近、恋人同士になるんだけど、もうすぐ死んじゃうから…

そのリュダとチボーをイーゴリとユラが探しにいく。
その道中ユラがイーゴリに「ジーナを愛してる!」と気持ちをぶつけるところも…
ユラはドラマの中では割とおとなしめで、トラブルなんかは嫌いそうなタイプなんだけど、その彼がイーゴリに突っかかるのはなんかよかったな…(何が)

ユラにそう言われちゃったイーゴリはジーナに君とは付き合えないと宣言するんですよ…
ユラは友達だから、大事な仲間だからって!
イーゴリ!お前ってやつは!
ジーナとはキスまでしてるくせに!
なんかこう、もどかしい感じが…好き。
実際にイーゴリとジーナはいい感じだったそうですね。

その後、ユラとイーゴリは改めて話し合い、「ジーナを大切にしてくれ」「…ああ」みたいな展開になるんです。
もう結末を考えると空しくなっちゃうんですが。
このイーゴリとジーナはクライマックスにならないと進展しなくてさ…
イーゴリが「君を愛してる。臆病だったからずっと言えなかった」と言ってくれても、もうさ…
みんな死んじゃうんだから…

4話分見るうちにこのパーティーにそれなりに愛着も湧くわけです。
最終話を見るのはしんどかった。
ただ彼らが死んでいくのを見ていなきゃいけないから。

このドラマでは遭難の原因として、雪崩説を取ったようです。
やっぱり普通に考えればそれが自然なんだよね。
現場は雪崩が起きにくい斜面の角度だったとは言われています。
ただあんな風に雪を掘って壁を作ってテントを張っていたなら、斜面が崩れる可能性もあるよね。
チボーの頭部の外傷は固い雪の壁が崩れたことによるものだと考えるのも自然。

テントを潰され逃げた隊が貯蔵穴を目指すも、吹雪によって方向感覚をなくし、道に迷い次々と…
うん、十分考えられる。

雪崩による負傷があったメンバーを川沿いの風が避けられる場所に避難させた。
亡くなったメンバーの服を脱がせて、その時点での生存者が着ていたのも当然といえば当然。
就寝中に雪崩があったから、靴を履く時間もなくて足にニットを巻いていたのもわからなくはない。
イーゴリやジーナはテントに戻ろうとしていたから、川の近くで見つかったメンバーとは離れていた。


だけどやっぱり納得いかない点もあるよね!
リュダとサーシャの謎の外傷は?
格闘の痕は?
服から検出された高濃度の放射線は?

オカルトマニアは細かいのです…
でも謎は謎のままの方が神秘性が保たれるのかな…
不謹慎でごめんなさい。



しかしディアトロフ隊のメンバー、全然覚えられなかったな…w
イーゴリ、ジーナ、ユラ、リュダ、チボー、サーシャはわかるけど他のメンバーよ…すまん。
ロシアの人名は聞き慣れない上に偶数回はモノクロだったせいで、何で区別すりゃいいのかわからず。
うん、難しいね。

最後の最後に出発前の楽しげな隊がカラーで登場して、初めてみんなの髪や目の色がわかった。
(だいたいみんな似たような色をしていたけど)
本当に楽しそうに歌いながら登山の準備をしていて、不思議とちょっぴり救われた気持ちになった。

オレグも言ってたけど、「彼らが何者かに殺されたのではないとわかっただけで十分だ」と私も思うよ。
絶望感や恐怖はあったに違いないけど、誰かに危害を加えられたわけじゃないと思ってる。

私個人としてはやっぱり雪崩はあったんじゃないかなと推測します。
ただもう一つ何かがあったと思う。
放射線のことは置いといても、奇妙な外傷の説明はどうしたってつかない…

作品としては総じてよくできていたと思います。
面白かったよ!