追悼: チャーリー・ワッツさん | 意識デザイン


ふだんは[メルマガ]→[このブログ]→[フェイスブック]
という流れでシェアをすることが多いんだけど、
今回は趣味の話なので、まずはこちらに書くことにします。



ローリング・ストーンズのドラマー
チャーリー・ワッツさんが亡くなりました。

ストーンズといえばミック・ジャガーとキース・リチャーズの
ふたりが表に立つことが多いけれど、
音楽通の人たちのあいだでは
チャーリーのドラムはとても評価が高かったみたいです。

ハイハットをパシャパシャ叩いたり、
派手なドラムソロで見得を切ったりしないので、
地味といえば地味なんだけど、
ちょっとしたタメというのかな、
リズム感が独特なんです。

いまでこそ、ポピュラーミュージックにおいて
グルーヴってとても重要な要素だけれど、
1960年代、70年代のロックであの感じを出している
バンドは他になかったのではないでしょうか。

ヨーロッパ人がブラックミュージックを
消化しばじめた初期の頃の話です。



ストーンズの音楽には、聴く人の内側を掻き立てる
独特の何かがあります。

ストーンズと言えば、しばしば「オルタモントの悲劇」が
引き合いに出されます。
20-50万人がつめかけたといわれる野外ライブで、
ストーンズの演奏中に、ステージに向けて銃を向けた黒人を、
警備にあたっていたヘルズエンジェルスの連中が後ろからナイフで刺し、
袋叩きにして殺してしまったという事件です。

まぁ、この事件そのものを肯定するわけではありませんが、
ストーンズにはそのような「魔」を喚起するところがあり、
それはある部分、宗教や神秘体験、
あるいは恋愛やセック.スの悦びに通じるところでもあるのです。

ある意味でその「独特の何か」を支えているのが
チャーリーのドラムだったのかもしれません。

ブライアン・ジョーンズがその種を植え、キースが仕掛け、増幅し、
そのうえでミックが踊り、歌っていた。。。



ストーンズは、しばしばビートルズと双璧と並び称されるけれど、
ビートルズは基本的に善人の音楽です。

まぁ、ビートルズのなかでもジョン・レノンだけは
闇を知っている人で、だからこそ最期に
マーク・チャップマンを引き寄せて
凶弾に倒れちゃったとも言えるんだけど。。。



でも、人間も、そしてこの宇宙も
狭い「善」の枠組みには収まり切れない。

そこからはみ出す部分を愛でる、というのが
すべての近現代アートの根っこにあるように思います。

たしかに、学校の音楽の教科書に採用されるのは
ビートルズでしょう。

でも、アンディ・ウォーホルやジャン・リュク・ゴダール
といった当時トップクラスのアーティストたちが取りあげたのは、
しばしばビートルズではなくストーンズだったのです。

村上龍さんが小説家として開眼をしたのは
『コインロッカーベイビーズ』がきっかけだったと思うんだけど、
あの作品におけるミック・ジャガーのエピソードは
けっこう大事なスパイスになっていると思いまます。

あと、ぼくが中学生の頃、『小さな恋のメロディ』という映画が流行って、
そのなかで超キュートなヒロイン=トレーシー・ハイドが
墓場にミック・ジャガーのポスターを拡げてキスをするシーンがあって、
ゾクゾクする感覚を憶えたものです。
(オヂサンの遠い目。。。)



そういえば、ぼくがはじめて自分のお小遣いで買ったレコードは
カーペンターズでした。
じつはある雑誌を読んでいたら
スゲーかっこいいヤツラの写真が載っていて、
それがストーンズだったんだけど、
キャプションが間違って「カーペンターズ」
って書かれていたんです。

それを見て、(当時はYouTubeとかなかったので、
事前に確かめる術もなく)レコード店に駆け込んで
カーペンターズのレコードを買っちゃった、
というわけです(汗×涙)

なんで写真じゃあ、あんなに悪そうなヤツラが
こんなヌルい音楽をやっているのか、
しばらくのあいだ混乱をしたものです。
(またもや、オヂサンの……)

まぁ、ホンモノのストーンズには
たぶんその約3ヶ月後に辿り着き、
カーペンターズはその後、数十年を経て
英語のレッスンの際にお世話になったけれど。。。



ぼくは、ストーンズのなかでは圧倒的に
キース・リチャーズが好きなんだけど、
キースは「チャーリーでなければローリング・ストーンズとは呼べない」
と言い、チャーリーもまた「キースの音さえ気にしていれば、
バンド全員の音にまで気を配る必要はない。オレはヤツのギターに従うまでだ」
と語った、あのふたりのラインがストーンズを支えてきたんだな、
とあらためて感慨に浸った次第です。



ちなみに、ぼくはミック・ジャガーのことは魅力的だとは思うけれど、
好きではありません。

マーティン・スコセッシ監督が映画『シャイン・ア・ライト』で
ストーンズのライブを撮影する際、
ミックは最後までオープニングナンバーを教えなかったって、、、
性格悪いと思いません?

でも、そのドキドキ感を映画じたいのオープニングのネタにしちゃう
スコセッシ監督も大したもんだけど^^



ぼくは、ミックとチャーリーのつぎのエピソードが好きです。

あるとき、酔っぱらったミックがチャーリーのところに電話をかけて、
「オレのドラマーはどこだ」って言ったのに対して、
チャーリーはミックのところに乗り込んで、
ミックのことを一発殴ってこう言ったそうです。
「二度とそんな口をきくな。オマエがオレの歌手だ」^^

ピーター・バラカンさんはチャーリーの死去に際して、
「僕らの黄金時代に終止符」と書いていました。

たぶん、ストーンズとともに青春を過ごした人たちよりは、
ぼくの方がちょっと年下で、
ぼくの書く文章を読んでくださるみなさんの多くは、
さらにぼくよりももうちょっと年下だと思うけれど、
やっぱりひとつの時代が終わっていくことを感じています。