まだまだ全然本調子ではありませんが、
何とか、古江事例演習刑訴は読み終えました。
その話はまた後日書くとして、
今日は、「刑法の旧通説の残滓」という話を書きます。
ここで言う旧通説とは、
いわゆる団藤大塚ライン指しますが、
団藤大塚ラインの説は、
現在の司法試験・予備試験における
「受験通説」「スクール説」にも多く溶け込んでいます。
ただ、スクールによって、
その「推奨説」のようなものは微妙に異なってはいるようです。
予備試験や司法試験対策で、
あまり細かな「学説研究」に立ちいるのは得策ではないのは当然ですが、
スクール説自体が、判例や旧通説、有力学説のキメラ状態となっているため、
たまに、その「推奨説」が好ましくないことにより、
受験生が思わぬ不利益を被るケースはあることです。
学説でも判例でもない、
憲法での「効果的で過度でない」なども、広い意味ではその例でしょう。
特に、刑法では、
その「推奨説」が時代とともに変遷を続けてきたこともあり、
私のようなかつての旧司法学説知識ベテでもないかぎり、
論証を見ただけで「元ネタ(誰の学説か)」は容易にわからないものとなっていると思います。
もちろん、
試験に合格するだけなら、
論点の論証など、中身がブラックボックスであろうと、全然構わないんです。
効果的に論パ貼り付けるところは思考停止してでも貼り付けといたら十分なことも多いんですよ。
しかし、その「論パ」が不適切だとしたら・・・
今日は、その例を出します。
これは、H30年度版の辰已趣旨規範ハンドブックの、故意責任の本質についてですが、
「直接的な反規範的人格態度に対する非難」という記述。
これを、「当たり前の事」として、
思考停止で貼り付けてる方は、
少し考えた方が良いかもしれませんね。
辰已演習本では、
そのフレーズは使われていないんです。
そもそも、反規範的人格態度というのが、
行為論で人格的行為論(基本刑法Ⅰなどによると、少数説(団藤大塚説か、そのお弟子さんぐらい))を採ることと関係しているのでして、
社会的行為論の先生は(旧司法の頃の大谷説。今の大谷説は見ていません)
「反規範的意思活動」とされていたりしたものでした。
まあ、その「反規範的人格態度」というフレーズを使うぐらいなら、
まだ危険は少ないでしょうが、
他の「団藤大塚説」など
「旧通説」が残っている部分で、
今試験でそのまま書くと明らかにリスキーと思われる記載が、
H30年度版の趣旨規範ハンドブックには残っていましたね。
(最新版もそうなのでしょうか?)
それが、
このウェーバーの概括的故意の事例。すなわち、
「遅すぎた」の部分の記載です。
![](https://stat.ameba.jp/user_images/20240307/23/hisyou3601/69/1c/j/o1080081015410356580.jpg?caw=800)
現在の実務通説は、
基本刑法Ⅰや講義案、さらには応用刑法Ⅰにも記載されているように、
行為は別であり(全体で1個の行為と評価することはできない)
第1行為からの危険の現実化から、因果関係の錯誤までを論じる流れです。
そして、学説も、
基本的にそれに倣うものだと思われます。
しかし、いわゆる危険の現実化説が登場する前は、
全体として1個の行為説が、
学説ではほぼ定説に近いと言っても良かったんです。
その頃の「定説」「もちろん受験通説」が、
なお残ってしまったのが、
この趣旨規範ハンドブックの記載だと思われるのです。
だから、私もR1,R5の予備論文刑法で、
この「旧通説」で本番でついつい書いてしまったのですが、
反面、一応「旧通説」ではあるんですね。
実際、大塚仁刑法総論を見ると、
それが通説であるかのように書かれています。
(当時は、危険の現実化説が登場する前です)
さて、
親族法で色々改正があったことから、
仕方なく、短パフェ民法②を購入しました。
結局、短パフェは民法①のみR5年度版を引き続き使用し、
他の憲法刑法民法②はR6年度版を使用することになります。
そして、明日3月8日は、
この短パフェ民法②の412問を、
最初から最後まで、
全問解きます。
繰り返しますが、
全問解きます。
民法で412問なら、
予定所要時間は12時間ですかね。
まあ、専業化したのなら、
これぐらいできないとただの甘えでしょう。
当面は、
憲法民法刑法は、短答と一般的学習。
他の科目は、論文過去問検討。
そういうスタンスで進めたいと思います。