第1 ①の行為の適法性
1 本件では、Aを被疑者とし、捜索すべき場所をA方居室とする捜索差押許可状によって、甲の承諾を得ることなく、甲が所持していたキャリーバックを開けて、その中を捜索している。そこで、この行為が令状主義(憲法35条、刑事訴訟法(以下「刑事訴訟法」法名省略)218条等)に反して違法となるのではないか。捜索差押許可状の「場所」の記載の効力が同居人が所持している物品に及ぶのかが問題となる。
2 そもそも、捜索差押における令状主義は、被疑者等の住居権、プライバシー権の不当な侵害を防止するため、裁判官によるその必要性(規則156条参照)を事前に審査することにある。
そして、法は令状の記載として、「差し押さえるべき物」と「場所」とを書き分けているが(219条1項)、その場所で物が所持されているかは偶然の事情であるから、その場所にある物に場所の記載の効力は及ぶ。また、被疑者の住居に対して捜索差押を許可する令状裁判官としては、被疑者の同居者の住居権やプライバシー権も侵害されうることを想定しているので、令状の「場所」の記載により、その場所と同一管理権の下にある被疑者の同居者の所持品にも効力が及ぶものと考える。
3 本件では、甲は被疑者Aの同居の家族である。また、隠匿、隠滅しやすい覚醒剤等を甲がキャリーケースに入れて持ち出そうとしたのではないかとの疑いがあったところ、再三のPの求めにもかかわらず甲がキャリーケースの中身を見せるのを拒否していたのであるから、捜索の必要性が高かった。捜索の態様も、無施錠のキャリーケースを開けたのであり、不相当な事情もない。
4 よって、①の行為は、令状主義に反せず、適法である。
第2 ②の行為の適法性について
1 まず、乙がPらの捜索差押の途中でボストンバッグを所持して同室に帰宅していることから、捜索差押の途中で捜索場所に持ち込まれた物に令状の効力が及ぶかが問題となる。令状裁判官は捜索差押手続の途中でそこにある物が変化することも想定してその場所と同一管理権の下にあるものの捜索等を許可したと考えられるので、及ぶと考える。
2 次に、乙はAと同居する息子であり、同居の家族であるから、A方居室という場所の記載の効力で同室の乙の所持品を捜索することは可能である。
よって、乙が所持していたボストンバッグをPが本件捜索差押許可状により適法に捜索することはできたといえる。
3 もっとも、Pらは、乙を羽交い絞めにするなどしている。
そこで、これが必要な処分(222条1項、111条1項)として適法といえないか。
必要な処分が認められているのは、捜索差押の実効性を高めるため、捜索差押のため必要かつ相当な行為は適法とする趣旨である。そこで、必要性、相当性があれば必要な処分として適法になると考える。
本件では、すでに甲の所持品のキャリーケースから覚醒剤などが発見されていたこと、乙が同室内に入った後もボストンバッグを手放さなかったことや、再三にわたり中を見せるように求めても両脇に抱きかかえてそれを拒否していたことから、乙に対する嫌疑は非常に高まっていたと言え、必要性は高い。そして、その状況下で羽交い絞めにするという行為の態様は非常に強度とはいえない。また、覚醒剤営利目的譲渡の害悪は重大である。よって、相当性も認められる。
4 以上から、②の行為は適法である。
以上(約2ページ半)
追記
酷いですね。
どこからどこまでが何の話なのか書いてる自分でもよくわかりませんし、
①の行為についての規範の部分も曖昧(今思うと不正確なことこの上無し)です。
「書き分けている」とか、今思うと蛇足な記載だらけのように思えます。
最初、「身体」と「場所」の話(物の捜索令状での身体捜索の可否)だと思ってそこから軌道修正したので、
規範が幾分混乱してしまったんですね。
(不甲斐ないです)
今年の予備論文の中ではこの刑訴は平易な部類でしょうから、
低評価は覚悟しないといけませんね。
しかし、時間があまりない中、底力だけで突き進んだ結果であること、
事実誤認もなく辛うじて守れているようには思えるので、
自己評価はやはりEです。
余談。
②の結論については、違法にするのが素直なのかもしれませんが、
嫌疑が超絶に高まっている事情だらけでしたし、
大量シャブ売買という超絶放置できない犯罪ということを思って、
自分は、「羽交い絞め程度しょうがないよな」と思いました。
また、わざわざ、問題文に参照条文まで記載して、刑が重いことを強調してましたし、
これは使えってことだと思ったということです。
(ちょっとしか使えませんでしたが。
でも、完全スルーする人が多くなりそうな気はしてます)
とにかく、
違法薬物は絶対にダメです。
(最後は信念で適法を選択したということです)