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                                                    2022年1月1日
                                                        VOL.433
                     
評 論 の 宝 箱
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                    見方が変われば生き方変わる。
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                    書評、映画・演芸評をお届けします。

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第433号・目次
 【書  評】 庄子情宣  『スマホを捨てたい子供達 ─野生に学ぶ未知の時代の生き方』
                 (山極寿一著 ポプラ新書)
 【私の一言】 廣中崇夫 『人口減少を強みに変えて』




・【書評】
┌─────────────────────────────────┐
◇      『スマホを捨てたい子供達 ─ 野生に学ぶ未知の時代の生き方 』
◇                 
(山極寿一著 ポプラ新書) 
└─────────────────────────────────┘
                                             庄子 情宣


 本書は、霊長類の研究で名高い著者が、「生物としての人間」のつながりの歴史を踏まえ、人間の進化は五感を大切にした「つながり」にあり、今後ともそれを失わないことが人間らしさを発揮するものであり、スマホ時代に対する答えであるという。スマホ時代の警告書である。

 概略は次の通りである。
インターネットやスマホにより、コミュニケーションの方法は大幅に変わりつつある。そこでは

つながる集団の規模は無限に近い。しかし、インターネットによる社会は、生身の人間としてつながる社会でなく、個人は点としてインターネット上の存在であり、責任は全て個人に着せられ連帯はない。このまま進めば社会は自分の欲望だけを信じ他人のことはどうでもいいという個人の共同体になる可能性がある。自分の敵を共同で排除する、自分の利益になるからつながるといった利益中心の共同体ということである。

 また、インターネットは人間を情報化する装置であって、それは自分の好きな情報により作られたフィクションの寄せ合わせである。この世界の経験だけを積み重ねるとリアルな世界とのすりあわせが出来なくなり、思い通りに行かなくなり悩むことになる。従ってインターネットによる情報のやりとりだけでなく、現実の世界と体を使ったリアルなやりとりをして、人間の付き合いということを学び、いろいろな人間関係を作りあげるなかでインターネットを利用
する事が必要である。特に子どもたちは、生まれたときから自分が操作できるスマホの世界があり、リアルでスマホ以外の現実は二の次になってしまう可能性がある。この点は大人が責任を持って注意しておく必要がある。

 なお、本書とは次元が違うが精神学者の大野裕氏は、「私たちは現実的に考えているようで、実際は自分で作り上げた仮想の現実の中に生きている。その仮想の現実と実際の現実の乖離が大きくなることで悩みが生まれてくる。だから悩んでいるときは意識して現実に足を踏み入れ、自分の考えを検証する事が大事」(「こころの健康学」)といわれている。



☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆【私の一言】☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆

                 『人口減少を強みに変えて』
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                                            廣中 崇夫


 人口減少や少子高齢化による経済への悪影響や現役世代の様々な負担増が問題になっている。しかし、ここでは日本の人口減少問題をポジティブに捉えることは出来ないか、また今後起こりうる諸問題とその対策について考えてみた。 

(時代背景のポイント)
1 人口の減少、特に生産年齢人口の減少は生産力の低下、成長の鈍化の懸念がある。
 (日本の人口減少は始まっているが、就業者数は65歳以上及び女性の就業の増加により

  2025年頃がピーク)     
2 年金受給者(65歳以上)は今後漸増するが2040~2045年がピークでその後は漸減に転   
  じ社会保障費も漸減する可能性が大きい。

3 産業革命は生産性を飛躍的に向上させる。
 (1)第一次産業革命 19世紀 イギリス 機械化
 (2)第二次産業革命 20世紀 アメリカ 電力使用による大量生産
 (3)第三次産業革命 20世紀後半 コンピューターによる「自動化」
 (4)第四次産業革命 21世紀 IoT、AIによる機械が自ら考え、自ら動く「自律化」
第一次産業革命以降、各革命が進行するスピードは速くなっており、第四次産業革命は更に飛躍的なスピードで進行するものと考えられる。

(第四次産業革命と日本の状況)
1日本は第四次産業革命を積極推進出来る条件が整っている。
(1)第四次産業革命を推進する技術的・財政的能力は政策的支援も必要であるが日本企業にはある。
(2)人口、特に生産年齢人口の減少による労働力の低下を、第四次産業革命を積極的に推進することにより補完する必要がある。
(3)AIに職を奪われるという社会的抵抗は、近い将来の生産年齢人口の急減により、日本はEUなどと比べ軽減されると思われる。
(4)生産年齢人口の減少は失業者の発生を抑制的にし、社会保障費(失業保険など)の増大の懸念も比較的少なくなると考えられる。
(5)人に代替する汎用型AIロボット導入は人件費のように年々の費用の上昇はなく、しかも償却が出来る。更には言えば社会保障負担も発生しない。
日本は第四次産業革命を積極的に取り組み、生産性の向上を図り、経済成長と人口減少による国の社会保障費の減少を、同時に達成出来る可能性のある数少ない国の一つであると思われる。

(問題とその対応策)
1 生産年齢人口の減少による生産力の低下にはIoT、AIの導入により対応できても人口減少による需要の減退が生じる可能性がある。
(1)人口減少による需要(消費)の減退への対応。
   A.海外需要の取り込み  
     日本には部品、部材分野に依然高い国際競争力を有する企業が多い。
     また安全、高品質で海外でも評価の高い農水産物の輸出推進など外需の積極的    

     な取り込み。
   B.インバウンドの取り込み 
      現状コロナ禍で頓挫しているが、終息後のインバウンド需要の取り込みの再開
(2)貧富の格差拡大とその結果としての総需要減退への対策 
  IOT,AIを開発、利用する側とそうではない側とに富の偏在が今以上に生じる可能性が大  きい。その対策として
   A. 所得税の最高税率引き上げによる税収確保と再分配 (提言1)
   B. 一部企業の法人増税  
     社会保障費を負担する従業員の一人当たり利益額が大きい法人は法人税率を引  

     き上げる。 (提言2)  その理由は
     イ.社会保障費を多く負担する従業員(主に正社員)の多い法人は社会保障制度の 

       維持に貢献しているが、少人化やパート、アルバイトの雇用が多く社会保障負

       担比率の低い法人はその貢献度が低いと言える。 
     ロ.正規社員雇用の推進になる
    C. ベーシックインカムの部分的導入の検討 (提言3)

2 人間とAIとの役割分担の劇的変化への対応
  従来の人間の能力と今後求められる能力とが劇的に変化する可能性大である。
  その対策として
    A.教育制度、方針の抜本的改革 (提言4)
     知識習得型から問題提起、解決型への転換など
    B. IOTやAIに職を奪われた人への再教育支援制度の創設  (提言5)
                                        以上

編集後記
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 明けましておめでとうございます。
今年も皆様方のご支援・ご協力宜しくお願い申し上げます。
昨年も世界中がコロナ、コロナで暮れましたが、今年もオミクロンの感染拡大問題等
先行きは

油断が出来ない状況にあります。このような時期はやはり自己防衛が必須といえます。

 昔から健康保持のコツとして「心身ともに健康で長生きするための知恵」として

「一読十笑百吸千字万歩」が言われております。
 一読とは、一日に一度は少し堅めの文章を読む、
 十笑とは、一日に少なくとも十回は大笑いする、
 百吸とは、一日に少なくとも百回は深呼吸する、
 千字とは、一日に千字くらいは文字を書く、
 万歩とは、一日に一万歩歩く、ということです。
いずれも医学的には健康に役立つと言われております。継続して実行したいものです。

今号もご寄稿などご支援ご協力有難うございました。(H.O)
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第434号予告
【書  評】 三谷 徹 『「AI・兵器・戦争の未来」
             (ルイス・A・デルモンテ著 東洋経済新報社)
【私の一言】 福山忠彦 『百歳の画家 グランマ・モーゼス』

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     ■ 配信元:『評論の宝箱』発行人 岡本弘昭
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