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                                               2021年12月15日
                                                            VOL.432

                       
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第432号・目次
・【書 評】   吉田竜一  『アメリカはいかに日本を占領したか ─マッカサーと日本人』

                  (半藤一利著 PHP文庫)
・【私の一言】 加藤 聡  『もつべきは友、得がたき学友』



・【書評】
┌──────────────────────────────────┐
◇        『アメリカはいかに日本を占領したか ─マッカサーと日本人 』
◇                 (半藤一利著 PHP文庫) 
└──────────────────────────────────┘
                                                吉田 竜一


 憲法問題、国防問題,教育問題、基地問題、人権問…戦後70余年経過した現在の日

本で世論を動かしている諸問題である。これらは戦後の占領軍の政策に深く影響を受け

ているという。従って占領期の歴史的事実について出来るだけ詳細に事実を確認する必

要がある。
特に占領期の諸政策の策定に当り、最重要人物は連合国総司令官であったマッカーサーであり、その人柄、考え方、日本との関わりを知る事は必要である。
同時に日本側では戦前統帥権を持っていた昭和天皇の占領期における立場と考え方も

知る必要もある。

 本書は諸資料を駆使して占領期における両者について分析したのものである。
内容としては。マッカーサーの戦前からの日本との接点、また、マッカーサーと接点のあった日本人の話からその人柄等を明らかにしつつ、同時にその下で行われた諸政策の内

容とその背景を分析するという観点から纏められている。
同時に昭和天皇はマッカーサーと占領期に11回に及ぶ会見を行っているが、その内容を

アメリカにおけるマッカーサーの議会証言等から明らかにし、それを通じて昭和天皇の戦

争責任に対する考え方や人柄が明らかにしている。同時にアメリカ側の昭和天皇に対す

る見方・日本国民の天皇制度への考え方も知ることができる。これらを通じて占領軍の政

策とその後の日本への影響等の可能性も探る事ができるといえる。

 講和条約を締結した1952年に我が国は独立国家となったが、将来どのような国家を建

設すべきかについては徹底した議論はなかった。それが冒頭の今日でも基本問題が世

論を動かしている背景でもある。しかし、現下の内外の諸情勢からして,我が国は改めて

その未来を真剣に議論しその未来像を描くべき時期にある。その趣旨から徹底的に占領

期の歴史的事実を探る必要があり、その点からも参考になる本である。


☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆【私の一言】☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆

                 『もつべきは友、得がたき学友』

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                                                  加藤 聡


 先日久しぶりに高校時代の友人仲間4名が集まって会食し、楽しいひとときを過ごした。
4名のうち2名は理系、2名は文系である。
話題は旧友の消息から始まり、多岐にわたったが、たまたま母校からはなかなかノーベル賞受賞者が出ないねという話になった。
理系で元大学教授の友人がいうには、母校はおろか、これからは日本人でノーベル賞を

もらえる人がいなくなるかもしれないそうだ。理由は、国が科学教育、研究関係の予算を

どんどん削っているため、研究が続けられない、研究者がいなくなる状況に陥っているか

らだという。

 国は基礎研究分野を含め、もっと科学関係の予算を増やし、学術研究支援や科学教育

に力を入れるべきだということはノーベル賞受賞者の多くが警告していることだが、大学

に籍をおく者にとっては、配分予算の減少は深刻で、憂慮すべき状況のようだ。大学院

に進む学生も減っているが、より問題なのは大学に残ってもポストが限られていること、

民間に就職したくても博士課程修了者を受け入れてくれる企業が少ないことだという。

こんな状況では大学や企業の研究所で腰を据えて研究を続けようという若い人がいなく

なってしまうと嘆いていた。

 友人によれば、中国からの留学生は、優秀な人が多く、よく勉強する。英語や日本語も

達者だという。
石油会社の研究所に勤めていた友人は、米国での留学経験をもつが、米国は研究環境

が格段にすぐれていること、それと欧州各国、インド、中国、韓国などから来ている留学

生の使う英語は決して流暢とはいえないが、彼らは臆せずブロークン・イングリッシュで

話している、とのこと。そこへいくとわれわれ日本人は文法的に正しい英語ということに

とらわれすぎて、つい臆してしまいがちだ、とのことばに他の二人もうなずいていた。
そして、各人が一様に、自分たちが教えてもらったのは受験用の英語中心で実社会では

あまり役に立たなかったねといっていた。
そこへいくと、韓国では貿易に依存する度合いが高いこともあって、官民ともに英語教育

には力を入れており、TOEICなどの成績は日本よりもかなり高いようだ。英語教育への国

の力の入れ方、おかねのかけ方が違う。
義務教育の段階の英語教育について付言すれば、外国のある国では英語を母国語とす

る外人教師が英語を教えているとのことで、英語教育にかける国の熱意の差を感じざる

をえない。
メーカーで営業職にあった友人は、海外の企業との交渉経験を多くもっているが、やはり

ビジネスの話はすべて英語で、交渉内容はすべて英文で契約としてまとめられる。そして

契約内容のチェックにあたっては弁護士がかならず介在するという。彼らと接するために

は当然英語の法的な専門用語ばかりでなく実務上使われる英語の知識が求められる。

彼は彼なりにビジネスの世界での英語に慣れるのに苦労したに違いない。
海外でのビジネスを経験している人、米国での留学経験のある人、大学で海外の学者や

外国人留学生と接していた人たちの感想は、外国人と接していて、いやな思いをしたこと

は少なく、彼らはみんな非常に親切で、フレンドリーだいうことだった。

 そして、話が中国とか韓国との関係に及んで、みんなが共通していっていたことは、我

が国は、倭といっていた時代から、中国大陸や朝鮮半島からはるばるやってきたいわゆ

る渡来人から多くのことを教えてもらっている。古来、日本の文化、文物の多くは中国や

朝鮮からもたらされ、その影響をうけている。
日本人はもっと現在の中国や韓国のことをよく知り、お互いの利益のためにも、小異を捨

てて大同につく気持ちで仲よくできないものか、ということだった。

 いろいろむずかしい問題が横たわっていることはじゅうぶん承知のうえで、お互いリタイ

アした身ではあるが、仲間や国のあり方などさまざまなことに思いをはせ、歓談のひととき

を過ごした一日であった。
もつべきは友、そしてかつては机を並べ切磋琢磨した仲間が社会に出て、それぞれの働

き場所を得て、彼らがいまだに貴重な情報を提供してくれること、いろいろ刺激を与えてく

れることはたいへんにありがたい。得がたき学友に恵まれたことを、あらためてうれしく思

いながら帰途についたしだいである。



編集後記
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今年も残り少なくなりました。この一年の皆様方のご支援・ご協力に心から御礼申し上げます。

 来る新年の干支は壬寅(みずのえとら)」で、「壬」は「妊に通じ、陽気を下に姙(はら)む」、

「寅」は「螾(ミミズ)に通じ、春の草木が生ずる」という意味があるそうです。

そのため「壬寅」は厳しい冬を越えて、芽吹き始め、新しい成長の礎となるイメージでだそうです。

 相場格言では「寅(とら)千里を走り」だそうです。ただこの意味については、躍進というよりも政治、

経済で波乱が起こりやすいとよみ、「再始動への産みの苦しみの年」と位置付ける意見もあるようです。

先行きの読みの難しい昨今です。ご自愛の上、佳い年をお迎えになるように心から祈念申し上げます。

今号もご寄稿などご支援ご協力有難うございました。(H.O)

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第433号・予告
【書  評】  庄子情宣  『スマホを捨てたい子供達 ― 野生に学ぶ未知の時代の生き方』
                 (山極寿一著 ポプラ新書)
【私の一言】 廣中崇夫  『人口減少を強みに変えて』
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              ■ ご寄稿に興味のある方は発行人まで是非ご連絡ください。
              ■ 配信元:『評論の宝箱』発行人 岡本弘昭
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