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                                         2020年3月1日

                                             VOL.389

                        評 論 の 宝 箱

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第389号 

【書評】     亀山国彦 『日本人の勝算 -大変革時代の生存戦略』

                 (デービット・アトキンソン著 東洋経済)

【私の一言】 庄子情宣 『健康長寿の話』 

 

      

・書 評

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◇          『日本人の勝算 - 大変革時代の生存戦略 』

◇              (デービット・アトキンソン著 東洋経済)

└─────────────────────────────────┘

                                              亀山 国彦

 

 著者は1965年英国生まれ。オックスフォード大学「日本学」専攻。アンダーセン・コ

ンサルティング、ソロモン・ブラザース勤務の後、90年渡日、以来在日30年。92年か

らゴールドマン・ザックス勤務、この間、金融調査室長として日本の不良債権の実

態を暴くレポートを発表し、注目を集め、06年パートナーとなったが、マネーゲーム

に見

切りをつけ07年退社。09年小西美術工芸社(創業300年、国宝・重要文化財の補修

を手掛ける)に入社、11年より同社会長兼社長。16年三田証券社外取締役、「新・

観光立国論」で山本七平賞受賞、17年日本政府観光局特別顧問。

 

 我が国の「失われた20年」と言われる経済の停滞が間もなく「失われた30年」にな

ろうとしている。その主因は急激な人口減少と高齢化にあると著者はいう。

これまでの経済理論・政策は暗黙裡に人口増を前提にしているため、有効な政策

を打ち出せなかった。既存の常識にとらわれずに、抜本的な対策を早急に講じなけ

ればならない。著者は海外のエコノミスト等100人以上の論文、データを分析し、対

策のポイントは、最低賃金の継続的なこれまでより大幅な引き上げ(毎年4~6%の

引き上げ、全国一律を提案。16~19年の最低賃金―全国加重平均―の実績引上

げ率は3%強。)にあると力説する。

 

 その有力な論拠として、他の欧州諸国より生産性・所得水準の低くかった英国の

例を挙げている。6年間の中断の後、99年に最低賃金制度を導入し、2018年まで

に最低賃金を2.2倍(平均年4.2%アップ)に引き上げたが、18年の失業率は75年以

降最低の4%、サービス業の生産性が最初の2年間で11%改善、生産性の高い企

業ほど雇用を増やした、先進12か国中最も収入格差が縮小した、等の良い結果

が明らかになっている。

 

 最低賃金の継続的かつ高率の引き上げにより、企業規模は拡大し、それによっ

て輸出、女性活躍、研究開発、技術革新がそれまでよりも盛んになり、生産性の

向上がもたらされる。日本もこれに倣うべきである。

 

 わが国での最低賃金のこれまで以上のペースでの引き上げには、経営者の強い

抵抗が予想されるので、この対策を考えなければならないし、最低賃金の引き上げ

を正当化するには人材のトレーニング・スキルアップが必要である。

 

 OECD諸国の「人材の質」ランキング(世界経済フォーラム2016)では、日本は第4

位だが、生産性は28位であることは、最低賃金レベルアップの必要かつ妥当である。

それ以前の水準が低いわけではなく、かつ、「人材の質」が高くなかった韓国での

最低賃金16%引き上げ(18年)は、さすがに極端で失業者が増えた。最低賃金引

き上げ政策には取り巻く環境との整合性が必要だと述べている。

 

 評者はインターネットで「経済政策としての最低賃金」をキーワードで検索した限

り、著者のような割り切った見方は少なく、

「これからその得失を研究する」、

「勤労雇用統計の一般利用に制限がかかっているので分析ができない」、

「これまで以上のペースでの最低賃金の引き上げには失業者増という副作用が予

想される」、

「影響を受けて退出する企業に手を差し伸べるべきではないか」

などの意見が見られ、本格的な検討はこれからという感じを受けた。一方、与野党

とも、最低賃金の引き上げそのものには賛成しているが本格的な経済政策として取

り上げるには至っていないようだ。安倍政権の春闘への介入は、本論との関係はど

の程度あるのだろうか?

 

 

☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆【私の一言】☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆

 

                     『健康長寿の話』

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                                            庄子 情宣

 

 日本は世界でも指折りの長寿国である。しかし、その実態は、最期まで元気に活

動して天寿をまっとうするピンピンコロリ(PPK)は少なく、男性は平均9年、女性は

同12年程度も家族や介護の人に世話になり迷惑をかけた末に死んでいくという、

所謂ネンネンコロリ(NNK)が他国に比べて際立って多いとも指摘されている。この

ような状況から、高齢者はこの不健康長寿を避ける、つまり健康寿命を保持する

ことが国民的義務といえよう。

 

 人間、年を取れば心身ともに衰えるのは必定である。従って、健康に毎日を暮ら

すには、老化を遅らせる努力が必要である。特に、要支援・要介護状態への移行

を避けることが大きな課題であろう。長寿で知られる長野県で健康な高齢者につ

いて調査したところ、「環境が良いところで、よく働き、生涯学習を一緒にできる仲

間やご近所さんを持ち、多少の体調不良では病院に行かず薬も飲まず、歯の手

入れを心掛けており、自分の健康は自分たちで守る」をモットーに生きてる人」が

多いということが判ったという。

 

 入院の長期化は、寝たきりや、院内感染などから健康でなくなる可能性が高いと

いわれており、入院はできるだけ避けるのが望ましいといえる。なお、日本の人口

あたりの病院病床数は、米国よりも4倍以上多く、入院期間は5倍以上長いという

事実もあるそうである。また、薬害対策も重要であろう。さらに、健康保持にはしっ

かりした食事をとる必要があるが、この調査では、健康な人には、歯の定期検診

に熱心な人が多いそうである。加えて、コミュニケーションを大切に知的活動を活

発にする機会が多いといことも指摘されている。

 

 認知症予防のために活発な日常の活動が必要であるといわれている。同時に、

高齢者の長期入院の原因の一つに転倒による骨折がある。これを避けるには適

度な運動と適切な食事が必要であり、食事に関しては、農林水産省の低栄養予

防の食生活指針14カ条にも、「噛む力を維持するため義歯は定期的に検査を受け

る」とある。つまり健康保持には歯の手入れがも重要ということである。

 

 高齢者は病院に行く機会も少なくないが、健康寿命の長期化を願い、適度な筋ト

レと、噛む力を保持しそれにより適切な食事をとり、病院から出来るだけ遠ざかる

生活を目指したいものだ。

 

           

編集後記

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 新型コロナウイルスに関するニュース、報道があふれる昨今です。新しい病気で

あり、それはそれで当然ですが、中には過剰反応ではないかと思われたり、貶め

たりするようなものもあり、出来るだけ冷静に報道等に接するほか、基本である

「うがい」と「手洗い」を徹底し各自が予防に努めることが肝要と考えていますが。

 

 アメリカ在住の濱田氏(アメリカ便りの筆者)から次のようなメールが来ました。

ご参考までに転記いたします。

 

「テレビなどで所謂 ”専門家” が意見を述べているようですが、

仲田洋美医師(神宮外苑ミネルバクリニック)がそれらに対する反論を含め、わかり

やすく説明しています。検査の本質的な部分も詳しく説明されています。

私にとっては従来理解していなかったことにつき、少しだけでも理解が深まった気が

します。全文は下記のリンク先をご覧ください。」

 

新型コロナウイルス|テレビ出演医師たちの虚言を暴く | 神宮外苑ミネルバクリニック

https://minerva-clinic.or.jp/blog/king-of-fake-lie-of-the-medical-doctors-on-air/

 

 今号も貴重なご寄稿有難うございました。(HO

 

 

なお、ひすい社ホームページは下記となります。よろしくお取り計らい下さい。

https://hisuisha.jimdo.com

 

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第390号 予告

・【書評】     桜田 薫 『正しい政策がないならどうするか 』

          (ジョナサン・ウルフ著 大澤津・原田健二朗訳、(勁草書房)

・【私の一言】  幸前成隆 『知りて知らずとなす』 

                           

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      『評論の宝箱』発行人 岡本弘昭

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