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2020年1月15日
VOL.386
評 論 の 宝 箱
見方が変われば生き方変わる。
読者の、筆者の活性化を目指す、
書評、映画・演芸評をお届けします。
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第386号
・【書評】 前川 彬 『ジャパン・ストーリー』
(ジェラルド・L・カーティス著 村井 章子訳 日経BP)
・【私の一言】 川井利久 『日本の未来』
・書 評
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◇ 『 ジャパン・ストーリー 』
◇ (ジェラルド・L・カーティス著 村井 章子訳 日経BP)
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前川 彬
著者のカーティス氏は、1964年コロンビア大学歴史学部の大学院生の時に戦後の
日本政治研究のために来日し、それ以降50数年にわたり日本の政治の変容をつぶさ
に観察してきた。当時まだ若手の政治家であった中曽根康弘氏の知己を得て以来、
外国人研究者として歴代の首相をはじめ多くの日本の政治家と接触できるようになっ
たが、著者によると、外国人研究者には日本の政治家は率直かつ本音ベースで話し
てもらえるメリットがあったと述懐している。
本書は、彼が日本の政治システムの変化を研究し考察する過程で書き留めた政治
見聞録であるが、対象となっている期間が昭和の後半から平成の終わりまで、具体
的には日本経済の高度成長、バブル崩壊、東西冷戦の終結、自民党の派閥政治の
弱体化と一時的な下野、そして今の安倍政権までの激動の時代であり、その間の日
本の政治をアメリカ人政治学者(現コロンビア大学名誉教授)がどのように捉えたか
が窺えて実におもしろい。
著者の見解の一端を紹介すると、
1. 現在の自民党は、多くの重要な点で1990年以前とは違う政党になっている。
プラグマティズムあるいは日和見主義の政策を取り、選挙で勝つためにイデオロギー
的志向をひとまず棚上げして変化する環境に適合する能力を備えている。
2. 日本の多くの識者は安倍政権の官邸主導を批判的に見るが、それは1980年代
の行政改革による当然の帰結であるし、選挙の洗礼を受けない官僚が権力を握る
より有権者に対し説明責任を負う首相に権限が集中する方がはるかに好ましい。
問題なのは、国会、野党、市民社会団体、メディアなどの力が弱く、チェック&バラン
ス機能が果たされていないことである。
3. 日本政治の未来は、グローバリゼーションと少子高齢化が進行する中、人々の
生活水準の維持向上を図るとともに高齢化する人口に安全な環境と生活満足感を
提供するには、これまでにない発想と不人気な政策改革に取り組む覚悟が必要で
あるが、近い将来その覚悟と意欲のある政治家が指導的地位に就くという期待は
持てない。一方で、「日本の将来に希望はない」といった過剰な悲観論には与せず、
遅かれ早かれ日本の政治システムは国民の望む政策を実行することになるに違い
ない。いずれも外国人研究者の客観的な見方として傾聴に値する。
あとがきにあるように、著者は日本政治の研究を始めて以来日本の魅力に惹き
つけられ、日本人女性と結婚しその後の人生を日本とともに歩んできた。2008年に
日本語で『政治と秋刀魚』を出版し、本書は英語で書かれた同書の改定増補版と
位置づけられる。
随所に日本をこよなく愛する著者の気持ちが伝わってくる本である。
☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆【私の一言】☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆
『日本の未来』
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川井 利久
最近の繁華街には外国人で溢れている。白、黄色、黒と日本語より外国語の方
が聞こえてくる。
そして外人の滞日の感想も居心地の良さや治安の良さを声高に絶賛している。
日本人としても無気力ながらも世の中の安定を享受している。半世紀前のヨーロッ
パ大陸のような住み心地に近いのではないか。
ところがこの30年間に日本の国力はGNP を始めとして生産性の国際比較は軒並
み急落して、先進国の低位におちついてしまっている。一見社会は安定し、犯罪も
少なく、治安も他国より安定しているように見られる。
しかし 社会内部では国、地方を問わず財政が悪化し、貧富の格差は拡大している。
国力は明らかに右下がり線を辿っているのに国民の大多数は中流意識にひたって
いて、危機感を感じていない。
製造業の停滞やCP事業の開発速度の遅いことなど、ここ30年の日本経済の劣化は
国際比較すれば顕著である。
中国、インドをはじめ後進国と称されてきた国々はハングリー精神をもって急速に国
力を向上している。
このままでは日本は急速に貧乏国に転落してしまうだろう。
現状認識ができていない政治家や役人が多すぎる。
天文学的な財政赤字を一歩一歩減らして、早く健全な国家運営に戻さないと国として
破綻してしまう。
外交にしても内政にしてもバラマキだけが政治としている無能の指導者はもはや有
害な存在である。
そしてこの現状をぼんやり見過ごしている国民も平和ボケである。
明治、大正、昭和の時代にえいえいとして国力を築いてきた日本人のハングリー精
神をもう一度胸に刻んで新しい令和の時代には再度右上がりを目指す日本国民を
再構築することが困難ではあるが日本国民に残された唯一の目標ではあるまいか。
編集後記
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昨今の日本の基本的問題は、少子高齢化、財政、人材不足の3点だそうですが、
個人的にはこれに情報が加わるのではないかと思います。
これは、多様化・大量化する情報の中から真実の情報をいかに把握するかという
ことですが、我々は得てして単純にして明快な誤った情報に騙されやすいということ
です。真実の情報は複雑でわかり難い場合が多いそうですが、努力して出来るだけ
真実の情報に接し物事を判断したいものです。
今号も貴重なご寄稿有難うございました。(HO)
なお、ひすい社ホームページは下記となります。よろしくお取り計らい下さい。
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第387号 予告
・【書評】 矢野清一 『日本人の七不思議』
(烏賀陽正弘著 論創社)
・【私の一言】 小林基昭 『再生エネルギー定点観測2019』
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