「関ヶ原の合戦」が、日本の歴史を大きく転換させた文字通り「決戦」であったことは間違いない。
この「関ヶ原の戦い」は、最新の研究では必ずしも東軍の徳川家康が有利ではなく、むしろ西軍の石田三成が当初は有利であったとされている。
それでは家康はなぜ、この日本の進路を決した世紀の決戦を勝利することが出来たのだろうか。詳しく見ていこう。
豊臣秀吉は逝去に際して五大老、五奉行に事後を託したが、徳川家康の所領は250万石以上に達しており、他の大名たちを圧倒していた。
そのために秀吉は、家康の力を封じるために「家康包囲網」とも言える五大老・五奉行の制度を導入したのである。
しかし秀吉の死後、家康は天下は強者の持ち回りという慣例に従い、秀吉が禁止していた加藤清正や福島正則との私婚を勝手に行った。
このため他の四大老と五奉行は家康を問責したため、さらに家康との対立が深まった。
秀吉逝去の翌年に前田利家がなくなると、加藤清正や福島正則ら七将が三成襲撃を計画する。
家康が中に入って騒動は鎮圧されたが、三成は奉行職を解任されて佐和山城へ逼塞した。
当時の三成は19万4千石の佐和山城主に過ぎず官位は従五位治部少輔で、正二位内大臣の家康とくらべるべくもなかった。
そのために佐和山城に蟄居した三成は、大谷吉継や毛利氏の重臣・安国寺恵瓊を呼び寄せて謀議を行った。
三成には私心がなく、あくまでも豊臣家のためだと説いたため、五大老の一人で備前56万石の宇喜多秀家が味方となった。
続いて三成は安国寺恵瓊と協力して、西軍の総大将に毛利輝元を担ぎ出すことに成功するのである。
さらに三成は上杉氏の重臣・直江兼続を味方にすることで、上杉景勝を西軍に引き込むことにも成功している。
120万石の毛利輝元が西軍の総大将となり、120万石の上杉景勝が加わったことにより、状況を見ていた大名たちが西軍に加わった。
1600年慶長5年7月、徳川家康が上杉討伐のために出陣すると、直ちに三成は行動を開始する。
三成は奉行衆と協力して秀頼の名の元に家康討伐の号令をかける。
このために上杉討伐に向かっていた家康は、「官軍に将」から突然に「賊軍の将」へと転落する。
家康にしたがっていた武将たちは豊臣恩顧のものが多く、いつ寝返るかわからない状態になったのである。
そして大坂城には総大将の毛利輝元をはじめ続々と武将たちが詰めかけ、俄然西軍が有利となった。
三成は当初、岐阜城付近を防衛ラインにして東軍と対峙して長期戦に持ち込む計画を立てている。
ところが岐阜城主のかつての三法師・織田秀信があっさりと東軍に降伏したため、防衛ラインを大垣城まで後退させる。
自ら三成は大垣城に入って豊臣秀頼と毛利輝元の到着を待つ予定であった。
つまり官軍である西軍が、防衛ラインで賊軍の東軍をせき止めて、戦いが長期化すれば西軍が圧倒的に有利となって行く。
そこに豊臣秀頼と毛利輝元が出陣してくれば鬼に金棒である。
籠城戦が苦手な家康は、なんとか西軍を得意な野戦に持ち込んで、早期に決着を着けたかった。
合戦前日の9月14日夜、突如として大雨で大垣城が浸水する危険が生じた。
そのために三成は余儀なく関ヶ原での野戦を強いられることになったのである。
夜中に西軍が関ヶ原に陣を張ったことを知った家康はほくそ笑み、直ちに関ヶ原へ陣を進めた。
関ヶ原の合戦は、予想に反してわずか6時間あまりで東軍の勝利で終わった。
西軍の敗因としては、総帥・毛利輝元が、吉川広家に説得されて大坂城を離れなかった事が大きい。
また小早川秀秋が途中で寝返った事が致命傷となったことは間違いない。
あっけない結果であったために、当初から東軍が圧倒的に有利だったと我々は考えがちだ。
だが関ヶ原の合戦は、天候のわずかな変化が勝敗を決したのである。
関ヶ原の合戦での敗走中、三成はある寺で住職に「なにを所望するか」と尋ねられ「家康の首」と答えたという逸話は有名である。
石田三成は再起のために逃亡していたがやがて捕縛され、小西行長や安国寺恵瓊とともに斬首された。
三成の凄まじいまでの執念だが、このため江戸時代に石田三成の縁者はことごとく処罰された。
さらに三成の居城であった佐和山城は、石垣にいたるまでことごとく粉砕されたために跡形もなくなった。
また三成の出身地である近江では、石田三成に関する話をすることを固く禁じられたという。
逆にいえば、それほど家康は石田三成という男を恐れたのである。
まさに「関ヶ原の合戦」は、家康にとっては最後までどちらに転ぶかわからない、薄氷を踏む思いの戦いだったのである。
歴史は我々が考える以上に、天候などのわずかな変化が、その未来を大きく変動させるのである。
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