こちらの絵葉書袋、「韓国皇帝即位記念絵葉書」とあります。
記念行事に合わせて絵葉書が発行されるのは戦前だと普通ですが、「発売元 松江 今岡葉書部」というのが注目ポイント。
島根の松江で韓国皇帝即位を祝した絵葉書が独自に発行されていたんでしょうか...?
ということで少し調べてみました。
まず、「今岡葉書部」は額縁店として現在も営業している今岡商店のことでしょう。島根の絵葉書発行元といえばここ!というくらいよく見る名前です。
お店の詳細は以下のサイトをご参照ください。
そして絵葉書本体についてですが、当時の新聞を確認するとこのような記事が見つかりました。
今岡商店が韓国皇帝即位記念絵葉書を売っていた裏付けがとれました。事前予約を受け付けつつ、8月27日の即位日に合わせて販売する方式だったようです。
以下で紹介しますが、中の絵葉書が3枚であったこととも整合性がとれます。
なお、値段は3枚で18銭とありますが、当時は普通の写真絵葉書が1-3銭くらいで買えたことを考えると高価な部類に入りそうです。
あとは中の絵葉書を紹介しましょう。
【1.韓国皇帝即位記念
His Manesty The Emperur Korea・伊藤韓国統監】
明治40年に大韓帝国の皇帝として即位した純宗と、韓国統監府のトップを勤めていた伊藤博文。
英語の綴りが変な感じになってますが、戦前絵葉書での変な英語・ローマ字はよくあることです。
「His Majesty The Emperor Korea」としたかったんでしょうね。
【2.韓国皇帝即位記念 韓国王城】
大韓帝国皇帝の居城となった徳寿宮。写真に映るのは大漢門。
【3.韓国皇帝即位記念 韓国統監府】
統監府の庁舎。
とりあえず、ざっと調べた限りで語れることは以上です。
中四国の絵葉書を幅広く集めてますが、地方都市が独自で韓国の絵葉書を売っていたであろう事例は初めて見ました。面白いですね。
特異事例だと思われるからこそ、そのうち発行背景がわかるものが出てくれば嬉しいんですが...
予想される発行背景はいくつかありますが、
・東京や大阪などの大手絵葉書屋が発行したのを小売するにあたり、袋は独自で用意した(もし今岡商店以外が出したと思われる同じ図柄の絵葉書を見つけられた場合はご一報ください。)
・松江で絵葉書が特に流行っており、島根関係以外の記念絵葉書も売れると踏んだ今岡商店が発注した
・なんらかの理由で島根において韓国の動向が中止されていた
などが挙げられます。
追いかけると面白そうなネタではありますね
○文中に登場したもの以外の参考文献