このような絵葉書が手元にあります。


一見謎の絵葉書ですが、スタンプ部分に発行背景特定のヒントが。



掠れている部分も多くて完全には読めませんが、「〜同妃殿下御台臨」「〜や商館」「44.11.28(明治44年11月28日のとこか)」などが読み取れます。

また、中央部には「紀念」とあり、その上の文字は「高知」と読めなくもありません。


これらの情報を元に調べて見たところ、本絵葉書は高知に関係するものだと判明しました。


資料によると、明治44年11月28日、閑院宮戴仁親王が智恵子妃殿下同伴で来県したそうです。赤十字社高知支部、愛国婦人会高知支部、篤志看護婦人会高知支部の総会に参加するためです。

29日以降には総会に参加したり、官公庁や学校を視察したりしています。


このことはスタンプの情報と一致しているため、本絵葉書両側の写真の人物が特定できたほか、上部にある看護婦と天女を合わせたような意匠画が描かれた理由を推測できるようになりました。


また、下部の写真は「まからずや商館」のもののようです(スタンプにある「〜や商館」の正体)。

この施設は小梶覚之助が高知市本町二丁目に開いていた商店で、高知におけるデパートのはしりと言われています。呉服、洋品、衣類、雑貨といった幅広い商品をどこよりも安く販売したことから繁盛したようです。

明治中期に設立され、大正6(1917)年頃まで営業されており、建物自体は高知空襲まで残っていたらしいです。


絵葉書の写真では大売出しと書かれたのぼりやアーチが出ていますが、皇族の来県を祝したセールでもしてたんでしょうね。




謎の絵葉書のままでおわることなくちゃんとした素性が判明してよかったです!🙌



○参考

・高知大丸三十年史

・高知県議会史上巻

・高知市史 中巻