詩人ランボー&ヴェルレーヌ | 歴史の授業で習えなかった同性愛

詩人ランボー&ヴェルレーヌ

天才の痴話ゲンカ・ランボー&ヴェルレーヌ

歴史の授業で習えなかった同性愛-1

ランボーといえば、(日本人で文学に興味がなくても)名前ぐらいは知っている人がほとんどでしょう。ご近所の図書館の古めかしい古書の棚に、彼の詩集があるはずです。いまでこそクラシックな棚にひっそりと納められているランボーの詩集ですが、19世紀当時としてはフランス(ってかヨーロッパ)の文壇を塗り替えてしまうほど革新的な詩集だったのです。ビートルズが20世紀の音楽シーンを塗り替えてしまったように、19世紀のヨーロッパに与えた影響はマジにセンセーショナル。

しかも、彼が詩作をしたのは15歳から19歳(5年足らず)。
こんなあどけない、ベルアミ・ビデオにでも登場しそうな少年がヨーロッパの若者たちを熱狂させ後の文壇を変えてしまうとは、まさに神話級。たった4年間の創作活動でそんなことをやってのけたのは、ヨーロッパ文学史の中でも、彼をおいてほかにはいないでしょう。

詩人同士の恋愛といえば、さぞロマンチィックな恋愛が想像できることでありましょう・・・しかも、かたやランボー君はなかなかの美少年。
ところがこの二人、痴話ゲンカの果てに遂に流血事件まで起こしてしまうような、みのもんたも黙る超ゴシップカップルでありました。こんなヤツらがニチョで暴れたら、まわりのお客もサッサとお勘定して帰ってしまうことでありましょう。

19世紀のフランスでは同性愛はタブーでしたが、天才・ランボー君のぶっちゃけな(露悪的な?)性格とヴェルレーヌの見事なハマリっぷりが目立ちまくったため、二人の関係は誰もが知っていていたとのこと。そのおかげで、ランボー以降のフランス語詩を語るときは、同性愛についても触れねばならなくなったわけです。えらいぞ、天才くん!!



ディカプリオ主演で映画化

さてさて、このカップルがどれぐらい有名かというと、ふたりのカップルぶりがディカプリオ君主演(企画段階では故リバー・フェニックス君主演だったらしいが)で映画化されるぐらい有名であります(歌川は野村宏伸&田中実主演の舞台化されたモノも観ました)。

当時はアイドル色の強かったディカプリオ君でしたが、この映画では男同士のキスシーンやセックスシーンなども一糸まとわぬ姿で頑張って演じていて、気合いが入ってました。さまざまな文献で伝えられている二人の同性愛エピソードもちゃんと盛り込んである脚本なので、観てみるのもいいかもしれません(別に面白い映画だとは思えないけど、ディカプリオ君はまちがいなく頑張ってくれていました)。


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DVDも出ているみたいですが、TSUTAYA新宿店にはビデオしかありませんでした。





ヴェルレーヌとは、こんなオジサン

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ランボーのお相手・ポール・ヴェルレーヌは、わりとイイとこのおぼっちゃん。保険会社やパリ市役所などに勤めながら詩作を続け、やがて人脈を広げてパリの流行詩人となっていきます。出版した詩集は斬新ではないものの、まぁまぁ好評。25歳で16歳の女子と結婚・一子をもうけますが、少年時代から同性愛の傾向があり(同級生に恋しちゃった記録があるそうです)「(結婚は)誤った道を歩まないため」と詩に書いちゃっている模様。セクシャリティ的にはバイであったというのが、今日では有力説となっております。

ところが27歳の夏、「誤った道」と出会ってしまうのでありました。天才にして美少年の、ランボー君であります。





悪魔くんキャラの美少年・ランボー

ランボー君はフランスのシャルルヴィルという田舎の生まれ。

子供の頃からその文学的な才能で神童と呼ばれましたが、16歳の時に戦争のとばっちりで極貧生活。このときの不運な生活が、天才少年の心に大きな影を落とします。生きる喜びを謳う作風から一転、悪魔がのりうつったかのような詩を書き始めます。町の金持ちの男にカラダを売ったりしながら、問題行動の連発。非行に走ってしまうのでありました。

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そんな中でも、やはり天才は書かずにはいられません。ランボー君は当時有名だったヴェルレーヌ宛に、いくつかの詩を送りました。あまりの見事さに、ヴェルレーヌはランボーの才能にすっかり魅せられてしまいます。「いますぐパリに来い!」と、旅費を送ってランボーを呼び寄せるヴェルレーヌ。

「やたっ!!」とばかりに旅支度をする傍ら天才・ランボー君が書き上げたのが、フランス文学史上に燦然と輝く名作「酔いどれ船」であります。パリの詩人たちは、この傑作にド肝を抜かれます。このときランボー君は、16歳。「誤った道」を恐れていたはずのヴェルレーヌは、この危険な魅力の少年にアッサリ降伏。恋のドツボにハマッてしまうのでありました。

出会ってわずか三ヶ月で、二人の仲は世間に知れ渡ってしまいます。
ランボー君は、相変わらずの素行不良。ヴェルレーヌはランボーにデレデレ。文壇のパーティに連れだって出席しようとしてつまみ出されたり、アブサンを飲んだくれて乱痴気騒ぎをしたり、イラストレーターのジャン青年と3Pに耽ったり、なんともハチャメチャな 恋の日々であります。





パリのボヘミアで、ヨーロッパのあちこちで

夫をオトコに取られたんじゃあ、奥さんの面目が立ちません。
ヴェルレーヌがランボーとヨーロッパ諸国に旅行に行ってしまうと、奥さんのマチルドは追いかけていって夫を連れ戻そうとしますが、失敗。とうとう耐えきれず、ヴェルレーヌと離婚してしまいます。

チャイコフスキーの時も思ったんだけど、カモフラ結婚て、難しいんだねぇ。。。結婚後も、人生長いんだもんねぇ。。。奥さんとの平穏な生活を選択するにしろ、愛しい男性との恋を選ぶにしろ、どちらにしても喪失感を味わわなければならないヴェルレーヌ。

それに対してランボーは、ゲイライフなんて誰もが想像もしなかった時代に、いかがわしいモンマルトル(この町だけにゲイが集まるスポットがあった)に身を置いてゲイの仲間に囲まれ、ゲイライフの先駆者のような生活を送りました。やっぱ、ハラを括っちゃった者のほうが強い。でも、すっぱりハラを括れない人は、それがその人なんだから仕方がないか。。。





さて、このカップルで有名なのは、壮絶な痴話ゲンカ

ただ罵りあうだけではなく、鼻血が出るほど殴り合うなんてことも結構あったとのこと。まわりが引いちゃうような壮絶なケンカを、パリのモンマルトルでも旅先でも繰り広げては仲直りの「場末・痴話ゲンカスパイラル」状態だったそうであります。

ケンカのチカラ関係は、男制度的なランボーに対して、女制的なヴェルレーヌというカンジで、見た目と逆だったという証言がたくさんあるそうです(映画ではエッチもランボーがタチになってましたが。。。)。ヴェルレーヌは「あたしたち、どうしてうまくいかないのかしら」と泣いてばかりいたと、ヴェルレーヌの友人も証言。天才詩人の鋭い感性で欠点を指摘され続けたりしたら、そりゃー誰だってガマンできませんわな~。

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そんな痴話ゲンカを繰り返しながらも、天才少年はフランス文学史に輝く名作「地獄の一季節」「イリュミナシオン」を書き上げ、またもやフランス文壇を震撼とさせるのでした。





痴話ゲンカで、遂に発砲

二人のカップルライフは、あんまり幸福じゃなく終わりを告げました。
へべれけに酔ったヴェルレーヌが、口論の末にランボーの手首を撃ったのです。手から血を流すランボーにヴェルレーヌは平伏して謝り、「自分を撃って、殺してくれ!」と懇願します(ドメ夫の典型的な態度)。しかしランボーがとりあわなかったため、ヴェルレーヌは再び逆上してランボーに銃口を向けます(ますますドメ夫の典型的な態度)。仕方なくランボー君は警察を呼んで、ヴェルレーヌ御用となったわけであります。

二人の恋は、二度と元には戻りませんでした。ヴェルレーヌの禁固2年の刑期終了後に二人は再会しますが、この時にも壮絶な口論となり、ケンカ別れ。ランボーは詩作をプッツリとやめてヨーロッパを放浪した末、昔から憧れていたアフリカに渡ってしまいます。エチオピアで武器商人などをしながら暮らしますが、膝を癌に冒されマルセイユに戻り足を切断。しかし、ガンは体中に転移していて37歳でこの世を去ります(お気に入りのアフリカ少年・ジャミ君に看取られたそうです)。


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ゲイが切手になってたりすると、やっぱうれしいもんですな


ヴェルレーヌはランボーがアフリカに行ってしまった後、ランボー詩集を出版したりして稼いじゃったりしています。モト妻とよりを戻した時期もありましたが、破局。学校の先生になって、ランボーに似た面差しの生徒リュシアン君に恋をしたりしましたが、そのリュシアンも急死。絶望したヴェルレーヌはランボーと暮らしたモンマルトルで酒と放蕩の日々を送り、詩作らしい詩作もせずに52歳で他界します。

ランボー君が才気に溢れすぎていて、それを受け止められる人など誰もいない。。。でも、ヴェルレーヌはどうしようもなく彼を愛してしまった。。。。そんなカップル像が浮かんでくるふたり。才能があるってことと、シアワセになれるってことは違うのかもね。特に、若くして才能を開花させてしまった人は、その才能に食いつぶされてしまいがち。ああ、僕もツレちゃんも、凡人であることを感謝しなくちゃね。