こんにちは。
歴史考察とっきぃです。
「犬御殿でもお建てになるおつもりか? 全くもって迷惑千万!」
老中・溝尾庄兵衛がぼやきながら、黒書院へと歩いています。
黒書院では、御側御用取次の天野源右衛門が待っていました。
「ご老中、お呼びだてしたは余の儀にあらず、送信したとおりでござる」
源右衛門は昨日、将軍が「生類憐れみの令」を企図していると、老中全員宛でメールを送っています。
内政は、政所(まんどころ)が管轄しています。ですので、老中政所所司はフランスの内務大臣に近い強力な権限を有しています。
長官である政所所司を務めているのは、溝尾庄兵衛(みぞお・しょうべえ)という男で、彼には”摂津守”という立派な百官名(ひゃっかんな)があるのですが、庄兵衛で通しています。歯に衣着せぬ物言いするをするので、その辺を将軍家に愛されているのでした。
「蚊を叩いたら牢屋行きなど、真っ平ごめんじゃ!」
「まぁまぁご老体、お気を鎮められよ。常憲院さま(綱吉将軍)がこのお触れを出した真意は、ご老中もご存知でしょう」
ご老体というのは、庄兵衛が老中の最年長だからです。
「ふむ、荒々しい気風がおとなしくなったと聞く」
戦国時代の遺風が、元禄時代に完全に変わったことは、庄兵衛老中もわかっています。荻原近江守の創設した管理通貨制度で日本は久々の好景気に恵まれました。すべては綱吉将軍の功績です。
「それで、お上のご意向はどのようなものなのだ」
「それは・・。」
源右衛門は「生類憐れみの令」の真意を語り始めます。
まずは、ペット業界の闇です。売れ残った売り物のペットはどういう運命をたどるのか、業者を市場から追放するのではなく、話し合いにより業者に出す許可証を厳しく見直す。より欧州に近いシステムにしたいという意向です。ちなみにペット業界の闇は杉本彩女史の著作が詳しい。今や「家族」といってもいいペットは、奴隷商人に取引されるような存在ではありません。
次いで、こちらが本命なのですが、民草の厚生です。
職人の金型はそれ自体が財産です。毎日毎日現場で無理難題と向かい合い、かすかに見えた光を辿って完成した汗と涙の結晶です。職人の命といってもいい。それに姑息にも税金をかけることは理も涙もない強欲役人のすることです。これを廃止します。
知的所有権も守ります。大企業が無断でパクるのが定番でした。例外は「痛くない注射針」でおなじみの岡野工業(墨田区・後継者不足で閉店)くらいで、岡野雅行社長は大企業と共同で特許出願をすることで、パクリから身を守っていました。職人さんは世の中との折衝が疎いので、大企業の横暴にも”しょうがない”と下を向くことが多いのです。
大企業の背後には経団連がいて、自民党とはツーカーです。要するにグローバリズム政党の自民党には中小企業の職人を守る度胸はないのです。
将軍頼秀は、特許庁を揺さぶって目付を置くことにしました。人間というのは弱い生き物ですから、放置すれば必ず悪い方へ流されます。知的所有権(工業所有権)というのは、職人の財産です。
お上が守らずして誰が名もなき職人を守るのか、こういうときのために国民はお上に税金を払っているのです。目付の活躍で、大企業から「山吹色のお菓子」を受け取り「お主も悪よのう」と悪辣三昧の与党のセンセイ方はすっかり窮乏してしまいました。
次世代戦闘機、F−3烈風のエンジン技術を支えているのはIHI単体だけではありません。東大阪や大田区をはじめ、無名の全国の民草が支えているのです。素晴らしい技術や製品には相応しい報酬が与えられて然るべきです。
公共施設の建設費用は、改めて作業員の日当から積み上げられることになりました。実は戦前のNSDAP(国家社会主義ドイツ労働者党)がこのやり方で公共費用を提示していたんですね。それを流用させてもらおうという話です。
畳の材料となるイグサも質的転換が求められています。中国産が跋扈しているからです。日本人技術者がイグサの苗を中国に持ち込んで育成しているので、品質も日本のものと大差ないのです。
熊本県八代市の庄屋たちは楽観が度を過ぎており、いまやイグサ農家は壊滅状態です。「中国産?たいしたことバッテン」とノンビリしていたのでした。庄屋どんを鍛え直す必要もあるのですが、情報をテレビと新聞に頼る百姓を責めるのは酷です。そこで地頭の登場となります。「よそ者」で「世間」から一歩離れていますから改革を導入しやすいのです。
背後の憂いなく民草に事業に専念してもらう、すなわち楽市楽座。その生活を悪い奴らから守るために出される台命(幕府の命令)が、「令和版・生類憐れみの令」なのです。
江戸時代はなぜ長期にわたって繁栄したのか、それは監察が発達したからです。人間は放置すると必ず悪い方に流れるという、徹底したマキャベリズムで運営されました。
役職を複数導入したのもそのためです。例えば江戸町奉行、北町の評判が上がれば南町も負けじと精を出す。町人からの訴訟の数で評価が問われるのです。人間の心の襞(ひだ)を巧みに織り込んだのが徳川幕府でした。例の「慶安の御触書」ですが、似たお触れが何度も出されています。何度も出されたということは、ほとんど守られていなかった証左です。お上もわかってやっていました。
悪は心のなかで生まれます。「これくらいなら」、「一回だけなら」といった心の雑草を取り除くのがいちばん手っ取り早いというのが、幕閣の結論でした。
江戸時代は人口3000万人で停滞していたとよく言われますが、逆に言えば日本が養える最大値だったとも言えます。燃料は樹木だけですので、限界がありますから。ペリー提督はちょうどいいときにやってきたとも言えますね。中国では宋時代にはコークスが普及していたので、その技術をどうして日本が摂取しなかったのか、謎です。
「なるほど、心得た。お上は間違ったことはなさらぬ。それがしもこの言葉に恥じないようにこれからもまつりごとを邁進したい。」
「庄兵衛殿のお言葉、必ず上様にお伝え申します。」
後日、老中政所所司・溝尾庄兵衛は、御用部屋で早速企画を披露し、老職全員の承諾を得ました。
「庄兵衛殿にしては、素直でしたなぁ」
日頃の反骨精神を知っているだけに同僚の軽口が続く。
「民草を守るために我ら御家人は存在が許されておる。頼朝公や、北条泰時殿に負けないまつりごとをお互い心がけようではないか」
この理念を忘れれば、室町時代のように私利私欲にまみれた混乱の世になるのです。庄兵衛の力強い言葉に一同、うなずきました。
将軍家のご威光が及ぶ限り、日の本に懸念事項はひとつもないのです。来たるベーシック・インカム導入に向けて、明智左馬之助と幕閣は、どうすれば世の中が回っていくか思案にくれていました。
思えば、民主主義や国民主権という発想は国民徴兵と裏表で進んできました。戦った人間だけが参政できるというのはギリシャの昔からある常識です。生産オンリーは奴隷の生態なのです。
スイスで直接民主制が息づいているのは個々の百姓が兵としてオーストリアの禁軍や中世の華ブルゴーニュ公の軍隊に勝鬨をあげたからです。今でもスイスは国民皆兵です。民主制というのは国民が兵隊さんになりうるから発達したのです。
ブルゴーニュ公の死
今、仕事はAIに置き換わりつつあります。同じく、人間の代わりにロボットが戦う時代もそう遠くはないでしょう。そうなれば国家は国民のご機嫌を伺う必要がなくなります。増税メガネやゲルが国民をないがしろにするのはこれが理由です。今後、ますます国民はツッケンドンにされるでしょう。なにしろ兵隊さんにならないのです。ホワイトカラーが本社ビルから叩き出されるのと同じ理屈です。
しかしわが公儀は違います。労働や軍役だけが国民の存在意義ではないのです。人は人であるだけで価値がある。たとえAIが生みだした富であろうと国民に行き渡らねばなりません。理想は「縄文人のような表現する民」です。ブラック企業で押しつぶされるために人は産まれたので断じてないのです。
ベーシックインカム導入は「健康で文化的な最低限度の生活」を守るためのもの。日本国憲法第25条で謳われています。
仮に月20万円支給として、うち18万を竹中平蔵が公金チューチューで巻き上げて、国民には2万円しか渡らないという自民党のやり方はもうなくなったので、民は安心して満額を受け取れます。それが政治の信用というものです。お上は間違ったことはなさらぬのです。