人間は眠っている。目覚めエゲイローなければならない。いろんな目覚め方があるが、正しい方法はひとつだけである。それはその目覚め方が正しくなかった愚か者の話である。  

 ある愚か者が巨大な街を訪れたとき、通りにあふれるおびただしい人々の群れを見て、頭が混乱してしまった。これだけ大勢の人々の中にいると、朝、目を覚ましたとき、自分がどこにいるのか分からなくなってしまうかもしれない。そう考えた愚か者は、夜、宿屋で眠りにつくとき、自分を識別する目印として、瓢箪ひょうたんを足首に巻きつけた。

 それを見ていたいたずら好きの男が、愚か者の足から瓢箪ひょうたんをはずし、自分の足にくくりつけて眠りについた。愚か者は目を覚ましたとき、瓢箪ひょうたんを目にして、そこに寝ているのは自分なのだと思った。しかし、次の瞬間、彼は叫びながら、その眠っている男に襲いかかっていった。「おまえが俺なら、いったい俺は何者で、どこにいるのだ!」