皆さんは、TBS系列「ブラックペアン」をご覧になっているでしょうか?
医師から見れば、ツッコミどころ満載です。
手術が上手な医師と下手な医師の実力が極端すぎます。手術中、マスクにまで出血が飛ぶほどのような下手な手技などしません。
まあ、医療系ドラマでは、あえて私もツッコミを入れないようにしていますが、今回一般の方々に、誤解を招く間違いをお知らせする必要があります。
それは「治験」についてです(この先、一部話が脱線しますが)。
癌治療などの新薬を作るには、当然の事ながらほとんど効果がない新薬を作っても意味ありません。そのため効果があるデータを示す必要があります。
確かに以前は、製薬会社にとってデータを有利にするために、医師を高額接待する事は確かによくありました。ですが、1997年の法改正により、厳しく規制されるようになりました。
ドラマでは治験コーディネーターが、教授を毎日のように高額接待しているような場面がありますが、まずあれ自体が時代遅れです。
新薬が発売されると、総合病院では一般の医師向けに「薬品説明会」というものがあります。ですが、医師への接待は1人につき2000円が上限と決められており、「薬品説明会」は製薬会社側が用意した弁当を食べながら説明を受けるのです。
ちなみにあのカリスマ教授、手術は成功しても術後合併症が起きるだろうと予測される手術をさせましたが、現実にはさせません。ドラマでは緊急手術で患者を救っていますが、もし予測できる合併症で死亡したら、訴えられかねません。そうなると、教授としての地位も危なくなります。
尚、第1話での僧帽弁閉鎖不全症の手術後に脾臓を栄養する脾動脈の動脈瘤が破裂した場面がありましたが、脾動脈瘤が事前にわかっていたら、治療の優先順位は血管造影にて、脾動脈瘤をつぶす事が先です(こちらの治療も、侵襲が少ない)。
さて「治験」についてです。
癌治療などのためには、より効果が高く、かつ副作用の少ない治療(新薬)が求められます。その新薬を開発するにあたって、人での効果を確認する必要があります。
あえて悪い表現をすると「人体実験」になります。
ですが、1人でも多くの癌患者を救うために、どうしてもこれを避ける事はできません。そのため、新薬の効果と副作用など詳細に説明し、かつサポートしていくのが「治験コーディネーター」です。
まだ人での効果が確認されていない新薬を使うので、治験に使用する新薬は無料で、通院費と(稀ですが)重篤な有害事象が起きた場合の補償費です。
また、治験への参加は本人の意思に基づくもので、当然拒否する事も可能です。拒否する事で、通常の治療に影響を及ぼす事はありません。
ところが「ブラックペアン」では、治験コーディネーターが患者に治験の負担軽減費として300万円支払う場面がありました。
あれは絶対にウソです!!!
あんないい加減な番組の作り方をして一般の方々が信じるようでは、製薬会社と病院の「癒着」などとエセ医学者から批判されても仕方がありません。
▲出典『治験とは?』
上の図をご覧ください。
治験参加者が参加するのは、「第1相試験」からです。そこに至るまでに、動物実験を繰り返し、効果と副作用が確認されています。
ですから治験中、有害事象(重篤な副作用)が起きる事は滅多にありません。
こうして「第3相試験」まで終了後、エビデンスが確認され、厚労省の非常に厳しい審査があって初めて「新薬」が保険認可されるのです。
これに対して、自由診療で行なわれている保険適応されていない治療は、「治験」を一切省いているだけでなく、医療費を全額患者負担させているのです。
このような者たちは、エビデンスを無視あるいは極端に嫌います。また自由診療に限らず、他の分野でもエビデンス無視・エビデンス嫌いの者たちは、「エビデンスがないといけないのか?」と開き直りつつ、高額なビジネスを目論んでいます。
また、よくネット上で、「●●で癌が消えた!」など、一般人がビックリするような「宣伝記事」を目にします。
デタラメです!!!、顕微鏡では癌が消えても、何年経っても顕微鏡レベルの研究のままで、動物実験ですら結果がでない研究が世界中に山ほどあります。
ネット上でも癌専門の医師たちが、「ブラックピヤン」の「治験」部分には厳しく批判しております。
おそらくTBSも、内容の修正をしてくる事でしょう。
尚、「治験」に関して詳しく知りた方は、次のサイトをご覧ください。
⇒ 『治験特集『国立がん研究センター東病院の治験実施体制』』
あっ、それから竹内涼真くん程のイケメンドクターもいませんからね(*^^)v















