坂口憲二さんの「(特発性)大腿骨頭壊死」:これは心筋梗塞が大腿骨頭に起こったようなものです。 | 総合診療医:誰もがわかりやすく医療を理解する事ができるブログ

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「否定の極論」記事に疲れたあなたへ贈る:「食事」「睡眠」「運動」・・これら「健康の三本柱」をねじ曲げずにポジティブに考えるブログです。

2018年4月1日、俳優の坂口憲二さんが病気の治療に専念するため、無期限に活動を休止すると発表がありました。

この病気とは、「(特発性)大腿骨頭壊死」という病気でした。

  

  

尚、心筋梗塞の場合は、血栓やアテロームなどによる冠状動脈の閉塞が原因、すなわち生活習慣病の延長ですので、大腿骨頭壊死と心筋梗塞を全く同じ扱いにはできません。

  

ただし、壊死(えし)ですので、血流が途絶えてしまう状態は結果としては一緒です。どんな身体の臓器にも血液循環は必要であって、骨も例外ではありません。

  

日本での患者数は1万5千人程度で、30~50代の男性に多く、「難病指定」されています。アルコール多飲(日本酒2合/日以上)やステロイド内服(プレドニゾロン15mg/日以上)が原因の場合もありますが、多くは「特発性」=原因不明です。

  

  

大腿骨頭は上の図のように、2本の動脈が流れてきますが、特に大腿骨の下の方から大腿骨頭に向かって流れてくる大腿深動脈が大切です。この動脈の血流が途絶えると、大腿骨頭が壊死します。

  

ではなぜ坂口憲二さんに、このような病気が発生したのでしょうか?

この病気はあくまで「特発性=原因不明」ですので、この先は私個人の見解になります。

  

  

坂口さんは、肉体派俳優としてもよく知られています。そのために、日頃から、激しいトレーニングを続けていたと思われます。

運動不足はもちろん健康維持にはマイナスですが、逆に過度な運動もマイナスになります。

  

  

「7.1METs」・・・それは1日に7.1km走る量にあたります。

1つの論文をご紹介します。

⇒ 『Increased cardiovascular disease mortality associated with excessive exercise in heart attack survivors.

  

こちらの論文によると、対象期間10.4年間で526例の心血管系の死亡者の内、376例で運動量に関した分析が行なわれました。

その結果、7.1METsの運動量までは心血管系の死亡率のリスクを減らしました。ですが、7.2METsを超えると、死亡率が3.2倍と急上昇する事がわかりました。

  

  

では具体的には、どれくらいの運動がどれくらいのMETs数なのでしょうか?

次のサイトから抜粋します。

⇒ 『運動・生活活動の消費カロリー大研究

  

・ボーリング 3.0

・ウォーキング(速度67m/分、80m/分) 3.0、3.3

・柔軟体操 3.5

・卓球、バレーボール 4.0

・ゴルフ 4.3~4.5

・エアロビクス(弱い~強い衝撃) 5.0~7.0

・スポーツジムの一般的な運動 5.5

・自転車一般、ランニング 8.0

・水泳(ややきついクロール) 8.0

 <単位はいずれもMETs/日>

  

そして、強度が強くなればなるほど、時間が長くなればなるほど、同じ運動でもMETs数は増えます。

  

  

言い方が悪いのですが、マラソンは全身炎症を起こしているようなものです。

だからと言って、マラソンや強度が強い運動を否定しているわけではありません。オリンピックを目指すアスリートたちを否定しているわけでもありません。

  

やり過ぎてしまったら「休む!!」事が大切です。

  

そして、運動に見合った食事も大切です。

筋肉の維持・増強にはタンパク質が大切です。また運動により筋肉でブドウ糖が消費されるので、体力の維持・増強さらにタンパク質を吸収させやすくするには、運動に見合った糖質摂取も大切です。

食事摂取量が不足すると、運動により筋肉のタンパク質が消費されるので、逆効果です。

  

尚、子供の場合は抗酸化力(免疫力)が強いので、激しい運動をしても大きな問題はありません。もちろん、食事が大切なのは言うまでもありませんが。

  

  

また自分に見合った運動負荷は、上の表のように心拍数が参考になります(マフェトン理論の180公式)。

目安としては、少々息がハーハーする程度がいいでしょう。

  

坂口憲二さんは、もちろん運動に見合ったガソリン補給(食事、サプリなど)をしていたと思います。ですが、あまりにも激しすぎると体内に「活性酸素」が増え、却ってマイナスです。

難病情報センター』のホームページによると、この病気は「活性酸素」→「酸化ストレス」も原因の1つと考えられています。

もっとも「酸化ストレス」は様々な病気の原因になり得ます。坂口さんの場合は「大腿骨頭壊死」でしたが、もしかしたら心臓病で急死していたかもしれません。また、他のアスリートの中には心臓病は発症しなくても、大腿骨頭壊死を起こした人がいるかもしれません。

  

心と身体の健康維持のため、日頃から「適度な運動」をされる事をお勧めします。

尚、下の表は厚労省が推進している「健康づくりのための身体活動基準2013」です。参考までにご覧ください(拡大図はpdfから)。

  

▲厚生労働省『健康づくりのための身体活動基準2013 pdf

    

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