前回、「問題集は、最初は解くものだと思わないでください。読み物だと思ってください。問題を読んだら答えを考えるのではなく、そのまま解説を読んでください。」とお伝えしました。
 一つの問題に執着してしまうと、全く前に進まなくなってしまいます。「ひさぽん」は、その経験をしてしまって反省しまくりです。
 ここからは、「ひさぽん」の経験です。「憲法」や「行政法」の判例の問題を解いて、テキストで判例の部分を勉強すると
 「この判例の結論、なんでこんなことになるねん!」
 「こんな判決をする判事おかしいのと違うか?」
 「なんでこんな判決したのか、調べてみよう。」
なんてことになってしまうのです。
 でも、こんな学問的な追及は、行政書士試験の受験生の「ひさぽん」には不必要。当たり前ですが、判例に納得いこうと、いくまいと、試験問題の解答は判例に従って導かれます。どんなに判例が気に入らなくても、正解するためには判例の内容を正確に覚えることが必要なのです。だから、行政書士試験に合格するまでは、試験に特化した勉強をしましょう。そして、合格したときは、自分が気になっていた判例の内容を学問として追及してみてもよいと思います。

 「ひさぽん」は、ほかにもやらかしをしてしまったことがあります。民法の家族法は、とても身近なお話で気になるところです。「親子関係」に関する問題で沼にはまってしまったことがあります。
 「親子関係」の問題は、「嫡出子」・「非嫡出子」の推定や親子関係を争う手段として「嫡出否認の訴え」・「親子関係不存在の確認の訴え」・「父を定める訴え」などについて問われる問題が出題されることがあります。
 本当は、その問題をお見せしたいのですが、平成12年度以降実施された行政書士試験の問題は、一般財団法人行政書士試験研究センターが作成したものであり、その著作権は同センターに帰属しています。そのため、行政書士試験問題の書籍・ホームページ等への登載は、同センターの許諾が必要となるため、掲載できません。対象の問題をお伝えしますので、一度、検索して探してみてください。問題は、「平成22年度行政書士試験 問題34」です。
 この問題は、A男、B女、B女が出産したCの3人が登場する問題です。夫婦関係・親子関係が複雑に描かれている問題です。「五肢択一」問題です。

 この問題の1つ目の問いは、A男とB女が内縁関係のときに生まれたCの話です。この問題はたいしてはまらず、すっと答えが出ました。一応、続きを話すと、A男はCの出生届を出しちゃったのです。出生届は、婚姻している男女から生まれた子供の場合に提出する書類です。婚姻している男女から生まれた子供は「嫡出子」といい、婚姻していない男女から生まれた子供を「非嫡出子」といいます。「非嫡出子」の場合は、民法779条によるところ「認知」により親子関係が成立します。ちなみに、「非嫡出子」について出生届を出しちゃった場合、判例では、これを「認知」としての効力があると認めています。ということで、問題を見て解いてみてください。

 2つ目の問いです。この問題に沼ってしまいました。内容について説明します。B女がA男と内縁関係の時にCを身ごもったので、A男とB女は婚姻しました。ところが婚姻から150日を経過してCが生まれたのですが、A男がCとの間で父子関係かがないと争うことになるのです。質問は、この場合、争うには「親子関係不存在確認の訴え」で正しいのか?というものです。本来は、これが正しいのか、誤っているのかというところを考えるのですが、「ひさぽん」はそこに目がいきません。
 「A男が内縁の妻と結婚までしたのは自分の子供ができたと思ったからだろうけど、Cが生まれた途端、父子関係がないことを争うって何があったのだろう?」
 って考えてしまったのです。こうなると、問題の問いと全く関係ない方向への疑問になっています。この後、
 「B女は浮気をしていて、ほかの男の子供ができたのに、A男に「あなたの子供よ!」とか言ってだまして結婚したのかな?」
 「いや、A男がまだ若すぎて子供を含めて養っていくことが怖くなって、急に逃げ出したのかな?」
 「A男が黙ってCの検体を採取してDNA鑑定に出してみたら、親子関係がないと鑑定が出たのかな?」
 とか、いろんなことを考えてしまいました。しかし、こんなことがわかることは問題のどこにも載っていません。わかるわけはないのですが、想像ばかりが広がっていきます。おかげでとんでもない時間想像してしまい、その間、勉強の手が止まってしまいました。結局わからずじまいですが、気になって仕方ありません。ちなみに、婚姻成立から200日を経過した後に生まれた子供が「嫡出子」になります。150日しか経過していませんので「非嫡出子」です。ということで、問題を見て解いてみてください。



 3つ目の問いです。この問いも沼ってしまいました。内容について説明します。B女は、A男と離婚しました。離婚後、250日たったときにB女からCが出生しました。これを読んだとき、
 「子供が妊娠から10か月(300日)で生まれるのだから、離婚する前は仲が良かったんだな。」
って思いました。ところが、文書をよく読むと、A男は離婚の1年以上前から刑務所に収容されていたのです。問題は、この場合、A男がCとの父子関係を争う方法は「摘出否認の訴え」で正しいか?というものです。しかし、今回も、これが正しいのか、誤っているのかというところを考えなければいけないのですが、「ひさぽん」はそこに目がいきません。
 「A男が刑務所に入っている間に、子供ができたということは、B女は不倫していたんだな。」
 「離婚したのは、B女の妊娠がわかったからなのかな?」
 「そもそも、A男は何をして刑務所に入っているのかな?」
 「刑務所に入ってからも、B女は離婚していなかったのだから、仲が悪いわけではなかったのかな?」
とか、いろんなことを考えてしまいました。しかし、やっぱりこんなことがわかることは問題のどこにも載っていません。こうして無駄な時間を過ごしてしまいました。ちなみに、婚姻解消後300日内に生まれた子は婚姻中に妊娠した子供として、「嫡出子」と推定されます。しかし、A男が離婚の1年以上前から刑務所に入っていたのであれば、A男とB女の間に子供ができるはずがありません。この場合どうなるでしょう。ということで、問題を見て解いてみてください。



 あと、問いが2つありますが、ここまででストップです。「ひさぽん」は、このように問題の解答と関係ない人間模様に振りまわされ、この問題1問に結構長い時間を割いてしまいました。しかも、ここまで詳細に考え込んでしまったせいか、問いで何を聞かれているのかを忘れてしまう始末でした。

 ここでお伝えしたいのは、「基本問題集」をするときは、正解についてどのように答えを導き出すのかに集中して勉強してくださいということです。正解とは関係ないことについて気になり始めると、結局、自分自身の考える量を増やしていて、結果として自分自身を苦しめることになるからです。
 「基本問題集」は、何度も繰り返して問題を解き、解説を読み直すことで記憶を定着させるためのものです。だから、たとえ、気になったことがあっても、問題を解いて前に進んでください。今やったことは、振り返らないで進んでください。今やったことは、繰り返しの時にまた見ることができます。前に進んで、何度も何度も繰り返してください。

 次は、これまで触れてこなかった「一般知識」ですが、「ひさぽん」がどのように対応してきたのかを一緒に確認してみましょう。