忙しい、ああ忙しい、忙しい。www
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携帯から電話を掛けようと「な」行までカーソルを運んだところで、俺は思い出した。SOS団が発足して間もないころ、俺は人間と接触するために作られたアンドロイドに殺されかけた、その時助けてくれたのは他でもない長門である。
何も助けられたのはその時ばかりではない、コンピ研の部長氏が変身したカマドウマ事件のときも、俺が誤ってハルヒを怒らせ閉鎖空間を作らせてしまったときも、過去に行って戻れなくなったときも、2つの歴史を修正して1つにしてくれたのも、雪山で天蓋ナンタラの作り出した館に閉じ込められたときも、すべてあの文芸部員のおかげ以外の何ものでもないのである。
それに、お礼をするために出かけたのに逆に迷惑を掛けてしまったこともあった、あの時は古泉にも悪いことをした、ってこの話したことあったっけ、しまったなその話を先にしておくべきだった……後日談と言うことで勘弁願おう。
これ以上迷惑は掛けたくない、そう思うのが必然だろう、もちろん掛けたくて掛けてるんじゃないんだ、SOS団というグループ上しょうがないっちゃあしょうがない。
でも今回こそ、今回こそは俺だけで解決したい、本当はこの朝比奈さんにもご足労を掛けさせたくなかった、しかし未来語が読めない俺では到底代役はできそうにない。
電話するのをためらっている俺の心を朝比奈さんが思考の海から現実世界へと引き戻す、緊迫した表情がさらに俺の不安を駆り立てる、どちらにせよ時間は迫っている行動するならば早く動いた方がいいが、もう策がない。
ハルヒに会って、直で足止めしても所詮足止めにしかならない、時間稼ぎ、気休め程度である。有効な打開策が見出せないのである。
しかし、俺はもう心に決めている、迷惑は掛けないと……
ピリリリ、ピリリリ……
俺の携帯電話が俺の不安を駆り立てるように怪しく鳴る、俺はおもむろに電話に出る、
「もしもし、またハルヒか?」
「……」
返事がない、こりゃまずいマジで機嫌を損ねたか、それともまさか俺たちとは別の場所からこの映画館の広告を見つけ愕然としながら電話を掛けているのか、どちらにせよ最悪なパターン以外想定できないケースだ。
しかし、いきなり世界が暗転するような兆候はない、何かが起こった形跡もこの俺が見渡す限りない、変わっていくのは空の色のみだ。
「……」
「ハルヒ、すまんが何のようなんだ、簡潔に何があったかお教え願いたいんだが」
「あなたは何か勘違いをしている」
!!!
言葉が出ないとはこのことだ、真面目に言葉を失った、何て言っていいのか分からずとりあえず俺は、
「まさかとは思うが長門か?」
「そう……」
「すまない画面を見ていなかった、てっきりまたハルヒかと思ってて、見事に勘違いしちまったな」
「それだけではない」
へ?それだけじゃないってどういうことだ、まさかこの映画館が最後じゃないとか、というか長門はすでにこの話を分かっているという前提で話していいんだよな、俺の勘でしかないがおそらく。
「確かに今回の件については認識していた、しかしそのことではない」
じゃあ、何が違うんだ、俺は何を見落としているんだ。すでに手遅れなんてそんなオチはどこにも用意されてなさそうなのでそんなことはないのだろうが。
「私にとって迷惑ではないということ」
なるほど、なら頼んでも大丈夫……なんてそんな緩い決意はもともと持ち合わせていない、俺の決意はステンレス鋼より固くたとえ酸性雨であっても変化しないのだ。
「それは、俺が決めたことだ、今回の件について長門には頼らないと心に誓った、それだけのことだ。今まで俺はちょっとお前に頼りすぎていた、甘えていたんだと思うんだ。俺は今後なるべく長門にも、朝比奈さんにも、古泉にも、機関とやらにも、鶴屋さんやそのほかの人にもなるべく世話にならないと決めたんだ。特に長門、お前には助けられっぱなしだ、俺はお前に対してプラスなことをしてやれないと思う、だからせめてマイナス要因だけでもいいから減らそうと俺なりに努力しているんだ。この前みたいなことにはなって欲しくないんだ……」
「あなたがそのように思い留まることは何もない、あなたという個体の影響で涼宮ハルヒの能力は平衡を保っている、観察対象がそのような状態を保つことはこちらにとっても有意義なこと、それができるのはあなたしかいな……あなたにしかできないことつまりそれがこの時点もしくは未来的な視点から見た役割、同じように私も観察対象の能力の暴走および干渉を抑え、打ち消すという義務要素を含んだ一役割を保持している。つまりあなたが役割外の任務に当たった場合、該当人物にアクションを求めるのは正当な行為、むしろ推奨される行動。」
少しの空白の時間の後、長門は言い加えのようなニュアンスで言った、
「あなたはあなたでいればいい……」
つまり一人々々には役割があるからそれも忠実にこなせ、自分の役割に合わないものは適当な他者に助けをもとめるべき、そういうことであろう。
しかし、俺の意思は議席の過半数を占めた国会の意見の様なものでなかなか覆されるようなことはないと思われた。
「それではわたしの気がすまない……そういうこと……」
記憶力がいいのは知りたくなくても知らされていたが、このフレーズまで覚えているとはな。
オウム返しだぜまったく、あん時の台詞をそのままそっくり返されるとは思ってもみなかった、俺が言った言葉で反論されてんだしてやられたね、もう異議はないぜ。
「すまないな、というのも変か……じゃあ遠慮しなくてもいいってわけか。いつもどうり頼むぜ、長門」
「了解した」
という声とともに電話越しだがまたいつもの呪文が聞こえていた、RPGなら上から雷でも降ってきそうなくらいそりゃまあ本格的な呪文だ。
「不可視化フィールド展開、分子構造変化アルゴリズム起動、色素付着因子形成……」
電話を耳に当てながら俺は先ほどの気違い場違い映画宣伝ポスターを見上げた、それはみるみるうちに見えなくなり気が付いたときには普通の映画のポスターになっていた。
朝比奈係長(大)、やっと終わりました、(ほぼサービス残業の)長い長い一日がやっと終わりました。の前にとりあえず役割だとはいえお礼くらいは言っておこう、
「ありがとな、次こそはなんも起こさずにして、本買ったり中華料理のバイキングとか連れていったりしてやるよ」
「……そう」
じゃあな、といい俺は携帯を切る。
「終わりましたね、朝比奈さん。」
俺の声を聞いて振り返った彼女の顔はまだ晴れてはいなかった、
「また……最後の最後……重要なとこで役に立てないなんて……わたし……わたし……」
ああ、そんな悲しそうな、泣きそうな顔をしないでください、こっちまで泣けてくるじゃないですか。
おっと、この際だから朝比奈さんにも説明してあげえよう、役割分担の大切さを。まあ、長門からの請け売りだがな。
五分もしないうちに朝比奈さんは元の明るさを取り戻した、それと同時にその笑顔パワーで俺の疲れも少し和らいでいった。
至福の時間である、これが報酬ならばサービス残業などお茶の子さいさいである。
うーん、朝比奈さんの笑顔……プライスレス。
ピリリリ……
今度はなんだ、どうせ家からだろうと高をくくっていた俺は、まだこの事件が終結していないことに気づく。
メールの送り主は何を隠そう、みんな大嫌いハルヒである、そういえばほのめかしてそのままにしていたな、やべえどうしよう。
とここで俺は妙案を思いついた、俺は朝比奈さんからあるものを(本人は一応処分したがっていたが)貰い、急いでそこらの百均で紙袋を買いそれを入れ、いわずと知れた駅前の広場のベンチの下に紙袋を置いてメールを急いで返信した。
『桜並木のどっかのベンチの下に面白いものがあるとおもうぜ。』
何を入れたかって、さあなんでしょう?(ヒントは「ディスク」かな。)
そしてその作業を終えた俺と朝比奈さんは駅の反対側の改札に走った、ハルヒに見つかっちゃやばいからな。
ここで気を抜くと、古泉のスマイルが原型をとどめないくらいマジで大変なことになりかねないし、古泉の前に俺と朝比奈さんがまたどのような目に合わされるか分かったもんじゃない。
「今日はありがとうございました、また今日も大変なことになっちゃいましたね。この仕事、本当は一人でやったほうがいいのに……キョンくんに手伝わせちゃってごめんなさい。」
「その言葉は不要ですよ朝比奈さん、それが俺の役割、あなたの役割なんですから。まあ、長門には日を改めて礼をすることにしましょう。」
「そ、そうですね……」
やっぱり長門恐怖症気味の朝比奈先輩であった。
その後ハルヒからメールがあったが、あえて書く必要もないだろう、文字と労力の無駄以外の何ものにもならないぜ。
そういう話は明日、学校ですることにしようと思い俺はメールに「この話はまた明日な」とだけ打ち、今日一日強力な栄養剤Gを貰いつつもすでに限界を超えていたであろう俺の体と頭は、飯を食い風呂を出ると俺は予習の予の字が出る前に夢の旅へと出発した、夢の内容は朝になったときには覚えちゃいないが、多分朝比奈さんいる夢であろう昨日あんなに網膜に焼き付けたんだから出ないわけがない。俺は学校に行くという行為に嫌気が差しているであろう心と頭を何とか士気付ようとするが、結局無駄。いつのもように妹にたたき起こされた。
やっぱり朝比奈さんがらみじゃないと体は自然と重くなるようだ、心もその行動を何の障壁もなく受け入れる、何でもいいからとりあえず朝飯食って学校に行こう。