今年は世界的に選挙が集中している年と言われています。

イギリス、フランスの政治の動きも相当インパクトありましたが、アメリカの大統領選挙、そして今週自民党総裁選挙。

これがもちろん一番の関心事です。


世界の政治経済の動きは本当に興味深いです。




今回は、チリ在住約20年の日本人から見た個人的な、政治家についての意見です。


政治と歴史の話に興味の無い方はスルーでお願いします。🙏





話の主人公は南米チリの大統領、ガブリエル・ボリッチ、38歳。

2011年、「大学無償化」など教育改革を訴える学生デモが激化しました。大学は何ヶ月も占拠により封鎖され、デモは連日首都の路上を埋め尽くすほどの社会現象となりました。



(教育省へ続く道路を埋め尽くす群衆)

 その中で学生連盟のリーダーたちは、学生から支持を集め、教育大臣や当時のピニエラ大統領と直にテーブルを囲んで話し合う機会が何度もあり、連日マスコミは彼らの姿を追いました。

その学生リーダーで頭角を現したのが、現大統領、ボリッチでした。

 ほどなく、彼ら学生リーダーは下院議員に立候補。ボリッチは盟友ジャクソン、女性リーダーのバジェホとカリオラと4人で下院議員に当選。


路上デモ活動から国会への飛勇を果たしたのです。


マスコミは時代の寵児のようにもてはやしました。



(右がボリッチ、左がジャクソン、初の国会議員として議会に入ったのが今から10年以上前)


ボリッチら4人は社会人経験ゼロ。ボリッチもチリ大学法学部を修了はしたものの、弁護士試験は失敗しています。新卒あがりではしゃいだ新米国会議員となり、ラフな服装で登壇し、服装に批判を受けると髪を刈り上げて見せたり、タトゥーを入れたり、古参国会議員からは目の敵にされたこともありました。


ボリッチはデモの街宣活動で培った話術がたくみで、常に左派の新しい若手リーダーというポジションを取り続けました。知名度は抜群ですから、常に体制に批判的で攻撃的な物言いで若い人の支持を集めたのです。


そして高齢化していた共産主義、社会主義政党に若手の彼らが参入したことで、左派支持層が国民にさらに広まりました。


左派連合から大統領候補を選ぶ討論会などで徐々に能力の差を見せつけ、予備選挙では右派候補のカスト候補より得票差では負けていましたが、最終的な決選投票でカスト候補を引き離し、大統領に選出されました。それが2022年のこと。





(ボリッチ、勝利を確信)


彼に投票した人は歓喜しました。

「若い大統領でチリはもっと公正で民主的な国に変わる!」

期待に胸をふくらませ、目を輝かして喜んでいました。

反対に私はガックリしていました。

ボリッチを新世代の救国のリーダーのようにもてはやすマスコミにすっかり嫌気がさしていた私は、テレビニュースを見るのをボリッチ当選の日から止めました。

左派大統領の登場で絶対に経済は悪化するに違いないと思いましたが、やはり推測どおりボリッチ就任後から経済と治安が悪化し、社会は不安定化しました。

移民排斥を述べた右派と違い、移民に寛容だった左派政権のため、経験したこともない新手の犯罪と麻薬と武器と売春がセットで押し寄せ、商店は6時には店を締め、夜の外出を控えるほどに治安は悪化しました。


警察権力に批判的だったボリッチは警察を使う事に躊躇いを見せ、犯罪は増加しました。

あれほど人々を高揚させたボリッチ大統領の支持率はすぐに下降し支持率は3割ほどで低迷。一時期はたった26%の支持。不支持は6割を常に維持。


(ボリッチは出てけ、今すぐにだ!と掲げる右派市民)



有権者はボリッチを罵りました。

式典会場で大統領が登場してもブーイングをし、罵声を浴びせました。

ネット上では彼を揶揄するミームが溢れ、失言や失敗はリール動画で垂れ流されました。



堕ちた「救国のヒーロー」、そういう感じすらしました。


(続く)