チリに来て間もない頃、面食らった会話があります。
私が日本人だと分かるとチリ人がニコニコ親しげに
「あら!ワタシ、スッチー大好きなの」
と言われて、こちらは
「え? スッチーって何ですか?」
と答えると、
「あらやだ! 日本人なのにスッチー知らないの!? スチよ、スッチィ!」
「ええ、で、そのスッチが分からないんですけど〜」
(まさかキャビンアテンダントのことを以前はスチュワーデス、スッチーと言ってた、それじゃあ無いよな、いくらなんでも…)
と自分の中のスペイン語語彙を必死で頭の中で探っていると
「もう!どうして? ほらあなた達の国の食べ物でしょうが!米を使ってて巻いてあって…」
そこでやっと私も
「ああ〜あ、寿司ね、オスシね!」
そうです。チリ人はshiと書かれている発音をchiで発音しがちなのです。
寿司がスチ、iを強調して、スッチーになるという訳です。
このシがチになる発音をしがちなチリ人と日本人の会話の悲劇と喜劇はあとを絶ちませんよ。
昭和に大ヒットしたNHKの朝の連続テレビ小説の名作「おしん」が…。
日本の高速鉄道「新幹線」が…。
もう書く必要もありませんわね。
よく笑わせてもらいました。
今日、いつものように車を運転しているときにラジオを聞いていたら、今日は国際寿司デーだそうで、ラジオのパーソナリティも「スッチ〜」を連呼してました。
それによると
「ええっと、スッチーの起源は紀元前4世紀、魚を内陸に運ぶことを目的に中国で生まれぇ〜、それが19世紀の東京で、白米を炊いて巻いたものが庶民に食べられるようになったんですって〜」
って言ってました。
ホント!? 初耳だけど。
ま、「なれずし」が起源って言いたいのは分かるけど…。寿司って日本語なんすけど。
まあどーでも良いけど、こちらのスッチーは、アメリカのカリフォルニアロールが起源のようで、スモークサーモンとクリームチーズ、アボガドという組み合わせです。中にはエシャロットが入りニンニク臭い。日本人の多くはチリのスッチーは寿司とは似て非なるものだと言いますね。
昔、チリ人の友達の家によばれた際に
「貴女のためにスッチー作ったのよ!」と勧められましたが。
…うっく…飲み込むの必死でした。
ベチャベチャで酸っぱい柔らかいご飯にマッシュされたアボガドが中に巻かれた代物で…。
正直、罰ゲームのようでしたわ。
それ以来、他所では食べませんが、チリ人の寿司好きは本当で、地方都市でも寿司レストランはあります。
そして、巻き寿司は海苔ではなく、パン粉で揚げるハンドロールなるものも人気があるのだとか…。
もうこうなるとなんなのか…。
きりたんぽ?。
私は星空観察のお客様などによくお寿司を出しましたが、シンプルにシーチキンにマヨネーズあえとレタス、もしくはキュウリ。
ビーガンでツナマヨが駄目な方には脱脂大豆のフレークを甘辛く煮てキュウリとあわせます。
そんなシンプルな巻き寿司ですが、とても喜ばれます。
「売ってるスッチーは好きになれなかったけど、貴女の作ったのはとっても美味しいよ」と喜んでくださる方も多くて嬉しかったです。
寿司が世界的に人気があるのは嬉しいことですが、あんまりその国独自の味に変わりすぎてしまうのも、ちょっと複雑な気持ちになりますね。
ただ、最近は海苔の値段が高騰しすぎで、いい品質の海苔は10枚1000円近くもします。
海苔巻きおにぎりも、寿司も私には手の届かない高級料理になりそうで、お客様に出すことも難しい物価高に苦しめられています。