(昨日のブログからの続きです)



翌朝日曜日。

娘は「試合に行きたくない」とボソッと言いました。


試合の後に色々話し合ったけれど、気持ちが一晩たって、さらにネガティブに傾いていたようです。




普段、柔道をしろ!と命令することを絶対にしないグスタボがキッと声を荒げて言い返しました。

「もしどうしても行かないというなら今この場で柔道を辞めろ。今日行かなかったらお前は負け犬だ。負け犬根性を引きずって生きていくことになるぞ。一日ベッドに寝っ転がってスマホをいじってクヨクヨするだけだ。行け!自分の汚名を晴らせ!、負け犬の汚名を他の奴らに付けさせてどうする!?」



普段気の強い娘でさえ、父であり監督であるグスタボの容赦ない言葉に言い返すことも出来ず、無言のまま車に乗り込みました。

会場に着くと試合はすでに始まっていました。




昨日無敗のアマリアちゃんが負けたり、良いとこの無かったマルティンくんが良い技で勝ったり。

ルーカスくんは昨日より動きがよくなり2勝1敗。もうニコニコでした。



そして我が娘。

最初の試合。

昨日と全く同じ。

何も出来ず、すぐに投げられて一本負け。




あーあ、ヤッパリ駄目か…。

ところが、それで吹っ切れたのでしょうか。


その後の試合ではかつてのファイティングスピリットが戻ったのか予想外の粘りを見せて2勝出来たのです。

顔もすっかり表情が変わり、目がキラキラし、頬を染め高揚していました。

グスタボも娘を抱き締め
「な?来て良かっただろ?あのままだったら駄目だったんだ、これがお前なんだよ、決して弱くないんだ、僕の可愛い娘だよ」

やっと自分への信頼と家族への信頼が彼女に戻りました。

私は柔道どころか全くスポーツや武道を知らない人間なので、柔道をやっている娘を凄いなと思う気持ちと可哀想に思う過保護な親の面がどうしても出そうになります。

おまけに柔道は、速さや高さを競う陸上競技とは違い怪我の心配もあります。可愛い娘が怪我しないか、いつも試合では心配です。


今回は柔道隊員の彼女にも精神面のサポートで随分とお世話になりました。

柔道の先生は、競技者として怪我や葛藤を経験したからこそ語れる言葉があり、本当にそれには感心させられます。


娘は監督である父の言葉と柔道経験豊富な先生の言葉によって負け犬で終わることを自分の力ではねのけたのです。



武道やスポーツをやる意味は、人生で起こりうる困難や恐怖や不安にどう立ち向かうか、そのための鍛錬なんでしょうね。


これは私などでは絶対に教えられない領域です。


自分で掴み取るしかない勝利。




そして表彰台に。

娘の嬉しそうな顔といったらありません!





チリでは、大概の少年らの柔道大会では順位に関わらず、試合参加者皆に同じ色のメダルが授与されます。
これが土曜日、惨敗の2敗で受け取ったメダル。



こちらが日曜日、2勝1敗で掴んだ嬉しいメダル。



それが真ん中で組み合わせ一対の絵になっているんですね。

Higuera(イゲラ)村の風物を盛り込んだ素敵なデザインです。






土曜日は、2日続けての大会なんて、主催者の村の政治利用のためでしかないから、参加者をバカにしてんの?と腹を立てていた私ですが、ボロ負けした娘が、翌日柔道の試合勘を取り戻せたことを思うと、結果的にはこの非常識な2日続きの大会に感謝することになりました。

災い転じて福となす、

メダルと一緒に参加者にプレゼントされたペンギンのぬいぐるみに喜ぶ娘に、グスタボも私もホッと胸を撫でおろし、長かった週末が終わりました。