さて、昨日のブログの続きです。

南米チリの25万人都市でのスタジオジブリのオーケストラとコーラスの開演が近づいていました。






子供達には着物と浴衣を着付け、グスタボは柔道着で、トトロと一緒に記念撮影。


その後、柔道隊員の彼女に着物を着付けました。

二人で会場内を着物で歩いているとさすがに目立ちましたね。








さて、会場はだんだん薄暗くなってきて、開演前の場つなぎとしてスタッフなどにインタビューも始まりました。



そして私と柔道隊員も名前を呼ばれました。
拍手を受けながら、観客席に向けて手を振りながら司会者のところまでスタスタ歩きました。



主催者発表によると観衆は3500人。

スタジアムから私達を見下ろしていました。



さすがに緊張もしましたが、それよりも正直言って「なんだか気持ちイイ〜」って高揚感って感じでしたね。



これで少し度胸がついて、いよいよ本番がやってきました。





まず私からの挨拶、それから柔道隊員の挨拶。

彼女の言葉はチリ人的にはかなりグッとくる内容だったと思います。彼女は日本から一番遠い国、その国の人が日本に来るのが難しいだろうから自分から柔道の普及に行こうとチリを選んだのだと。


柔道はスポーツとしてだけではなく、周りの人への尊敬を保つことそれが柔道の真髄であり、そういう人こそ柔道をするに値する人だという彼女の言葉を聞き、本当に素晴らしい方が私達と2年を過ごしてくださるんだ、と胸が熱くなりました。





そして最後に私達は、この詩の朗読をしました。


これがチリ人の聴衆に聴いて欲しいと私が思った詩です。




生きる
谷川俊太郎


生きているということ
いま生きているということ
それはのどがかわくということ
木もれ陽がまぶしいということ
ふっと或るメロディを思い出すということ
くしゃみすること
あなたと手をつなぐこと

生きているということ
いま生きているということ
それはミニスカート
それはプラネタリウム
それはヨハン・シュトラウス
それはピカソ
それはアルプス
すべての美しいものに出会うということ
そして
かくされた悪を注意深くこばむこと

生きているということ
いま生きているということ
泣けるということ
笑えるということ
怒れるということ
自由ということ

生きているということ
いま生きているということ
いま遠くで犬が吠えるということ
いま地球が廻っているということ
いまどこかで産声があがるということ
いまどこかで兵士が傷つくということ
いまぶらんこがゆれているということ
いまいまが過ぎてゆくこと

生きているということ
いま生きているということ
鳥ははばたくということ
海はとどろくということ
かたつむりははうということ
人は愛するということ
あなたの手のぬくみ
いのちということ




大きな拍手をいただきました。
後からも、詩がとても良かったと声をかけていただきました。



チリは、パブロ・ネルーダとガブリエラ・ミストラルという二人のノーベル文学賞を受賞した詩人を生んだ国です。


詩を愛する気質を持った人も多いのです。

グスタボの薦めどおり、詩を読んで良かったです。






コンサートは本当に素晴らしかったです。

会場の正面スクリーンにはジブリ作品が音楽に合う映像で流れ、小さな両脇のスクリーンではオーケストラや指揮者の姿が映し出されていました。





ジブリ作品全て見ている娘も息子も感動して静かにひっそりと涙をこぼしていました。



風の谷のナウシカ
天空の城ラピュタ
魔女の宅急便
もののけ姫
崖の上のポニョ
千と千尋の神隠し
紅の豚
ハウルの動く城
となりのトトロ


約2時間。もっとずっと聴いていたいと感じました。どれもこれも本当に素敵で、ちょっと自画自賛なんですが、この日思いついて読んだ谷川俊太郎さんの「生きる」という詩のメッセージと、ジブリ作品のメッセージが重なっている気がしました。


こんな素晴らしいコンサートに招待していただき、おまけに大観衆の前で挨拶と詩の朗読までさせてもらえる機会を得られ、本当に私達は幸運だったと主催者に感謝しながら、無事に大役を果たせた素敵な夜は終わりました。








さて、その後。

日本では新年から震災に見舞われ、本当になんともいたたまれない気持ちで過ごして居ます。家族や大切な方を亡くした方々、避難所生活を強いられている方々。寒さに震え、いきなり不便な環境に陥った方々。


東日本大震災の時は、チリの自宅でNHKのニュースを見ながら毎日のように泣いて過ごしました。こんなことが起きていいものか、と。泣いてどうなるわけでもないのだけれど、まだ1歳になったばかりの娘を抱いてどうしようもなく泣けました。


容赦なく何もかも奪う天災と、それに輪をかけて怒りさえ感じる人災の混じり合ったやるせなさ。


まるで大スクリーンで見たジブリ作品で、逃げ惑い怯え混乱する市民のように、私達はこういう災害の前に無力で、この世に神も仏もあったもんじゃない!と呪わずには居られなくなります。





南米では今は真夏。

コロナ禍で縮小していたイベントも復活し、楽しい年越しを過ごしましたが、年始の日本の震災を心配して声をかけてくださるチリ人もいます。



日本から17000km遠いチリでも、日本の文化や日本人をリスペクトしてくださっている方達も本当に多くいます。


そんなこと言っても、今苦しみと戦っている人には何も力にもならないとは思いますが、一人じゃない、と思っていただけ、明日に向かうエネルギーが少しでも湧いてくることを願って、年末のジブリコンサートについてブログに書きました。


遠い空の下から。

被災地の復興と人々の心の平安を祈っています。