医科歯科連携 | 在宅医療の現場から〜若手在宅医の奮闘記〜

在宅医療の現場から〜若手在宅医の奮闘記〜

東京都足立区の強化型在宅療養支援診療所の久光クリニックのブログです

私が在宅医療を提供するうえで、大事にしていること

 

その中の一つに食事があります。

 

 

おいしいものを食べること

 

好きなものを食べること

 

できる限り最期まで食べてもらうことを

 

個人的には重視しています。 

 

末期癌の方でも、非癌の終末期患者さんでも

 

意外と亡くなる直前まで少量の経口摂取は可能です。

 

 

 

医者はリスク回避を重視するあまり

 

安易に禁食指示をだしてしまうことがあります。

 

過去の自分を振り返っても、心当たりがないわけではありません。

 

肺炎治療中など、もちろん禁食にせざるをえない局面はあります。

 

しかしながら

 

漫然と禁食を継続しているうちに

 

肺炎は治ったけれど、

 

ごはんはたべれません・・・

 

なんていうケースも多々あるのです。

 

できる限り早期に経口摂取を再開すること

 

極力完全な禁食にはしないこと

 

そういったことを常に頭に置きながら

 

治療にあたる必要があると思います。

 

 

 

病院入院中に食事をとれなくなり

 

胃瘻や中心静脈栄養の状態で退院してくるケースがあります。

 

また、家族が胃瘻増設を希望せず

 

とりあえず点滴を継続しながら退院というケースもあります。

 

一度は経口摂取はもう無理と判断され

 

胃瘻をすすめられたり、実際に増設されたりしたケースでも

 

在宅で丁寧に嚥下リハビリをすすめると

 

あれよあれよと食事がとれるようになることもあります。

 

とっても不思議です。

 

個人的な見解ですが、病院では

 

低活動性のせん妄状態や

 

抑うつ気分

 

意欲の低下

 

そういった背景から経口摂取がすすまない

 

そして

 

それに対して有効な介入が少ない

 

ということが大きな要因にあると考えています。

 

自宅や介護施設に帰ってくると、

 

あたたかい空気感、声掛け、慣れた生活環境

 

そういった環境の中で

 

意識状態や意欲の改善が得られると思います。

 

忙しい急性期の病院では

 

誰かが甲斐甲斐しく食事介助をしたり

 

しつこく声掛けしたり

 

そういったことは難しいのが現実かと思います。

 

専門のリハビリスタッフはいても

 

決められたリハビリの時間以外はぽつんと病室に。

 

意思疎通がむずかしい、指示に従えないから

 

リハビリは中止・・・

 

ということも多々あるかと思います。

 

 

 

個人的には、私の担当する患者さんに関しては

 

食事がまともにとれてなくてもいいので

 

さっさと退院させてほしいと思っています。

 

だらだら点滴しながら引き延ばしても

 

あまり変化も起きないでしょうし、廃用(機能の衰退)もどんどん進みます。

 

嚥下機能だけでなくその他の身体機能も低下する可能性があります。

 

採血で軽度の炎症反応が残っているから退院させられないといって

 

抗生剤を続けているケースもあります。

 

病院の担当医は、「完全に治してからでないと」と、

 

良かれと思ってやっていただいているのかと思いますが

 

抗生剤点滴は在宅でもできますので

 

ある程度重い病状から回復すれば

 

在宅で治療を引き継ぐことは可能です。

 

あくまで個人的な見解ですが

 

嚥下リハビリは

 

在宅での方が回復が早いと思っています。

 

もちろん、協力的な家族

 

熟練したケアスタッフ

 

適切な歯科医の介入

 

そして、リスクをのみこむ在宅医のちょっとした勇気

 

が必要ですが。

 

 

 

もちろんすべてのケースで食事がとれるわけでもなく

 

またどんな環境にいるかでも回復するかどうかは変わります。

 

たとえ回復しなくても

 

そこで回復にむけて動くプロセス

 

そして

 

患者さんに寄りそった時間

 

そういったことも大事かと思います。

 

 

 

在宅医療、介護の現場において、

 

医科と歯科の連携というのは本当に大事です。

 

しかしながら

 

医科と歯科が密接に連携しているケースは

 

意外と少ないものです。

 

一応連携していても、

 

お互いはお互いで何をしているかわからなかったり

 

場合によっては非協力的であったり

 

残念ながらそういったことも見聞きします。

 

幸い当院が連携している歯科クリニックは

 

本当に熱心に対応していただける先生で

 

なにかあれば簡単に電話でやり取りをする関係なので

 

本当に助かっています。

 

嚥下障害を専門にされている先生で

 

内視鏡下に誤嚥の有無やリスクを判定し

 

適切なアドバイスをしていただけます。

 

そういった医科歯科連携が当たり前に広がることが

 

これからの在宅医療の現場では必要かと思います。

 

 

T先生、いつもありがとうございますm(_ _ )m