福岡県篠栗町で2020年、ママ友として知り合った女と共謀して食事を制限し5歳の三男を餓死させたとして、保護責任者遺棄致死罪に問われた母親碇利恵被告（40）の裁判員裁判で、福岡地裁は17日、懲役5年（求刑懲役10年）の実刑判決を言い渡した。
弁護側は起訴事実を争わず、赤堀恵美子被告（49）=同罪等で起訴=に支配されていた中で、三男翔士郎ちゃんを救う行動を取ることが出来たかどうかが争点。「マインドコントロールされた状態」と主張する弁護側は「行動選択の幅は狭められていた」として執行猶予を付けるよう求めていた。
冨田敦史裁判長は判決理由で「長期間、飢えの苦しみを与えたあまりにむごい犯行。頼るべき母親からの十分な保護を与えられなかった、つらく悲しい気持ちも計り知れない」と断罪。一方、赤堀被告との関係を「数々の嘘による経済的搾取や心理的支配で、生活全般を実質的に支配されていた。碇被告は被害者としての側面がある」と認定し、求刑より量刑を大幅に減じた。
その上で、「自分で判断する能力は残されていた。親族に助けを求める等の行動は出来た。食事を与える基本的な責任を果たせなかったことは一定の非難を免れない」として、執行猶予は付けなかった。弁護人は控訴に関し「関係者と話し合うてから決める」と話した。
夫や翔士郎ちゃんらの5人家族で生活していた16年4月頃、赤堀被告と知り合った碇被告。「他の保護者が悪口を言っている」等と嘘をつかれ不安になったところで、架空のトラブルを解決したように見せられる等して信頼、支配下に置かれていったという。夫の女性関係も吹き込まれ離婚。給与や生活保護費等収入の全ても赤堀被告に渡すようになっていた。
「母子家庭らしく子供に贅沢をさせてはいけない」等と言いくるめられ､赤堀被告が提供する食事のみで生活するよう仕向けられた。19年8月頃から食事量や回数が減少。20年3月には大半の日で翔士郎ちゃんの食事は抜かれ､4月18日に餓死した。
碇被告は公判で，翔士郎ちゃんの最期の言葉は「ママ､ごめんね」だったと明かし､後悔を涙ながらに繰り返した。
the end.