不等辺五角形:貫井徳郎 | 図書館司書の読書日記

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こちらは主に備忘録的読書日記と映画の感想を記しています。
著作権法上、ネタばれしないように書いているので味気ないとは思いますが、こんな本があるのだと興味を持っていただけたら幸いです。


 マレーシアのインターナショナルスクールで出会った主人公たち。

 父親の駐在についてきた4人と、事業家の両親から海外の学校に入れられていた聡也は、成人して日本でも会うようになっていた。

 帰国子女にありがちな自己主張の強さ。
 幼少期を同じ環境で過ごした絆。

 馴れ合いのような日本人的繋がりではない彼らに起こった出来事。

 芥川の「藪の中」のような作品ですが、それぞれの内面を掘り下げて語らせているところに、他人との関わり方に正解がないことを痛感。

 体裁を整えるためにする隠し事。

 「正義」という免罪符を得て、隠し事をオープンにする語り手たち。

 幼馴染という関係を壊したいのか、壊したくないのか。

 複雑な承認欲求や、自己愛が入り乱れています。

 それぞれの関係性が同格でないことを表す「不等辺」という言葉。

 外国で暮らしていても日本人的メンタリティはDNAに組み込まれているようで、先進的にみえて保守的な5人が、その小さな世界で完結しているような作品でした。