どうしようもない男女のお話です。
どうしようもない闇の中に囚われているけれどもしかしたらあと少しで光に届くかもしれない、そう思っている人たちの溜まり場のような場所で物語が紡がれています。
真っ当なようでいて、どうしょうもない場所に他人を押し込んでいく男。
毛嫌いしながらも兄だからと赦すおばあ。
闇に堕ちてきてもまだ抜け出せそうな人には声をかけるけれど、みずから出て行こうとしない人にその声は響かない。
どうしようもない空気が溢れているのに、それは澱んでいなくて、むしろ透明な枷のような世界に生きている人たち。
著者の作品は、ある意味底辺の人たちのお話が多いけれど、そこに救いというか突き抜けた清々しさがあると思います。
人を比べない清らかさに、俗世はこちら側だと気付かされるような、そんな作品です。