R.I.P:久坂部羊 | 図書館司書の読書日記

図書館司書の読書日記

こちらは主に備忘録的読書日記と映画の感想を記しています。
著作権法上、ネタばれしないように書いているので味気ないとは思いますが、こんな本があるのだと興味を持っていただけたら幸いです。

 
 「希死天使事件」と呼ばれる事件を犯した兄のことを案じる妹。


 自殺した母親を持つ兄妹には、もう1人兄がいる。


 なんとなく下の2人とは違う兄の苦悩は後から明かされます。


 引きこもりから犯行に及んだ兄はカウンセリングに通っていました。


 他人を関心がないようなサイコパスを思わせるような犯行動機。


 ですがもうひとつ仕掛けがあって…。


 「安らかに眠れ」を意味する「R.I.P」。


 たしかに苦悩が続けば、求める安らぎを得るために「死」を選ぶことも…。


 他人の苦悩を理解することは叶わない。


 寄り添うことはできても、安らぎの形は人それぞれ。


 もう1人のサイコパスが操ったかのように思えるけれど確証はない。


 自らの手を汚さないのがサイコパスなら、完全犯罪が成立してしまう。


 家族の中で伝播する不幸感。


 感受性のなさがサイコパスなら、他人に影響されずに自我を貫けることは最強なのかもしれず、それによって得られる安らぎがあるのかもしれない。


 「希死念慮」のある作家はたくさんいるが、この作品に出てきた「久坂葉子」について調べてみたいと思いました。