｢私、今日『何キャラ』でいけばいいですか？」
光文社新書　原田曜平｢近頃の若者はなぜダメなのか」31ページ

この本はケータイ世代の若者の意識変化を
フィールドワークを基に書いた良書だ。

この本の冒頭で、

近頃の若者はダメだ、けしからん、という声を
よく聞きます。でも、そういう大人にこそ問いたい。
あなたは今の若者のことをどれだけ知っているのか、と。
(3ページ)

と問題提起をしている。
だったらこんなタイトルをつけるなよ、と思うが、
事実、今の若者を｢ダメ｣と決めつける本ではないのだ。
むしろ今の若者を取り巻くネットワーク社会そのものが
大人の理解を超えて肥大化していることに警鐘を鳴らす。

私は今40代半ばで、最近の若者について理解出来ない
部分も多い。私の子どもが10代後半なので、理解しようと
話しかけたり、様々な本を読んだりしているのだが、
やっぱり人種が違うという印象を持ってしまうのだ。

それではいけないことを知りながらも、手も足も出ない
というのが本当のところだ。

この本では私の子どもの行動でどうも理解が
できなかったことが、こぐ一般的なことなのだという
ことを教えてくれた。気を遣いすぎてメニューから
食べたいものを選べない少年の話だ。

ところが、彼らはメニューを開くものの、ちらちら
お互いの顔色をうかがい、なかなか注文しようとしません。
｢パッと思い浮かんだものを注文しちゃいなよ｣
私がこう言っても、彼らは一向に注文しようとしないのです。

彼ら曰く、見ず知らずの大人におごってもらうのは初体験。
だから、いくら程度のメニューを頼むのが常識の範囲内
なのかを友達や私の表情から読み取ろうとしていたため、
なかなか注文できなかった、というのです。(14ページ)

冒頭の引用文は、著者が「女子高生との会話」という講演会で
女子高生二人に登壇してもらうことになった時、著者が
緊張していないかと気を遣っていたところで飛び出した
女子高生の言葉だ。

この女子高生は二人のキャラを変えた方が講演会が盛り
上がるからどのキャラでいった方がいいのか著者に
サジェスチョンしているのてある。

今の若者は過剰なほど周りに気を遣っているのだ。
私たちの世代から見ると「そこまで遣わなくても･･･」と
思っていることが現在の若者社会では通用しなくなっている。

「いずれにせよ、空気を読むというのは、日本文化の非常に
中心的な伝統的態度であって、それは今の若者に
始まったことではありません。しかし今の若者は、
大変日本人的日本人であるということなのだと思います」
（46ページ）

未成年なのに煙草を吸っている子であれば、煙草を吸って
いるシーンを誰かに目撃され、すぐに先生や親に証拠の
写メールを送られてしまうかもしれません。しかも、
誰が密告者か、特定できないケースも多いようです。

いつも誰かに会うんじゃないか、バレるんじゃないかと、
人目を気にしてびくびく過ごす｢監視社会｣の誕生は、
精神的に不健全です。
この監視社会は、かつて日本にあった｢村社会｣と同じです。
(92～93ページ)

若者が電車でメールをする姿を見る。最近は大人も同じだが、
若者たちは、著者が｢新村社会｣と呼ぶ、ケータイやSNSなどの
ネット社会の中で、掟を守るために必死に生きている。
この本には｢新村社会｣の掟が詳しく解説してある。

｢即レス｣は掟の一つだ。送られてきたメールに相手をいい
気分にさせるような内容のメール返さなければならない。
不愉快にさせたり、相手が怒っているのではないかと
思わせてはならない。返事を返さないのはもってのほかだ。

そうなるとメールでたちまち連絡がいき｢あいつは態度が悪い｣
という評判がたちまち広まり、結果「村八分」となるのだ。
彼らは「新村社会」の世界で上手く生き抜くために必死なのである。

若者たちがこんな窮屈な社会に生きているとは正直、
想像だにしなかった。著者が指摘するとおり、すでにケータイの
問題ではない。若者からケータイを取り上げても
すでにできあがったネートワークは消えない。

私たちが若者たちの本音を聞くことは、難しいことなのだろうか？
そうだとしたら、大変悲しいことだと思う。

近頃の若者はなぜダメなのか携帯世代と「新村社会」 (光文社新書)/原田曜平

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