「メタルマクベス disc1」

[作]宮藤官九郎
[演出]いのうえひでのり
[音楽]岡崎司
[振付]川崎悦子

[出演]橋本さとし / 濱田めぐみ / 松下優也 / 山口馬木也 / 猫背椿 / 粟根まこと / 植本純米 / 橋本じゅん / 西岡徳馬 / 他



7月28日12時30分〜、8月13日14時〜、IHIステージアラウンド東京にて。
そして8月9日18時~、ライブビューイングにて。
計3回観てきました!

あまりに素晴らしくて数ヶ月ぶりにブログに感想を書いてしまった。
というか新感線はやっぱり書きたくなるんだな。
とりあえず、まだ観てない方々に置かれましてはこのブログを読んでいただきありがとうございますでもそれより先に早く豊洲に向かって出発していただきたい!!というお気持ちでいっぱいです。
本当に!すっごいんだから!
万人に受けるとは言いません。
でも、自分の中のエンタメ史の転機になる人は絶対にいるはず。


「メタルマクベス」初演はDVDにて鑑賞しておりました。
主演のランダムスター夫妻は内野聖陽さんに松たか子さん。
映像鑑賞だったこともあり正直私はそこまでどハマりするには至らなかったのですが、上演当時は中毒のようになったファンの方が多かったというのも頷ける。
髑髏城と同じ系統の作品を続けて上演、というわけにもいかないだろうしステアラで再演するならぴったりの作品じゃない?
と思いながら迎えたマイ初日。
キャストのサプライズ具合に比べたら作品自体への期待値は若干落ち着いたものだったのです。
(というかキャストのインパクトが強過ぎた!)


蓋を開けてみればなんっだこの作品?!?と唖然。
凄い。これは凄い。
オープニングからぶちかましてくる。
リアルに爆風や土煙を感じそうな臨場感と嵐のような展開の中で乱れ飛ぶ歌、アクション、ド派手な演出。
冒頭10分で早くもあの劇場で巻き起こる物語の虜。
二幕後半なんてまさにノンストップだね!
中弛みが一切ない。
ずっと何かが起こってる。
ずっとハイテンションな熱量を保ったまま回り続けて最後まで突っ走る。
ハッチャケてばかりではなく時折恐ろしく静かで悲しい、あるいはゾクゾクする厳かな場面が挟まるのも絶妙なメリハリ。
新感線ならではの魅力とシェイクスピアの台詞の妙、そしてあの特殊な劇場の強みが最高に噛み合って作り出す痛快悲劇。

正直、再演されるレベルの新感線の作品なんて回らない普通の劇場で上演されてる時から当たり前に名作なんですよ。
わざわざこっちが回らなくたって、いのうえさんの演出や岡崎さんの音や役者の魅力で回る以上の楽しみ方を味あわせてくれてたんですよ。
でも今回のメタルマクベスは、やや斜に構えたその気持ちでさえ力一杯ねじ伏せてきた。
回さなくたって演劇はちゃんと面白い。
それでも尚、ここで回る意味がこれだ、回す意味がここにあるんだ、という圧倒的説得力!
ステアラが日本に建設されたのと同時期にいのうえひでのりが生きていてくれたことの奇跡!
「回らなくていいじゃん」から「回ってくれてありがとう!」にコロッと寝返る電光石火の手のひら返し!(それは一つ前の作品)

セットもますますカオスに、壮大に、不気味に禍々しくもど迫力に!
宙を舞う人!
舞台上を走り回るバイク!
響き渡るハイトーンボイス!
橋本さとしの弾ける狂気と変顔とキューティクル(ヅラ)!
濱田めぐみの宇宙一美しく威厳のある歌声!
松下優也のキレッキレダンス!
どう考えても格好良くないわけがない山口馬木也は二幕で客席全員虜にしてくるし、我らが橋本じゅんは愛くるしさと狂犬戦士の顔とのギャップで刺しにくるし、猫背椿の奇妙としか言いようがないセクシーさは炸裂してるし、西岡徳馬の懐深さと威厳に一幕終盤は引き込まれるし、植本純米はかわいいじゅねさんずっとかわいい。
そして最推し粟根まことの……!(最早言葉にならない)

まぁ粟根さんについてはまともな感想を言おうとしたらネタバレになりそうで怖い。
一言で言うなら大好きです54歳おめでとうございます祝いに行きたかった!!!
トークショーで
「さとしさんじゅんさんが元気に千秋楽迎えますように。いやいや僕はどうでもいいんで」
的なことを仰ってたんだけど、役のままの最高に素敵なお姿で、滑舌の良い私の大好きな声で、ちょっと関西訛りがまだ聞き取れる素の喋りで、どうかそんなことを言わないで。
粟根さんの姿が舞台でまだまだ見られるというだけで数年先までの頑張りが約束出来る、私みたいな人間もいるんです。

トークショーの話はまた別件。
とにかくビジュアルの圧の強さ・重厚さと回転演出、スクリーンの映像、そしてキャストの歌と役それぞれのあれやこれやが最高に奇跡のように噛み合った一大エンタメ作品でした。
全部凄い!凄いもん観た~!

散々言い尽くされてますが、遊園地のアトラクションもかくやという動きを見せるので絶対に生で見たほうが良いんです。
タイムマシンも使わずにあれが13,500円で見られるうちに見たほうがいい。
そして何よりも、生であの劇場の広さを知ってから初めて分かるランダムスター夫妻の小ささを目の当たりにしてほしいのです。
時には一人ぼっちより二人ぼっちのほうがずっとずっと孤独に悲しそうに見えるやり切れなさと、そこから生まれる凄味を見て欲しい。

さぁ、回し者かってくらい誉めちぎりましたがまだ足りません。
好きです、メタルマクベス。
何より新参ファンでありながら、さとしランダムスターが登場するシーンは涙が出そうでした。
在籍当時のことは全然知らない私ですら「おかえりなさい!」と心で呼びかけたくなる勇姿でした。
特に13日のトークショーはそう。
長年の家族みたいにバランスが取れて心地いいさとしさん、じゅんさん、粟根さんの会話。
「橋本さとしさんって元新感線だったの?!」と初めて知った時から早数年、いつかこんな日が来て欲しいと密かに願っていた姿。

「あれが観たい、これが観たい」

演劇ファンそれぞれ願うことは星の数ほどあって、それが望み通りになることなんて正直それ程多くない。
だからこそ、叶った時の喜びは半端じゃない。
そういう意味でもこの「メタルマクベス」はどれだけ沢山の演劇ファンを喜ばせただろうと思います。

既に長いですが以下は更に長い、ネタバレだらけの感想です。
脳内リピート上演しながら書いたから話の流れに沿ってるけど、観た人にしか絶対伝わらない。



















冒頭の三魔女。
初演のミ◯ハウスじゃなくなってる代わりに某アーティストのパロ(隠す気がなさすぎて笑う)。
「お前らキッツいぞ!」
てじゅんさんエクスプローラーは言うけど、いやいや可愛いでしょ(真顔)
カナコさんは本気で何かしらの魔術のせいかと思うくらい年齢不詳のキュートさだし、猫背さんも妙な色気で目が離せないし、じゅねさんなんて中身はオッさんなのに!オッさんなのに!

そんな3人のわちゃわちゃからのオープニング。
爆音の中、ロックに歌いながら殺陣で蹴散らしながらバイクを走らせるさとしランダムスター。
50代でこんなに格好いいことある!!?
これ、稽古場風景も拝見したけどどう考えてもしんどいじゃないですか。
50代でなくても若者だってしんどい。
でも絶対に「キツそうに見せない」んですよね。
当たり前に平然とこなして「俺は完璧さ」と歌い上げてみせる。
これぞ「三次元の漫画」を貫く新感線の格好良さだと熱くなりました。
出だしから新感線の格好良さの象徴だよ、橋本さとし。
さすが古田新太に次いで「客席に中指立てても拍手喝采を浴びる男」(私調べ)です。
サビに向かうに合わせて、助太刀に飛び込んでくるじゅんさんローラもめっちゃ格好いいんだよね。
登場のバイク音がバンドの生演奏と被るのが最高にアガる。
ばんざいマクベス、ばんざい共闘。
後々の悲劇を思うと辛いけど。

オープニングからテンション最高潮なわけですが、続く「炎の報告」もたまりませんね!
メタルマクベスと言えば冠くんのハイトーンボイス!
報告に合わせて客席が動きスクリーンが開き、ランディローラが実演してみせる贅沢さ。
回転劇場ならではの強みも生きて無敵の名シーンです。
ランディとローラの動きや表情が格好よさ一辺倒じゃなくて、愛嬌があってコミカルなのも楽しい。
ランディが口パクで「マジでマジでマジで~!?」て言うのもいいし、「あっぱれ~」で二人で踊ってる姿なんてそのまま可愛さで戦争終結しそうだったし。
あと「狂犬エクスプローラー」のキャッチフレーズの格好良さな。
間奏のアンサンブルの皆様の各芸も凄い、なんて盛りだくさんなシーンなんだ。
後ろでバイトしてる(上手側でベース?弾いてる)粟根さんに目をやる暇がない。
あれ楽器がスモーク噴き出すのも格好良くて好き!マッドマックスの火吹きギター思い出す!
西岡さんのレスポール王も、グレコもジュニアもお付きの皆様も凄く楽しそう(ヤマハとトーカイ除く)
話は飛ぶけど二幕冒頭で
「長い間あなたの笑顔を見ておりません」
とローラがランディに言うの、こういうことだと思うんだよな。
「あんたの時代は良かった」冠くんの王を弔う歌もそう。
この段階ではただただ馬鹿騒ぎの盛り上がりシーンだけど、一幕ラストを境にESP国が失ったのはこの賑やかしい笑顔の数々なんだ。

続く三魔女とランディの出会いは初演時から毎回ツッコンでしまうんだけど、ヒロインの初登場それー?!
いや本役じゃないけどさ。
日本いや世界の歌姫・ミュージカルの女王様濱田めぐみの新感線初登場場面が◯◯◯メタルで良かったんですか。いいのか、新感線だから。
しかし「ミュージカルとしてのグレードが上がった」という台詞に説得力がありすぎて笑ってしまうという恐るべき歌唱力。
第一声から観客はあなたの虜ですよ。
ここからしばらくは新感線の画像芸炸裂。
いらすと屋は不意打ちだし、メタルマクベスの各種ジャケ写はそれだけで写真集下さいレベルだし。
ナンプラーちゃん(つい「ちゃん」呼びしたくなる)どアップでもめっちゃ可愛い。

グレコ達が登場してマホガニーの城主の件を伝えた後、ランディが1人になって歌う「自問シャウト自答」も好きな曲。
「そう、最短距離でいけ」のところの歌詞が特に好きです。
実は日常生活でも事あるごとにランディが頭の中で歌ってくれるくらい汎用性が高い。
その歌の合間に行われるマホガニーの元城主処刑シーンは、新感線らしいリアルな生々しさ×笑いのシーンでしたね。
「ユッケ大好きだけどもう食べません!」
と一生懸命に宣言してみせるジュニアが可愛い。
可愛いけど、何の解決にもなってない。
強さをアピールするなら、この後でも尚ユッケ食べ続けます、くらい言いなよ!(笑)


さぁさぁ、そしてようやく本役で!
我らがランダムスター夫人の登場です!
かーわーいーい!!びっくりした!!
もっと妖艶で大人の女全開キャラになるかと思ったら声も仕草も言動もキュートでどうした?!
駄々っ子小学生みたい!
「嫌いなの、メタル!受け付けないの!」
とディスられながら宥めるヤマハ(演:吉田メタル)お疲れ様です。
いや、しかしここは今回の再演最大の不満と言っても過言ではないのですが、

何故「ダイエースプレー買うてこいや」がカットされた?!

あれ超好きだったのにぃ。
あと「浪人生の館」が気になりすぎる。
「リンスは~」が拝めただけで幸せかしら。
「メタルマクベス」オリジナルメンバーでの唯一の演奏シーン。
ナンプラーの(一瞬だけど)生ドラム演奏!
んで、ここで「エクスプローラーという高価なギターを〜」の台詞が出て1981年とのリンクの意味が最初に一つ明かされるわけですが、この時点ではついつい聞き流してしまいがちよね。
「ん?エクスプローラー?」くらいで。
それにしても、物語の進行や歌われる曲が全てアルバムの曲名に詰まってるの、本当に上手いなぁと思います。
「スコーピオンハート」や「あの子のブーツは豚の耳の匂い」がフライングで登場するのも好き。

ヤマハが去った後の夫人の独白、私は恥ずかしながら原作未読ですがかなりシェイクスピアそのままに近そうなのかな?
流れるような台詞や比喩が美しくて好きです。
パンフに載らない粟根さんのもう一役、ひょっこりはんも好きです。
続く2〜3でどうなるのか気になる時事ネタ(笑)
旦那様御帰還でのランダムスター夫妻のイチャイチャはずっと可愛い毎回可愛い。
あの時間がずっと続いて欲しかった。
特に
「ランディつおいの!!」
と客席に向かって見得を切るようにドヤ顔してみせるランディが可愛さの極みなんですがどうすれば。
そんなバカップル夫婦からの殺人計画ですからね、この落差たるや。
ゾクゾクし過ぎてたまらない。
濱田めぐみが歌う「私の殺意」が生で聞ける日が来るなんて、人生捨てたもんじゃないですよ。
13日は特に迫力全開で凄かった!
回転するベッド、舞い散る花弁、上からのカメラアングル、各種演出が全てめぐさんランディ夫人を全力で引き立てにかかってた。

80年代シーンはとにかくナンプラーが可愛い!
初演とキャラが変わってなくてありがとう。
何故そんなキャラが54歳になっても完璧に出来るんですかありがとう。
メタルマクベス(バンド名のほう)が現実にあったら私は確実にドラム推しになるし、
「ナンプラー」「ナンプラーちゃん」
呼びじゃなくて
「なんばくん」
呼びするクソ面倒オタクになる自信がある。
「ドラムは今のままでいい」て言われて喜ぶ姿も、シマコさんを介抱してるのも可愛いんだー。
「マクベス」て呼ばずに「さとっさん」呼びして怒られるのとかも、ちょっとしたシーンだけどバンド仲間以前の昔馴染みとしての仲の良さが感じられていいよね。
というか、「仲が良い時もあった」と信じて縋りたい部分あるよね。
特にマクダフのさとっさん呼びはね。
グレコ時はひたすら格好いいのに、マクベス山口は「人間的にダメバンドマン」の鑑って感じでギャップが超好き。本当駄目すぎ。
あとバンクォーの「半ケツを言い渡す」が生で拝めて幸せです!正気です!
「きこりの顔」て表現書き起こしたクドカンはやっぱり天才なんだと思う。

この辺りから
「80年代と2218年が交錯している」
という構図がはっきり見えてくるだけに、2218年に時代が戻ってもまだ「マクベス」を引きずってるランダムスターが少し怖くなってくる。
あのわずかに漂ってくる「嫌な予感」はこういう芝居の醍醐味ですね。
いよいよ決行する夜となっても怖気付くランディとけしかける夫人。
何かに取り憑かれたように、夫人をそこまで駆り立てるものはなんだったんだろうなぁ、と何度見てもその正体が分かりません。
夫を王座に就かせたその先に明確なビジョンがあったわけでは決してない。
ただ「王の妻」という立場が欲しかったのか、そこをゴールと定めてそれしか見ることが出来なかったのか。
だとしたらまさしく「小さい人間」だったのだと思います。
スケールは違えど、ゴールしか見えなくてその先が想像出来ない感覚は私自身もよく知るものだからいっそ共感します。
我々と同じくらい小さい。
その小さな器にしかし、収まりきらない欲と狂気と激しさが溢れていたのがランダムスター夫人なんだろうな。
あぁ、だとしたらそれが夫人を駆り立てたものの正体?
と考えては泥沼にハマる。
対するランダムスターもきっと負けず劣らず小さな人間。
ただ彼は彼で、その小さな器に夫人から溢れた欲や狂気を注ぎ込まれながらもずっと
「今日はもうやめておきましょうか」
という撤退の一言が夫人から聞けるのを密かに祈っていたんではなかろうか。
優しさというよりも、臆病さ故に。
だからレスポールを殺してしまった後に
「この男を起こしてやってくれー!」
という嘆きと後悔の慟哭を上げるのが辛くてたまらないのです。
この瞬間はランダムスターの臆病さではなく、心の底にしまい込まれていた優しさが顔を覗かせたようで。
勿論罪の大きさに怯える部分もあるでしょうが、それ以上に亡き王への想いを感じたくなる姿だった。
今更そんな優しさが出たってもう手遅れ。
引き返せないところまで来てしまったから余計、救いのない残酷なシーンだと思いました。
冷酷冷静な体を保っていた夫人もたまらず小ささを全開にして怯える様は何と痛々しい。
観客ながら、とてもじゃないけどザマァ見ろと言えない。
まるで自分が選択を失敗してしまったかのような恐怖が伝染してきて辛い。

こんな重い重い一連のシーンなのに、ローラのマーライオンとか夫妻の相変わらずのイチャイチャとかマサルとか、小ネタはふんだんに挟んでくるんだもんな!(笑)
レスポールの歌は初演には無かったかと思いますが、私はすごく好きなシーンですね。
二幕には登場しなくてもずっと印象を引きずらせなきゃいけない存在だもの。
何より西岡徳馬さんの渋さ、貫禄!
西岡さん、別の舞台や映画でも拝見するけどその度に好きになるんですよ。
今回西岡さんがレスポールで嬉しい。
「何の為に戦うのか」
この問いかけの答えがラストの怒涛の展開の際にばっちり効いてくる伏線の見事さよ。

悪夢の夜が明けた朝、あんな気の抜けるシーンで始めるの上手いですよね。
ルンバとかエレベーターとか。
端っこまで走っちゃうマーシャルも可愛いなぁ、ライト当たらなくて「暗ーい」ってマイクオフ状態で呟いてたの超可愛い。
この緊張と緩和、そしてまた緊張、ゲ◯、緊張、◯ロ、ス◯ーピー。
どんだけ焦っても嘆き悲しんでも絶対に◯ロは踏まないESP国民強い。
しかし昨晩あれだけ取り乱しながら、しれっと登場してしれっと嘆き悲しみしれっと「城主として」詫びてみせるランダムスター夫妻、怖い。
殺人よりもむしろこちらの姿の方がよほど悪魔のように見える。

「王を弔う歌」ここは回転劇場の強みがまた生きましたねー!
葬列がぐるりと円形通路を回るのが圧巻。
そしてここで岡崎さんが!岡崎さんが舞台に出てきて生演奏ちょーーーー格好良いの、ヤバイ!
とか興奮してる間も無くジュニアを送り出すグレコの包容力、ジュニアと一緒になって泣きそうです。
お弁当とか愛おしすぎる。
絶対ジュニアにとって世界一美味しいお弁当でしょ…
一幕と二幕の切り方も上手いなぁ、まさに「一つの時代が終わった」て感じする。



一幕だけで相当長い感想ですがここから二幕です!
いきなりランダムスター夫人のお歌からのスタートです!
初演とメロディがちがーう!でも素敵!
アンサンブルの、狐の物の怪?みたいな仮面格好良くて不気味で良き。

かーらーのー、スーパースターエクスプローラーじゅんさん!
あのツーリングと明るい南国を思わせる歌&映像、三人乗り自転車と魔女達、もうしばらくは巡ってこないハッピーなシーンで好きよ。
ここの映像、本当にじゅんさんがバイクで走ってるみたいで凄いなぁ。

ここからの展開は圧巻でした。
2218年と過去の恐ろしいほどに見事な交錯。
ランダムスターの殺意が過去に向かってバンクォー橋本を殺すような、マクベス橋本の暗殺依頼が未来のエクスプローラーを殺すような。
同じ舞台上に二つの時代が同時に現れ、絡まりあってランダムスター/マクベスの狂気を現実にしていくような…。
爆音でマクベスが歌う中走り抜けるバイク、まるでアクション映画。
まさしく悪夢のような展開に鳥肌が止まらない。
観客の目にはそんな悪夢の中でも1人立ち向かおうとするエクスプローラーの勇姿がいよいよ強く、やがて悲しく映ります。
「あらかじめ言っておくが俺はしつこいぜ」
メタルマクベスの中でもトップクラスに格好良い台詞。
はじめは安全なところに隠れながら父ちゃんのピンチに矢も盾もたまらず飛び出すマーシャル、息子を守り切って倒れたエクスプローラー。
そんな中歌い続ける「スコーピオン・ハート」。
無理だ、凄すぎる。ヤバヤバのヤバ。

ただ、ただ、一個だけいいですか?
そんな時でもナンプラーは可愛いよー!
手持ちでドラムスティックくるくる可愛いよ!
安定のさとっさん呼び可愛いよ!
あとアルフィー(仮)が兎に角気になります。
壮絶なシーンがあけて再びの現代パート、アルフィー達とナンプラーちゃんが隅っこでやってる芝居も見逃したくないんですけど目が足りないよー。
とりあえず、バンクォーの死を悼んで涙するナンプラーをみんなで慰めてよしよししてるとこはめちゃくちゃしっかり見ました。

悪夢再びのバンクォー幽霊登場は、笑っていいのか恐れたらいいのか迷うところですね。いや毎回めちゃくちゃ笑ってるけど。
そりゃマクベスもビビるでしょ、意味わからんもん(笑)
何なんですか「つくだに」て。
ていうか13日は「ともだち」って言ったね?日替わりなの?
「エグザイル!」てチューチュートレインの振りしたり、「RYUSEI」の振りしたりしてくれたのは最近LDH沼にはまった私へのサービスですか違いますかですよね。
皆自由過ぎて全然出来てなかったけど!
あんな悪夢of悪夢なシーンなのに、一番観客がノリノリで手拍子するのもここっていうね。
まぁそんなバンクォーにすっかり錯乱してパーティはめちゃくちゃなんですが、ナンプラーがここでアルフィー(仮)に
「新しいバンドを!」
的な声をかけていたのは地味に衝撃でした。
お友達から先に情報もらってたから耳すませてたらギリギリ聞こえたのよ。
ナンプラーちゃん、意外とドライなのかな。
というか、彼のその後が気になるんですよね。
パール王がああなってしまったし、どうか無事でいて欲しいなぁ。

そう!そのパール王!
話は飛びますがこれまた最高の美ジュアルですよねー!
ナンプラーちゃんも「54歳にしてそんな!」と言いたくもなるセクシーで良いお衣装眼福でしたが。
パール王、金髪ストレートロングにパープルのマント、頭に可愛らしい王冠て。
そんな見た目でマント翻して殺陣でも披露されたら、もうダメです。なんばくんです(?)
それはさておきパール王、人格者なんだろうなぁというのがあちこちからにじみ出てますね。
グレコとジュニアの再会に密かにもらい泣きする姿が、ナンプラーのバンクォーを悼む姿と重なった。
パール王とナンプラー、まるで性格も格好も立場も時代も違うけれど間違いなくこのマクベスの世界では同一人物なんだろうな。
2人が共通して持つ「優しさと強さ」をそれぞれの涙のシーンで勝手に感じて勝手に納得した。
普段は穏やかなのに、戦になるとドスの効いた迫力ある声が聞けるのも嬉しい。
私はフェルナンデス国民になりたい。

話がずれてしまったけど、ランダムスター夫妻に戻ります。
あからさまに過去と現実が混濁を始めているランダムスターに対し、一見平静を保ちながら何かの糸が切れたように取り乱す夫人。
崩壊の始まりを色濃く感じながら、それでも穏やかに悲しく歌われるキャラメルの歌に救いを願わずにはいられません。
何なんでしょうね、これ。
絶対にハッピーエンドは望めないと分かっている展開。
救いようのない悪人。
自分の理解出来ない遠い人々。
そんな物語を見せられて尚、一瞬でも彼らの幸せを願わずにはいられなくなってしまう。
叶わないと分かっていても願ってしまうのは虚しいけど、それが「悲劇を観る」ということなのかもしれないなぁ。

一方80年代サイドのマクベスとローズも、負けず劣らずの悲劇の中にいます。
2人の生まれ変わりがランダムスター夫妻なのか、それとも魂的なものが乗り移ったのかは分からない。
でも、何度生を繰り返しても永遠に幸せになれない業を背負った罪深い2人なんだろうなぁということは想像してしまう。
最初に道を踏み外した時にかかった呪いみたいなものかもしれない。
ますます過去と未来が混ざり合って混沌とした中で歌われる魔女の予言の歌もまた、ある意味この時点でランダムスターにかかった呪いでもありますね。
それが効いているうちは無敵だけど、一度破れると…。
狂気や混沌を切り裂いて歌うようなめぐさんの威厳ある声を聞いていると、まさにその声でマクベス/ランダムスターの運命を操ってるみたいでした。
ちょっとだけ「大阪で生まれた女」オマージュになってるの、好き。

その予言に翻弄された挙句、まるで罪のないグレコ夫人と息子を襲う悲劇は見ていてキッツイですね。
というかグレコの城のシーン、反乱軍登場まではこの芝居で一番個人的にキツイ。
(あの未亡人の歌も苦手で…後のランダムスター夫人の台詞の伏線なのは分かるんですが)
グレコ達が駆けつけてから「明けない夜は長い」の流れは好きですよ。
ランダムスターが歌うのと違い、心の底から「うおぉー!いけー!!」てテンションを上げられるので(笑)
松下優也さん、歌えるしダンス上手いし驚きでした。あれは文句なしに格好いい。バッチバチに決まってる。
後ろにいるパール王達からも目が離せないんだけど!

その勇ましい反乱軍の進撃の一方、目的であるランダムスター夫妻はいよいよ勝手に破滅への道を辿ってます。
医者と門番の掛け合い、ユルくて好きなんだけど夫人が痛々しくてそれどころじゃない。
めぐさんの、心ここに在らずといった表情や狂った笑い、夢遊病の動き。
もう目が離せない。見ていてあんなに辛いものはないはずなのに。
戻ってきて静かに妻を見つめ、抱き寄せるランダムスターの姿には涙が出てしまいます。
夫人じゃないけど、あなたも普通じゃないのにね。
いっそ2人同時に同じ場所で狂ってしまえればまだ幸せだったかもしれないけど、どこか噛み合うことがない会話はそれすら許されていない残酷さを感じる。
他方が過去にいる時は、他方が未来にいるような噛み合わなさ。
いつのまにかランダムスター夫人も「ローズ」としての意識が芽生えてるのめちゃくちゃ怖い。
でもここで改めて、ランダムスターという男の優しさを想います。
「怒ってる?」
と叱られた子供のように聞く夫人に優しく
「なにが?」
と聞き返す声、否定して慰める言葉、全てに愛する人への優しさが溢れてた。
優しすぎて涙が出てしまったし、続く夫人の
「小さい方にしとけばよかった」
「ごめんね、『マクベス』」
がまた泣けてしまう。
一幕で渦巻いていた彼女の激しさも欲も全部今は後悔に姿を変えて、本当は小さな彼女の器を飲み込みつつあるのが可哀想でならない。
これはアップで2人の表情を見るのもいいんだけど、絶対に生で見るからこそあの2人ぼっちの孤独が分かるシーンだよね。
広い広い舞台の上、あの2人の姿がなんて小さいこと。
普段はたった1人でも大劇場を埋め尽くすオーラだって放てる2人ですよ。役者は凄い。
ランディも夫人もこんな悲しさと優しさの一方で、グレコやレスポールへの残虐性と狂気を抱えているのがいよいよ怖いんだけど。

一方の反乱軍、バイク乗りなの超格好いいね!
てかパール王もバイクですねー!いいですねー!(大興奮)
城に乗り込む時の「ランダムスター君いますか?」の声色が可愛すぎてメールの着信音とかにしたい(狂気)
勢いある反乱軍の突入に合わせて、ランダムスター夫妻最後のデュエット。
なんという迫力!
こんな今際の際で、殺意と失意と狂気と空虚を歌う歌なのに、何て力強い。
でも、2人が歌うそのパワーは全部反乱軍側に乗っかって、夫妻には絶望しか残らないのがあまりに皮肉。
そしてジュニアとマーシャルの目の前でランダムスター夫人は飛び降りて命を絶つ。
こんなにもあっさりと?と初見時には呆気に取られましたが、逆にじっくり描かれたらマジでキツかった。
その後のランダムスターの嘆きだけで充分すぎるくらい辛いし。
あれだけ一緒にいたのに最愛の妻の死に目にすら会えないの、こんな残酷なことってある?

もう失うものがない人間は怖い、と痛感するランダムスターvs.パール王のシーンは、私が贔屓目抜きでこの芝居で一番好きなシーンです。
「私の失意はブラックホール」
命を絞り出して叫ぶように歌いながら、何を斬っているかもまるで意に介さないようにパール王を斬り続けるランダムスターの姿に、言葉では言い表わすことができない畏怖を覚えて釘付けになってしまう。
これが初めての、本当に「悪魔」としてのマクベス誕生の瞬間。
と思わずにいられないさとしさんの迫力にいつも完全に飲まれます。
それはそれとして、さとしさんvs.粟根さんの殺陣とかファンとしてめっちゃ興奮します!!!
さとしさんご自身も20数年ぶりの粟根さんとの殺陣に「粟根さんやー」て思ってると仰ってましたが、見てる側もテンション上がるわそんなん。
また粟根さんの殺陣が綺麗で、斬られ方倒れ方すら芸術的に美しくていらっしゃるから困る。
太刀筋とかマントの翻し方とか、もうずぅっと見てたい…。
ライビュで観れて特に嬉しかったのもここでした。
あと、あんまりにもパール王とナンプラーのキャラの差がでかいので、ここで初めて
「あの2人同じ役者さんだったの?!」
て気付く方もいるかもしれないと考えて胸熱ですね。
粟根まことさん、私の推しです。
しかし、パール王的には曲がりなりにも夢を語り合った幼馴染にまるで違う人間(少なくとも自身に自覚はない)の面影を重ねられたまま斬られる、というのはどうにもやりきれないでしょうね…。
無念でしかないはず。
せめて正々堂々と対決して結末がどうであっても、死を悼み合うくらいのことは出来ると信じて昔馴染みを殺しに行く覚悟を決めたんじゃないのかな、と私の中の勝手な妄想ですが。


ここからの展開は、もうずぅっとノンストップ!
ジュニアの覚悟、レスポールの問いかけへの答え、そしてグレコとの対峙。
そして、ランダムスターにかけられた「呪い」が全て解かれた瞬間に舞台で起こる大カタストロフ。
役者それぞれの命を削るような演技と、回り続ける劇場と、ド派手な演出と音楽がひとかたまりの波みたいにラストに向かってなだれ込むようなクライマックス、筆舌に尽くしがたい素晴らしさでした。
崩壊の後の静寂をぶち壊すように浮かび上がるランダムスター、いやマクベス夫妻の姿に感じるのは、怒りでも恐怖でもなくある種の痛快さであったのは何なんですかね。
あんなにテンションブチ上がる音と演出で、こんな悲劇を見せられたって脳が混乱してしまうわ。
なんて奇妙な痛快さを伴った悲劇なんだ、とラストに至って改めて身に染みます。


以上、長い感想でした!
書き漏れたことも山ほどあるけどスマホ打ちの限界です。
さとしさん、めぐさん初め、皆様全員千秋楽まで突っ走られますように!


今のところdisc2は観劇予定がないので、次はいよいようちの(←?)浦井さん主演のdisc3なんですけど!
しょっぱなでこんな凄いもの見せられて、果たして私は11月に生きて豊洲から帰れるか甚だ不安ですが兎に角楽しみです。