奥泉光はこんな、いかにも226事件ものです、というタイトルの小説も書いていたんだ!
遅まきながら読みました。
感想をざくーっと書くと、、、
難しいなあ笑
あまり226事件もの、と思って読まないほうがいいと思う。
三島由紀夫の豊饒の海(特に春の雪)みたいな雰囲気もあるんだけど、やっぱ三島はほんとに戦前を見たし226事件の時10才くらいで生きてて時代の空気を知ってるけど奥泉光は全部資料と想像で書くしかないから、どんなに丁寧に細かく書いてもやっぱり違っちゃうのかな。
主人公の惟佐子(イサコ)も悪くはないんだけど、イサコより一足先に登場した津島華子がかわいいんじゃないかな?と思っていると、冒頭しか出てこない。なんで!?
イサコの父の笹宮伯爵が、ちょっぴり桑潟准教授を思い出させるようなおもしろいところのあるキャラなんだけど、226事件ものにはユーモアがなじまない。226事件には真面目すぎて不吉、って感じの男性キャラが合うと思う。
大きな見どころはイサコの弟の惟浩。後の登場シーンに注目してください。
妖艶な美形の揃った兄弟たちの父親がちょっとおとぼけの笹宮伯爵なのがなんだか不思議。ほんとうに血の繋がった親子なのかな?と思うくらい。イサコたちの母の崇子という人に謎があるのだが、10年くらい?結婚していはずの崇子のことを笹宮伯爵は特に懐かしくも思っていないようだ。どんな夫婦だったのか。性格的には後妻のほうと合ってるようだが。
実はアメリカとは戦争できないと思っている現実主義者なのだが当初は自分が影で組閣名簿を作るという夢?を持っている。
昭和10年にはすでにエラリー・クイーンやヴァン・ダインが読まれ、ベニー・グッドマンのジャズがあり、ルイス・ブニュエルの映画があったのだな、というのは勉強になった。
人物たちの中で一番精彩を感じたのはお金持ちの持ち寄りランチに紛れ込んでしまったシーンの久慈中尉かな。(短いけど)
この人は冴えない風貌に描写されているのも人間味を感じる。
美男美女な登場人物が多いので、逆に容姿がイマイチ、と書かれている人物のほうが印象に残る。
他に黒河という男も不細工設定なのでよく憶えられる。
イサコの友人の寿子という女性も話の軸になっているのだが、この人が元気に魅力的に動いている所を読者はあまり見られないのでどうも愛着が湧かない所がある。
自分はこの人は槇岡中尉のことでイサコに嫉妬したな、という印象が強かった。最初の頃はずっと不在。
偽装心中の本当の真実は読者が想像するしかないのかな。
三島に倣い?同性愛のシーンもあるのだが、もしかして奥泉教授の教え子たちに腐女子学生がいて「先生、226事件の青年将校たちのBL書いて!」とおねだりされたのかと思っちゃった^^;