あたかもハクの思いに反応したかのように、廃墟の奥から凄まじい殺気が放たれる。あたかも暗黒の太陽が昇り、死滅の光があたりを蹂躙しているかのようだ。
はぁ、と改めてため息をつくと、廃墟の奥へ入る。
そこは少し広間のようなスペースが、あった。天井があるわけではないが、壁で囲まれている。
その一番奥に、玉座があり異形の何者かが座っていた。殺気はまぎれもなくその異形から、発せられている。
異形は、立ち上がった。
身の丈は、二メートルはあるだろうか。
背が高いだけではなく、横幅もあり筋肉の要塞であるかのように見える。
手は四本で、足は二本、頭は獅子の形をしていた。
凶悪そうな牙が、口元から覗いている。
人型ではあるが、ベアウルフを遥かに凌ぐ圧が全身から発せられていた。
そいつがボスである獣人王で、間違いないだろう。まあ判りやすくていいよな、と少し思った。見るからに強うそうで、確かにそのとてつもない強さだけで全てを解決しそうだと思える。
「久しぶりであるな、剣士が単身で我が前に現れるとは」
獣人王が、咆哮のような声を発する。それだけで、空気がびりびりと震え全身が総毛だつ。
「お前が我が配下を皆殺したのであれば、端倪すべからざる剣士なのだろが」
獣人王は黄色く輝く目を、すっと細める。
「お前は驚愕するほど、弱そうにみえるぞ。気に入らんな」
ふう、とハクはため息をつく。
「あー、陛下、すみませんが弱いですよ、おれ。ただジャンケンの組み合わせ的なもんで、勝てただけで」
獣人王が、少し笑い獰猛な犬歯が剥き出しになった。
「我が配下がグーをだせば、お前がパーを出して勝ったという気か」
「そんな感じで、申し訳ない」
「ふざけた奴め」
ごおっと風が吹くように、強烈な気が獣人王から発せられハクの顔を打つ。それはもう胴当てみたいに物理的な力を持ってそうだ。
「お前が何をだそうが、関係ない。余が、出した手ごと斬り伏せるからな」
いや、ジャンケン判ってます? とハクは言いたかったが、喋る余裕は無くなった。
颶風となった獣人王が、襲いかかる。
獣人王は四本腕のうち二本に短槍を持ち、残り二本に鉈のような剣を持つ。
まず、短槍がハクに襲いかかる。
稲妻のような素速さで襲いかかる槍を紙一重で躱すと、間合いをつめた。しかし、そこは鉈のような剣の間合いである。
旋風を巻き起こしつつ、二本の剣が襲いかかってきた。
ハクはスウェイとウェービングで躱そうとするが、二本の剣はコンビネーションを作り逃げ道を潰してくる。
やむなく距離をとろうとするが、そこは短槍の間合いであった。
ハクの腕と足から、血飛沫があがる。
たまらず、ハクは大きく跳躍し距離をとった。
驚いたことに、獣人王は深追いはせず距離を保つ。こちらが罠をはってないか、警戒しているらしい。それだけ強いのに用心深いってのは、ふざけてるなとハクは思う。
不死身のアビリティがあるはずなので、もしかすると勝手に生き返るのかもしれない。でも、魔導師の脳は複雑なのでその修復は多分短時間ではできないだろうとハクは思う。まあ、ルサルカがくるまでもってくれるはず、そうハクは呟く。
その瞬間、凄まじい殺気がハクに浴びせられた。残骸となった建物の影から、四人の獣人族が姿を現す。
四人の獣人は虎の頭を持ち、チェインメイルのようなもので身体を覆っている。手には長槍のようなものを、持っていた。
ああ、こいつらがジーク言っていた騎士かと、ハクは思う。
「ウヌは、単身でここまでたどり着いたのか」
虎騎士が、わりと明瞭な英語で語る。まあ、訛りはひどくクセはあるが十分理解できた。
「では、ワシらを少しは楽しませてくれるかの」
虎騎士はそう言い終えると、一斉に槍を突き出してきた。ハクは、巧みに避けるが避けた先に次の槍が襲いかかる。四人の騎士は、うまく連携をとりハクが逃げた先に次の攻撃がくるようにしていた。
虎騎士は、あからさまな殺気を放って攻撃をしてくるので、槍の軌道を読みやすい、殺気がくるほうに、槍があとから来るからだ。
だが、その速度が凄まじく速く狙いも正確である。しかも、連携が巧みすぎた。あたかも、ひとりの騎士が四本の槍を繰り出しているのかとハクは思う。
ハクと虎騎士は、舞踏を行っているかのようであった。ハクが紙一重で避ける様は舞を披露するダンサーのようであったし、虎騎士たちの連携がとれた攻撃も一種の舞踏に思える。
虎騎士たちが繰り出す槍はどんどん速くなり、次第にハクの身体を削ってきた。ハクは、首筋に切り傷を刻まれ血を迸らせる。たまらず、後ろに跳躍し間合いをとった。
虎騎士は深追いせず、間合いを保つ。ハクはどう鎧通しを放つかを考え続けているが、虎騎士たちは全く隙をみせない。ひとりは殺せるだろうが、その間にのこりの三人に殺られる。
「キラパイセン、無理だわ、これ」
とうとう、ハクはねをあげた。キラは、鼻で笑う。
「何をいってるデスカ。こんなイージーな相手に、時間かけすぎデス」
キラは、にいっと笑う。
「胴当てを、使うデス」
ハクの脳裏にオブジェクトが浮かび上がり、メソッドが赤く示される。
ハクは、その働きを理解した。
「おお、なるほど。ありがとう、パイセン。相変わらず激烈役立つな」
キラは、得意気な顔をした。
パイセンは思ったより可愛いよな、と少しどうでもいいことを思う。だが、状況はそんなことを考えてられる余裕がない。
ハクは胴当ての仕組みを理解したが、それを発動するには気を練る必要があった。時間が欲しいが、槍のコンビネーションを躱すだけで精一杯である。
ハクは、覚悟を決めた。
まあ、死んでもしゃあないというか、一度死んだんだからもう一回くらい平気だろと思うことにする。
ハクは、虎騎士が放った槍の突きを避け損なったかのように動く。
槍は、ハクの左手に突き刺さりがつんと音をたてた。ハクの左手には鎧通しを格納するために金属のフレームが埋め込まれている。槍はそれに阻まれ、ハクの腕を切り落とせない。
ハクは、右手で槍を掴む。これで、一本の槍を殺した。でも残り三本が、ハクに狙いを付ける。
ハクはほくそ笑む。勝利を確信した虎騎士たちの動きは、コンマ数秒ほど遅い。ハクが気を練る時間は、それで十分であった。
ハクは大地から立ち上った気が丹田を経由し、全身に満ちるのを感じる。簡略式の小周天法で、あった。
三方向から槍がハクに襲いかかるが、同時にハクは気の塊を三方向へと放つ。ハクの口から裂帛の気合が、放たれた。
三体の虎騎士の頭が、ハンマーで殴られたようにガクンと後ろに倒れる。
ひとであれば気を失うだろうが、不死身のアビリティで数秒くらいしか行動不能にならないだろう。だが、十分だ。
ハクに槍を抑えられた騎士が槍を捨て剣を抜こうとするが、遅い。
ハクは槍を抜いた左手を、振る。
虎騎士の頭に鎧通しが、突き刺さった。そのままハクはワイヤーソウを放ち、四人の虎騎士たちの首を狩る。虎の頭が、四つ同時に地面へ落ちボールのようにバウンドした。
首を失った虎騎士たちはそれでも剣を抜いたが、視界を失った剣士の攻撃など怖くはない。ハクは、少し離れたところにデコイの気を作る。虎騎士たちはハクの放ったデコイの気に向かって、一斉に剣を振るう。
空振りして隙だらけになった虎騎士たちに、ハクは掌底で浸透勁を放ってゆく。浸透勁は、虎騎士の脳を破壊していった。
四体の死体が、転がる。まあ、生き返るまで少し時間がかかるだろうと思う。
首を切り落とすのは、綺麗に殺す範疇なのか少し疑問があるがルサルカがなんとかするだろ、と思うことにする。
ハクはやれやれと、ため息ををつく。こいつらがボスの配下でしかないって、どれだけボスはやっかいなんだよと気が重くなった。
その瞬間、凄まじい殺気がハクに浴びせられた。残骸となった建物の影から、四人の獣人族が姿を現す。
四人の獣人は虎の頭を持ち、チェインメイルのようなもので身体を覆っている。手には長槍のようなものを、持っていた。
ああ、こいつらがジーク言っていた騎士かと、ハクは思う。
「ウヌは、単身でここまでたどり着いたのか」
虎騎士が、わりと明瞭な英語で語る。まあ、訛りはひどくクセはあるが十分理解できた。
「では、ワシらを少しは楽しませてくれるかの」
虎騎士はそう言い終えると、一斉に槍を突き出してきた。ハクは、巧みに避けるが避けた先に次の槍が襲いかかる。四人の騎士は、うまく連携をとりハクが逃げた先に次の攻撃がくるようにしていた。
虎騎士は、あからさまな殺気を放って攻撃をしてくるので、槍の軌道を読みやすい、殺気がくるほうに、槍があとから来るからだ。
だが、その速度が凄まじく速く狙いも正確である。しかも、連携が巧みすぎた。あたかも、ひとりの騎士が四本の槍を繰り出しているのかとハクは思う。
ハクと虎騎士は、舞踏を行っているかのようであった。ハクが紙一重で避ける様は舞を披露するダンサーのようであったし、虎騎士たちの連携がとれた攻撃も一種の舞踏に思える。
虎騎士たちが繰り出す槍はどんどん速くなり、次第にハクの身体を削ってきた。ハクは、首筋に切り傷を刻まれ血を迸らせる。たまらず、後ろに跳躍し間合いをとった。
虎騎士は深追いせず、間合いを保つ。ハクはどう鎧通しを放つかを考え続けているが、虎騎士たちは全く隙をみせない。ひとりは殺せるだろうが、その間にのこりの三人に殺られる。
「キラパイセン、無理だわ、これ」
とうとう、ハクはねをあげた。キラは、鼻で笑う。
「何をいってるデスカ。こんなイージーな相手に、時間かけすぎデス」
キラは、にいっと笑う。
「胴当てを、使うデス」
ハクの脳裏にオブジェクトが浮かび上がり、メソッドが赤く示される。
ハクは、その働きを理解した。
「おお、なるほど。ありがとう、パイセン。相変わらず激烈役立つな」
キラは、得意気な顔をした。
パイセンは思ったより可愛いよな、と少しどうでもいいことを思う。だが、状況はそんなことを考えてられる余裕がない。
ハクは胴当ての仕組みを理解したが、それを発動するには気を練る必要があった。時間が欲しいが、槍のコンビネーションを躱すだけで精一杯である。
ハクは、覚悟を決めた。
まあ、死んでもしゃあないというか、一度死んだんだからもう一回くらい平気だろと思うことにする。
ハクは、虎騎士が放った槍の突きを避け損なったかのように動く。
槍は、ハクの左手に突き刺さりがつんと音をたてた。ハクの左手には鎧通しを格納するために金属のフレームが埋め込まれている。槍はそれに阻まれ、ハクの腕を切り落とせない。
ハクは、右手で槍を掴む。これで、一本の槍を殺した。でも残り三本が、ハクに狙いを付ける。
ハクはほくそ笑む。勝利を確信した虎騎士たちの動きは、コンマ数秒ほど遅い。ハクが気を練る時間は、それで十分であった。
ハクは大地から立ち上った気が丹田を経由し、全身に満ちるのを感じる。簡略式の小周天法で、あった。
三方向から槍がハクに襲いかかるが、同時にハクは気の塊を三方向へと放つ。ハクの口から裂帛の気合が、放たれた。
三体の虎騎士の頭が、ハンマーで殴られたようにガクンと後ろに倒れる。
ひとであれば気を失うだろうが、不死身のアビリティで数秒くらいしか行動不能にならないだろう。だが、十分だ。
ハクに槍を抑えられた騎士が槍を捨て剣を抜こうとするが、遅い。
ハクは槍を抜いた左手を、振る。
虎騎士の頭に鎧通しが、突き刺さった。そのままハクはワイヤーソウを放ち、四人の虎騎士たちの首を狩る。虎の頭が、四つ同時に地面へ落ちボールのようにバウンドした。
首を失った虎騎士たちはそれでも剣を抜いたが、視界を失った剣士の攻撃など怖くはない。ハクは、少し離れたところにデコイの気を作る。虎騎士たちはハクの放ったデコイの気に向かって、一斉に剣を振るう。
空振りして隙だらけになった虎騎士たちに、ハクは掌底で浸透勁を放ってゆく。浸透勁は、虎騎士の脳を破壊していった。
四体の死体が、転がる。まあ、生き返るまで少し時間がかかるだろうと思う。
首を切り落とすのは、綺麗に殺す範疇なのか少し疑問があるがルサルカがなんとかするだろ、と思うことにする。
ハクはやれやれと、ため息ををつく。こいつらがボスの配下でしかないって、どれだけボスはやっかいなんだよと気が重くなった。
丘の中腹には崩壊した砦の廃墟が、あった。その廃墟の手前に、人影がある。ローブををつけた人影の頭は、黒豹のそれであった。獣人族というやつ、らしい。
黒豹の獣人族は、手にした杖を空に向かって掲げている。
「相変わらず、マヌケすぎデス、クソ後輩」
久しぶりのキラからの言葉に、ハクははっとして上空を見上げる。炎の塊が宙空に出現していた。
ハクはぞっとするような恐怖を感じ、全力で飛び退く。轟音とともに、爆発が起こった。さっきまでいた地面に、直径五メートルほどのクレーターができている。
爆風と熱気がハクに襲いかかり、翻弄した。熱気で、毛先が焦げているようだ。撒き散らされた細かな粉塵で、あちこちにかすり傷ができている。
「なんだ、これは!」
ハクの言葉に、キラが薄く笑って答える。
「メテオアタック、てやつデス。魔法で成層圏まで岩石をテレポートさせて、落ちてきたものをもう一度ダンジョン内にテレポートさせるデス」
ハクは、唸る。
「こんなの魔法無効化あっても、防げないだろ」
「今のオマエのレベルでは無理デスね。でも、心配ないデス」
さらに何発も隕石が降り注ぎ、小規模爆発が立て続けにおきる。あたりは熱風と爆炎に包まれ、地獄のような有り様だ。
「心配ないとは?」
「オマエの隠行は、有効ということデス、クソ後輩。狙いが定まらないから、絨毯爆撃してるだけデス」
ああ、なるほど、位置をおさえられていればとっくに死んでるよなとハクは思う。
ハクは、後ろを見る。ケインは元々距離をとっていたようで、メテオアタックには巻き込まれていないようだ。
どうしたらいいかを、ハクは考える。おそらくある程度の距離内かワイアーなどで繋がった状態でなければ、魔法無効化は使えないようだ。では、獣人族の魔導師に近づかないといけないが、爆撃が凄まじく難しい。
「まったくダメな、クソ後輩デスね。デコイのメソッドを、使うデス」
なるほど、と思う。あのベアウルフがやったように偽の気配を晒してそちらに攻撃を集中させれば、接近できるというわけか、とハクは思う。
ハクは、自分のいる場所に気の痕跡を残す。ただそれは、隠行で表面を覆われているので魔導師たちからは感知できない。
ハクは次々に襲いかかるメテオアタックを避けながら、丘陵の横手に回り込んでゆく。完全に魔導師たちの横側にたどりついた時に、ハクは自分の残した痕跡に向かって気の塊をぶつける。
痕跡を覆っていた隠行が消し飛び、ハクの残した気配が顕となった。黒豹の魔導師たちは、突然出現したハクの気配に驚き一斉にメテオアタックを浴びせる。
目が眩むような閃光と爆炎が、丘陵の半分に襲いかかった。ハクは自分の足に地響きが伝わってくるのを感じる。爆風は小さな竜巻が出現したように、野にあるものを根こそぎ宙に舞わす。
真っ黒い爆煙が丘陵の半分を覆ってくれたので、黒豹の魔導師たちはおそらく視界を奪われたはずだ。けれど魔法で気配を探っている可能性もあるため、ハクは隠行で身を隠したまま丘陵の側面を駆け上る。
煙が晴れ、大きなクレーターが丘陵に出現しているのが明らかになったころ、ハクは完全に黒豹たちの背後にたどり着いていた。前方を探るのに忙しい黒豹たちの背後で、ハクは隠行を解く。
黒豹の魔導師は、一斉に振り向いた。彼らの黄色く輝く瞳には、驚愕の色が浮かんでいる。間違いなく魔導師たちは、勝利を確信していたはずだ。そのため、ハクの出現に数秒反応が遅れる。
それでも魔導師はハクの知らない言葉で呪文を詠唱し、ハクに向かって火焔の渦をぶつけてきた。溶鉱炉の中を剥き出しにしたような炎を、荒れ狂う暴風で覆って敵に投げつける魔法のようだ。逃げようがないし、喰らえば骨まで炭になるだろう。
「怯えるではないデスよ、クソ後輩。この程度なら、簡単に無効化できるデス」
ハクは、キラの言葉に頷く。
ハクは、その魔法に向かって突っ込む。むしろ、目眩ましになって有り難いくらいの感じだ。
ハクは、一瞬炎に包まれた。おそらく今度も、魔導師たちは勝利を確信しただろう。
しかし、ハクを炎が包んだのは一瞬だけである。ハクが発動した魔法無効化によって、炎はあっさり消え去った。
驚愕で目を見開く黒豹に向かって、ハクは左手を振る。鎧通しが、ハクから一番遠いところにいる黒豹の頭に突き立てられた。
ハクが左手を振ると、ワイヤーソウが残りの黒豹たちの首を切り落とす。
「こいつらも、心臓の横に脳があるデス」
ハクは、頷く。まあ生きていたって首がなければ呪文も唱えられないし、目も見えない。そう怖くはないと、ハクは思う。
立ちすくむ黒豹たちの胸に右手の掌底を、当ててゆく。浸透勁が心臓横の脳を、破壊する。
ハクが駆け抜け終わったときには、魔導師たちは死体となり廃墟に沈んでいた。まあまあ綺麗に殺したよな、とハクは思う。
黒豹の獣人族は、手にした杖を空に向かって掲げている。
「相変わらず、マヌケすぎデス、クソ後輩」
久しぶりのキラからの言葉に、ハクははっとして上空を見上げる。炎の塊が宙空に出現していた。
ハクはぞっとするような恐怖を感じ、全力で飛び退く。轟音とともに、爆発が起こった。さっきまでいた地面に、直径五メートルほどのクレーターができている。
爆風と熱気がハクに襲いかかり、翻弄した。熱気で、毛先が焦げているようだ。撒き散らされた細かな粉塵で、あちこちにかすり傷ができている。
「なんだ、これは!」
ハクの言葉に、キラが薄く笑って答える。
「メテオアタック、てやつデス。魔法で成層圏まで岩石をテレポートさせて、落ちてきたものをもう一度ダンジョン内にテレポートさせるデス」
ハクは、唸る。
「こんなの魔法無効化あっても、防げないだろ」
「今のオマエのレベルでは無理デスね。でも、心配ないデス」
さらに何発も隕石が降り注ぎ、小規模爆発が立て続けにおきる。あたりは熱風と爆炎に包まれ、地獄のような有り様だ。
「心配ないとは?」
「オマエの隠行は、有効ということデス、クソ後輩。狙いが定まらないから、絨毯爆撃してるだけデス」
ああ、なるほど、位置をおさえられていればとっくに死んでるよなとハクは思う。
ハクは、後ろを見る。ケインは元々距離をとっていたようで、メテオアタックには巻き込まれていないようだ。
どうしたらいいかを、ハクは考える。おそらくある程度の距離内かワイアーなどで繋がった状態でなければ、魔法無効化は使えないようだ。では、獣人族の魔導師に近づかないといけないが、爆撃が凄まじく難しい。
「まったくダメな、クソ後輩デスね。デコイのメソッドを、使うデス」
なるほど、と思う。あのベアウルフがやったように偽の気配を晒してそちらに攻撃を集中させれば、接近できるというわけか、とハクは思う。
ハクは、自分のいる場所に気の痕跡を残す。ただそれは、隠行で表面を覆われているので魔導師たちからは感知できない。
ハクは次々に襲いかかるメテオアタックを避けながら、丘陵の横手に回り込んでゆく。完全に魔導師たちの横側にたどりついた時に、ハクは自分の残した痕跡に向かって気の塊をぶつける。
痕跡を覆っていた隠行が消し飛び、ハクの残した気配が顕となった。黒豹の魔導師たちは、突然出現したハクの気配に驚き一斉にメテオアタックを浴びせる。
目が眩むような閃光と爆炎が、丘陵の半分に襲いかかった。ハクは自分の足に地響きが伝わってくるのを感じる。爆風は小さな竜巻が出現したように、野にあるものを根こそぎ宙に舞わす。
真っ黒い爆煙が丘陵の半分を覆ってくれたので、黒豹の魔導師たちはおそらく視界を奪われたはずだ。けれど魔法で気配を探っている可能性もあるため、ハクは隠行で身を隠したまま丘陵の側面を駆け上る。
煙が晴れ、大きなクレーターが丘陵に出現しているのが明らかになったころ、ハクは完全に黒豹たちの背後にたどり着いていた。前方を探るのに忙しい黒豹たちの背後で、ハクは隠行を解く。
黒豹の魔導師は、一斉に振り向いた。彼らの黄色く輝く瞳には、驚愕の色が浮かんでいる。間違いなく魔導師たちは、勝利を確信していたはずだ。そのため、ハクの出現に数秒反応が遅れる。
それでも魔導師はハクの知らない言葉で呪文を詠唱し、ハクに向かって火焔の渦をぶつけてきた。溶鉱炉の中を剥き出しにしたような炎を、荒れ狂う暴風で覆って敵に投げつける魔法のようだ。逃げようがないし、喰らえば骨まで炭になるだろう。
「怯えるではないデスよ、クソ後輩。この程度なら、簡単に無効化できるデス」
ハクは、キラの言葉に頷く。
ハクは、その魔法に向かって突っ込む。むしろ、目眩ましになって有り難いくらいの感じだ。
ハクは、一瞬炎に包まれた。おそらく今度も、魔導師たちは勝利を確信しただろう。
しかし、ハクを炎が包んだのは一瞬だけである。ハクが発動した魔法無効化によって、炎はあっさり消え去った。
驚愕で目を見開く黒豹に向かって、ハクは左手を振る。鎧通しが、ハクから一番遠いところにいる黒豹の頭に突き立てられた。
ハクが左手を振ると、ワイヤーソウが残りの黒豹たちの首を切り落とす。
「こいつらも、心臓の横に脳があるデス」
ハクは、頷く。まあ生きていたって首がなければ呪文も唱えられないし、目も見えない。そう怖くはないと、ハクは思う。
立ちすくむ黒豹たちの胸に右手の掌底を、当ててゆく。浸透勁が心臓横の脳を、破壊する。
ハクが駆け抜け終わったときには、魔導師たちは死体となり廃墟に沈んでいた。まあまあ綺麗に殺したよな、とハクは思う。