ある中古屋でブランド不明として格安で販売されていたが、どうみても古いZIPPのハブ。
金色のフランジにカーボン胴という、いかにも90年代の新興メーカーのパーツらしさが溢れていて魅力的だ。
ネット上にもあまり多くの情報はないが、古いZIPPについて探っていると「ZIPP BALLISTIC」という名前だということが分かった。
現在はスラムの傘下となったZIPP製品の歴史がスラムの公式サイト上に掲載されているのだが、そこにも写真とともに記載がある。
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ZIPP BALLISTIC (1992-1993)
The original ZIPP hub, the Ballistic front and rear hub set is identified by gold anodized hub flanges and large diameter carbon fiber center section. The Ballistic rear hub was available in 7 and 8 speed freewheel models (left) as well as a Shimano compatible 8-speed free hub (right). Flange diameter is 43mm (both types), for free hub type: center to flange front = 35mm, center to drive 19mm center to non-drive = 36mm front = 110gm rear cassette = 305gm. This hub model incorporated a wave spring preload system and used R6 bearings. Note the black free hub body with threads on the end, only available in Shimano style. Status: Discontinued. Please contact ZIPP Speed Weaponry for service information.
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“gold anodized hub flanges and larger diameter carbon fiber center section”=「ゴールドアルマイト加工が施されたハブフランジと大径のカーボンファイバー胴部」がやはり特徴のようだ。
「Ballistic = 弾丸」や“speed weaponry ”のブランドロゴからも、当時のZIPPはパーツを兵器に例えたかったのだろう。
シマノフリーであることやご丁寧に重量とハブ寸法まで記載されており、歴史的な資料として申し分ない。
さらに大切なのがこの一文。
“This hub model incorporated a wave spring preload system and used R6 bearings.”
=「このハブは”wave spring preload system“が組み込まれ、R6 bearings が使われている。」
最初読んだ時は、よく分からず読み飛ばしていたのだが、この後分解してからこの一文の大切さを思い知る。
多少回転に濁りがあったのと、内部機構に興味があったので、分解を試みた。
まず、両方のナットがイモネジで固定されていたので、2mmの六角レンチで外した。片方が固く、舐めずに緩めるのに神経を使った。
ナットを外すと、両方のシールドベアリングが剥き出しになり、シャフトを動かすとベアリングは簡単に外れた。
このハブの防水性能は全てをベアリング本体のシールに頼っているということになる。
シャフトは間にワッシャーのようなものが挟まっており、抜けないようになっていた。
これが外したベアリング。NTN社製のR6LSという規格のベアリングだった。
片方のベアリングの回転が重く、シールを外してみると、やはりサビなのか茶色く汚れていた。これは使いまわせそうにないので、新しくベアリングを調達する必要が出てきた。
そこでサイズを測ってみたのだが、これが微妙なサイズなのである。外径は22.2mmほど。
内径は9.5mmほどというなんともキリの悪い数字。R6LSという品番で調べてみても出てこない。
この時はよく分からず、近いサイズのベアリングを探してみたのだが、当然サイズは合わず互換品がないのかと落胆に終わった。
しかし、数ヶ月後、ふとZIPPの先ほどのサイトを見ていて、“R6 bearings”の記述に気付く。そこでZIPPのR6 bearingsについて検索をかけると海外のサイトで何件かこのベアリングがヒットした。そしてサイズが判明したのである。
R6とは規格のことで、この規格は内径×外径が3/8"×7/8"だった。このベアリングはいわゆるインチサイズのベアリングだったのである。
これをメートル法に直すと、9.52mm×22.22mm。実測値と完全に一致する。中途半端なサイズの謎が完全に解けた。
規格が判明したところで早速ベアリングを探すことに。
が、今回はキリがいいのでここで一旦区切りたい。
ちなみにモノタロウで探した中で最もサイズが近かったためにダメ元で買った、NTNの6900LLB。当然合わなかった。