私は趣味を尋ねられると、「自転車が趣味です」と答えるのだが、多くの人はそれを聞いて「サイクリングが好きなのだな」と考える。しかし、それとは意味が大きく異なる。


私はもちろん自転車に乗るのも好きだが、種々の自転車本体やパーツ、自転車産業の歴史からパーツの表面処理に至るまで、自転車を取り巻くあらゆることが好きなのだ。(競技としてのロードレースには興味がないが)


そういうわけで、日々、暇さえあればヤフオクやメルカリで何か目ぼしい出品がないかを見たり、意味もなく自転車屋を訪ねたりするのだが、これも自転車趣味の一環である。


そして、たとえ今必要でなくても、なぜか購入ボタンに指が伸びてしまい、ストックが増えてしまうパーツがいくつかある。





ステムである。特に日東のスレッドステムやスチールパイプをTIG溶接したUIシリーズはつい集めてしまう。


長さの異なる3本のパイプを溶接したシンプルさと溶接ビードの生々しさ、日東ならではの美しい表面処理に心惹かれるのだ。





スチールのUIシリーズは現在も製造されているが、1993年のカタログにはすでに登場する。少なくとも30年は同じ形で作られているということになる。(日東の中では若手かもしれないが)





ちなみにこのカタログというのは、大阪の阿倍野に現在も店舗を構えるトモダサイクルが、過去に出版していたカタログ「ワールドパーツ ベンリー」。


フレームからコンポーネント、スモールパーツやウェアに至るまで、重量と定価を合わせて記載しており、カタログというより図鑑に近い。


古いパーツが好きな身としては手放せない一冊。





イラストの入ったパッケージが魅力的。今では10mm刻みだが、当時は17種類もラインナップされていたようだ。


今でも中古市場で一定の価格を保っている人気の高いステムだが、60mmというかなり短いサイズで新品だったが比較的安く手に入った。








スチールのUIシリーズは3本目になる。


上は現行品のUI2。現代風のオープンクランプで、表面処理はポリッシュのようなCPであることが昔のUIとは異なる。


2ボルトのオープンクランプで面圧が確保しづらく、ハンドルとの相性がある。個体差かもしれないが、フラットハンドルのように長いハンドルは大きな力がかかるのでずれやすかった。



その下はUIのコラム径1インチのもの。乳白色っぽい表面処理が美しい。


東京のブルーラグで新品が売っていたので買ってしまった。以前所持していた1インチのアヘッドフォークのフレームにつけていたが、フレームを手放してしまった。ニッチな規格かつ突き出しが長いので、日の目を見ることがあるのだろうか。





ステムはこの角度が美しく見えると思っている。大好きなので、スマホのロック画面にしてしまった。





あえて白黒にしてみた。溶接ビードが際立つ。





使い勝手がいいのはオープンクランプだが、見た目では、クローズドだと個人的に思っている。あと、昔のUIと現行のUI2では溶接の綺麗さも昔のUIに軍配が上がる。

昔の方がビードの波が細かく等間隔で綺麗に仕上がっている。決して現行が汚いというわけではないのだが、オープンクランプで構造が複雑になったのもあり、少し劣る。




上から見ても惚れる。短くてどこか可愛らしい。





3T PRO CHROME 

スチール製ステムはこんなのも持っていた。白っぽい日東の表面処理も好きだが、チタンのような黄色っぽい表面処理も悪くない。溶接ビードは凹凸が少ない。