スチールのフレームが好きな身として、NJSのピストは外せない。


無駄のないシンプルなスタイルと堅牢な作りはまさに実用美という言葉が合う。


日本にはたくさんのフレームビルダーが存在し、カーボンフレームがレースの主流となった今もスチールフレームは一定の支持を受けている。


そのフレームビルダーと日本製スチールフレームの文化を下支えしてきたのが、競輪である。何十年も前から自転車の形と材質をほとんど変えないまま、今に至るこの文化は日本独自のものである。


そんなブレーキホールも無ければ、アウター受けも無い、一般人が乗るには実用性とはかけ離れたニッチな自転車に心惹かれたのが、ちょうど一年前のことである。





ヤフオクやメルカリを漁って見つけたのがこのフレーム、キヨミヤザワだった。


天邪鬼な性格なので、どうせならパナソニックやマキノのような有名メーカーではなく、個人で工房を構えるような少しマイナーなメーカーのものが欲しかった。


ビルダーの宮沢清明氏はイタリアのロッシンで修行したことが知られており、フレームのロゴのフォントも非常に似ている。紅葉した銀杏の葉のようなフレームカラーと相まって、ポップな可愛さがあり魅力的なフレームだ。



このフレーム、かなり相場より安かったのだが、一見塗装も綺麗に見える。しかし、ヘッド周りに謎の白い塗料が付いている。





白い塗料は錆で剥がれた塗装を雑にタッチアップしたものだった。


ヘッドを開けるとこの通り、錆がすごい。この場所は汗が内部に侵入すると錆が発生しやすい部分ではあるが、塗装をも侵食するとなかなかの重症である。


逆に選手がレースなり練習なりに使っていた証拠でもある。





塗料を落とすと、下地のメッキが現れ、そのメッキの下にも錆が発生していることがわかる。


ヘッドチューブの他にも、フォークの根元とフォーククラウンの内側も錆がひどく、同様に塗装を削った。





フレーム内部にもどの程度錆が広がっているかわからないので、クレの防錆剤6-66を噴きかけておく。





そしてタッチアップ。メッキの上に直接塗っても塗料が乗らないので、メタルプライマーを塗ってから筆塗りした。


絶妙に色褪せしたイエローを作り出すのはかなり難しく、塗り方も汚いが自分で乗るだけなので、とりあえずよしとした。





パーツを組んで遠目に見ると、あまり分からない。かなり自分では上出来だと思っている。





フレームの下処理も終わり、組み立てに入った。


ロードレーサーに慣れていると、パーツの点数の少なさに驚く。





一度NJSらしく、ブレーキを付けずに組んでみた。もちろん近所の河川敷まで押して行った。というより、怖くてブレーキ無し、固定ギアの自転車なんて乗れない。





HP: タンゲ レビン (NJS)

ステム: 日東 90mm

ハンドル: 日東 B125AA 380mm (NJS)





サドル: カシマックス ファイブゴールド

シートポスト: シマノ 600 エアロタイプ


後ろから見た時に、細いシートステーの真っ直ぐに伸びた形と、エアロタイプのシートポストの組み合わせがかなり好き。





BB: スギノ 75 (NJS)

クランク: スギノ マイティコンペ 165mm (BIA)

チェーンリング: シマノ DURA-ACE TRACK 49T (NJS)

チェーン: HKK VERTEX (NJS)

ペダル: 三ヶ島 シルバンロード/トークリップ (NJS)


少し時代は違うが、懐と相談してこのクランクになった。あえて磨かずに時代を感じさせるままにしてある。





リム: マビック F モンテリプロ/R モンテリルート

ハブ: F シマノ DURA-ACE TRACK (NJS)

R スズエ プロマックス (NJS)

コグ: シマノ DURA-ACE 16T


36Hのリムがなかなか手に入らず、しょうがなくフランス製マビックのロードレーサー用リムになった。このリムはパナソニックに最初から付いていたものである。


ハブはフロントだけスモールフランジにするのが、フォークとの一体感があって、個人的に好き。実はこのデュラエースのトラックハブをたまたま手に入れたことで、ピストに興味を持った。


リアはあえてスズエにした。NJS登録品(現在は違う)でありながら、アメリカに母体があり、デザインが国産とは一線を画している雰囲気が良い。





チェーン引き: 絹川 (NJS)





レース用の機材でありながら、メーカーの威信をかけて作られているのが分かる、仕上げの丁寧さ。薄く仕上げられたイタリアンカットのラグと、ロゴが浮き出るデザインのシートステーのキャップは、どちらも宮沢氏のロッシンへのリスペクトを感じる。



ここからさらに手を加えていくが、それはまた次回。