昨日は京都の長岡京まで免許の再交付に行ってきた。

本来なら3年に1度、地元で済ませばいいのだが
今年も更新日の有効期限を大幅に過ぎてしまったので、
家から電車3本とバスを乗り継ぎ、
遠く離れた長岡京市の運転免許試験場まで、
およそ2時間かけて行った。

地元の自動車ガッコに行かない理由は2つある。
1つは免許の交付に日数がかかるので2度手間になること。
もう1つは確固たる理由を持って京旅行に行けることだった。
なので、免許の更新が終わったら、
夜の京都へ繰り出して、大吉あたりで
1人でちびちびやろうかなと、数か月前から考えていた。
しかし今回、一泊の予定で宿を探し始めてみると、
悲鳴を上げるほどの宿泊料金。
大阪の丸一ホテルなら3泊できる代金!
そんな外国人観光客も真っ青な宿泊代を払って
贅沢なんかできないだろうと
2月の旅行のことも考えて今回は日帰りすることにした。

長岡京の試験場についてから受付を済ませ
講習会場へと向かった。
扉を開けると若者が13人程度、教官の話を聞いていた。
教官はつい最近大阪からやって来たという老人で
とても物腰柔らかく人当たりも良く、
孫からも好々爺として慕われるような老人だった。
だが、彼は独自の講習スタイルを持っていた。
その最たるものが、受講生全員に
交通規則や事故についてどう解釈するかを質問することだった。

講習が始まる前、世間話などで会場の雰囲気は良かった。
しかし、老人がその旨を受講生たちに伝えた途端、
会場の雰囲気は一瞬で固まってしまった。
恐らく、ここにいる全員に
学生時代の嫌な思い出がよぎった。

そして、2時間の講習が始まった。
やがて、ビデオの時間が終わると、
老人は、おもむろに受講生達に問いかけ始めた。

「さて・・ あなた達はこれについてどう思われますか」

静まり返る会場。凍てついた雰囲気。
会場にいる誰もが老人の目を見ることを拒んでいた。

「なんでもいいのです・・ 何か、思いついたことを・・」

誰も何も言わなかった。
大阪ではノリのいい府民が
面白い回答をしてくれたかも知れないが、ここは京都だ。
熱い時は熱いが、冷たい時は冷たいんだ。
それが京都だ。みんなそう思っていた。

「誰か・・ 何か・・」

時間が経つにつれ、張り詰めていた空気は薄らいで
暑さ寒さもなくなって
もう、何も答えなくてもいいと思った。
僕たちの勝利だ。京都府民の勝利だ!
ここじゃそんなやり方は通用しないんだ!
みんなそう思った。

だが、老人は淡々と言った。

「それじゃ、左の人から一人づつ。はいどうぞ」

結局、教官と受講生という上下関係は如何ともしがたく
全員がしどろもどろの回答をして
数十年ぶりに、学生時代の恥ずかしい感覚を味わった。


手渡された免許証は
どう見ても、善良な市民には見えなかった。