アルツハイマー病では早期から脳の特定部位における糖の取り込みが低下しています。このため、アルツハイマー病は「第3の糖尿病」とも言われています。このような状態に陥らないためには、普段から血糖値をできるだけ上げないような食べ方をすることが重要です。

血糖値を上げるのは炭水化物や糖質ですから、食事からご飯やパンを抜くのが手っ取り早いのですが、残念ながら、特にご高齢の方にはおかずだけの食事は受け入れられないことがあります。また、単純に炭水化物を抜くと、カロリー不足となって体重が落ちてしまうこともしばしばあります。さらに、炭水化物には食物繊維が含まれてため、他で補わないと便秘になってしまうことも。

 

今回は炭水化物の選び方や食べ方の工夫で血糖をあげないようにするコツをご紹介します。

 

 

GI(グリセミック・インデックス)値とは

その食品を食べた時、実際にどれだけ血糖が上がるかを示す指標です。同じカロリーの食品でも、GI値が違えば血糖値の上がり方が変わってきます。たとえば、ブドウ糖を100とした場合、白米のご飯は82となります。GI値が高いブドウ糖の方が白米のご飯より血糖値が上がりやすいということになります。高血糖を避けるためにはできるだけGI値が低い食品を選ぶことが重要です。

 

 

高血糖にならない主食のコツ

 

1)主食そのものに対する工夫

こんにゃく米を使う

  • こんにゃくは食物繊維が豊富でGI値が低い。米のような形に加工されたこんにゃく米は食感も米に似ており、白米一緒に混ぜて炊くだけで食物繊維が取れ、血糖値の急上昇を抑えることができる。
  • こんにゃくそのものの成分によるアルツハイマー病予防効果が最近報告されている。

 

発芽玄米を使う

  • 発芽玄米とは、玄米を水にひたし、0.5~1mm発芽させたもの
  • 玄米よりも味や食感が良い
  • 発芽玄米の食物繊維量は100gあたり3.0g。白米のおよそ4倍になる
  • 炭水化物を分解する唾液中のアミラーゼ活性を阻害する働きが確認されている
  • 白米に比べてギャバ、イノシトール、ビタミンB1, E, カルシウム、マグネシウムが増える
  • ギャバには血圧を下げて血糖値を安定させる働き、コレステロール値を改善し、動脈硬化を抑える作用がある。その量は白米のおよそ10倍。
  • イノシトールは白米の6倍ほど多い。動脈硬化を予防する働きがある
  • 白米のGIを100とすると発芽玄米のGIは65。玄米よりも低い。

 

高アミロース米を選ぶ

  • でんぷんはブドウ糖の結合の仕方によって、直鎖状のアミロースと、枝分かれしているアミロペクチンに分かれる。この含有量の違いも米のGIを左右している。
  • デンプンが消化吸収されるためにはα-アミラーゼという消化酵素の働きが欠かせないが、α-アミラーゼはアミロースやアミロペクチンを端から切っていくことしかできない。したがって、直鎖状のアミロースは端から順々に切っていく必要があり、分解が進みにくく血糖値が上がりにくい。一方、アミロペクチンは枝分かれしているため同時に何箇所も切ることができるため分解しやすく血糖値が上がりやすい。
  • 高アミロース米は粘り気が少なくパラパラした食感。
  • 代表的な高アミロース米:ホシユタカ、夢十色、ホシニシキ、インディカ米

 

押し麦を使う

  • 大麦の外皮をはいで軽く蒸し、ローラーを使って平たくしたもの
  • 白米のGI値を100とした場合、白米に押麦を3割程度入れた麦ご飯のGI値は65
  • 食物繊維、なかでも水溶性食物繊維が多い(押し麦100gあたり食物繊維は9.6g)
  • グルテンはほとんどないが、グルテンに似たたんぱく質を含んでいるため注意

 

一旦冷ます、冷凍にする

  • でんぷんは水に溶けないが、ご飯を炊いて熱を加え、一定以上の温度になると澱粉の構造が崩れ、その間に水が浸透して結合が解けて膨らみ、目張り毛のある半透明な海苔状の物質に変わる。これをα化という。一方、硬く結合して水に溶けない状態の澱粉をβ-でんぷんという。β-でんぷんは消化できない。生米はβ-でんぷんで食べてもほとんど消化されない。
  • α-でんぷんは冷えていくとβ-でんぷんにもどる(再β化、あるいはでんぷんの老化という)。ごはんを冷凍にすると分子内に塊状の結合ができる。これは再加熱しても壊れないため、温めて食べてもGI値が下がると言われている。

 

ご飯よりは麺類(ただし小麦が入っているものは控える)

  • 一般的にご飯やパンよりは麺類の方がGI値低い
  • 油や巣を使うとさらに消化が遅れる
  • 硬めに調理するとGI値が低くなる

 

 

2)食べ方の工夫

良く噛んでゆっくり食べる

  • 時間をかけて食べれば血糖値の上昇も穏やかになる

 

一汁三菜にする

  • 汁物、魚・豆料理、海藻・野菜、酢の物と一緒に食べる

 

先に食物繊維を取る

水溶性食物繊維

  • 水分を吸収して体内でもゼリー状に粘性を保つ性質がある。このため、消化が遅くなり急激な血糖上昇を抑える。
  • コレステロールの吸収を抑制し、血中のコレステロール値を下げる
  • ナトリウムを体外に排泄し、血圧の上昇を防ぐ

 

不溶性食物繊維

  • 水に溶けない
  • 粘性がないので消化は遅くならないが、水や酵素が澱粉に入り込むのを妨げ、消化を遅くする働きがある
 

食物繊維が多い食品

  • 穀類、豆類、野菜類、海藻、きのこ、こんにゃく類

 

酢の物と一緒に食べる

  • 唾液の中にふくまれる消化酵素「α-アミラーゼ」の働きを酢の主成分である酢酸が弱める。α-アミラーゼは炭水化物中のでんぷんをある程度まで分解する働きがある。α-アミラーゼが働くのに適したPHは7-7.5。酢酸がPHを下げるとα-アミラーゼの働きが弱まり、消化が遅れ、血糖値の上昇が穏やかになる。
  • 酢酸には食物を胃から腸に送り出す時間を遅くする働きもあるため、消化が遅くなる。
  • 酢酸は体内に入るとクエン酸に変化する。その結果、細胞内でエネルギーを作る「クエン酸回路」が活発になり、内臓脂肪を燃焼させる。
  • 酢に含まれるアミノ酸には、脂肪の合成を抑制し、内臓に脂肪を溜まりにくくさせる効果がある。
  • レモンやライムなどの柑橘類にも同様の効果があると発表されている
  • 食酢を毎日とると腹部内臓脂肪面積が減少するという報告がある

 

カレーのスパイスを使う

  • カレーリーフ(南洋山椒):膵液に含まれるα-アミラーゼの働きを抑制する。α-アミラーゼは糖質を分解する消化酵素。
  • シナモン:血糖値を改善する作用がある
  • 3価クロム:加齢とともに少なくなっていく特徴がある。ニコチン酸やアミノ酸と結合することでGTF(Glucose Tolerance Factor)になる。GTFはインスリンがブドウ糖を細胞内に導くのを助ける。GTF不足がインスリン抵抗性を起こす要因になる。また、脂質代謝を改善する。
  • スパイスは調理することで効果が高まる

 

 

 

 

おまけ

果物の食べ方

  • 果物に含まれる果糖は消化が早く、摂取後急激な血糖上昇がみられるが下がるのも早い
  • 望ましい摂取量は1日200g程度で含まれる糖質は17gくらい。2〜3回に分けて食べると良い
  • できるだけGI値の低い物を選ぶ(りんご、いちご、グレープフルーツなど)

 

 

GI値が高いご飯もちょっとした工夫で血糖値の上昇をある程度はゆるやかにすることができます。せっかくの食事ですからおいしく健康的に頂きましょう!

 

 

 

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