日本ブレインケア・認知症予防研究所所長&ブレインケアクリニック院長の今野です。

私は米国で開発された新しい認知症治療「リコード法」を実践しており、これを日本全国に広められたらという思いで活動しています。

 

昨日は埼玉県のウェスタ川越で行われた日本栄養精神医学研究会で「認知症と亜鉛〜リコード法を交えて」というタイトルで講演してきました。

 

 

リコード法ではアルツハイマー病をさらに6種類のタイプに分けます。特に重要なのが1型(炎症性)、2型(萎縮性;栄養不足)、1.5型(糖毒性)、3型(毒物性)なのですが、亜鉛は以下のようにこれらのすべてに関連するミネラルです。

 

 

亜鉛欠乏はインスリンという血糖を下げるホルモンの合成、貯蔵、分泌において重要です(1.5型:糖毒性と関連)。

そして自己抗体が増えて炎症の原因となり、酸化によるダメージと老化の促進にもつながります(1型:炎症性と関連)。

また、、亜鉛が欠乏するとホルモンの分泌や働きが抑制され、神経伝達物質が減少します(2型:萎縮性と関連)。

さらに、水銀やカビ毒(マイコトキシン)へ敏感に反応するようにもなります(3型:毒物性と関連)。

 

基本的に、日本人は男女とも20歳代以降で平均亜鉛摂取量は、推奨量に比べて摂取不足気味(国民健康・栄養調査報告(厚生労働省;2015年3月より)。

また、アルツハイマー病患者には健常者と比較して亜鉛の減少が見られるということはメタアナリシスという信頼性の高い研究手法で明らかにされています(Journal of Alzheimer'S Disease, 46(1), 75–87)。

亜鉛は神経細胞の異常興奮を抑制しますし、抑うつ気分や不安を予防し、神経の修復にも関わりますので、とても重要なミネラルなのです。

 

リコード法では、血清亜鉛として100μg/dL(90-110μg/dL)が理想とし、75未満は低いと判断します。亜鉛が100未満の場合、「20-50mgのピコリン酸亜鉛を毎日服用」が推奨されています。

 

普通の医療機関では亜鉛を測ることはあまりないですが、皮膚炎,口内炎,脱毛症,褥瘡(難治性),食欲低下,発育障害(小児で体重増加不良,低身長),性腺機能不全,易感染性,味覚障害,貧血などの症状があったら亜鉛不足かもしれませんので、お医者さんに行って相談して見ましょう。

 

なお、亜鉛の取りすぎでは時々胃の不快感などが出現することがありますが、一時的なものです。私の経験上、空腹時を避ければ大丈夫です。また、亜鉛摂取で銅欠乏、鉄欠乏が起こる可能性が指摘されていますが、臨床でそのようなケースに出会ったことはまだありません。気になる人は亜鉛と他のミネラルを飲む時間をずらすと良いでしょう。ビタミンCやクエン酸と一緒に撮ると吸収が良くなります。

 

また、マウスの実験ですが亜鉛を長期的にとってもアルツハイマー病の病変が進行することはなかったという報告もあります(Official Journal of the Japanese Society of Neuropathology, 32(4), 390–397)。よほど極端に大量に摂取しなければ亜鉛は安心して飲んでいただいて良いと思います。